20 / 54
第一章 キリエ争奪戦
眠りから目覚めて
しおりを挟む 目を覚ますと--------私は知らない場所にいた。
どうやら、視界に映る状況からして、私はテントの中で寝ていたらしい。
何だか、妙に頭がクラクラする…………。
そういえば、何でこんなところにいるんだっけ……?
おぼろげながら、記憶を思い返そうとして--------ふと、ある事を思い出す。
そうだ!
私は今、聖戦に出場していて…………。
それで、あの時…………!
「うっ…………!」
お腹の辺りに痛みを感じて、思わず顔が歪んだ。
思わずお腹の辺りに触れて、ある事に気づく。
この手触りは包帯……?
あれ……? 私、手にも包帯も巻いていたかしら……?
どうやら、私が寝ている内に治療を受けたようだ。
あまり状況がうまく飲み込めてはいないが、周りの状況を確認すべく、恐る恐る起き上がると、私はあるものを見つけて戦慄した。
それは見るからに怪しいげな奴が焚き火の前で鎮座しながら、こちらに背を向けて、何やら作業をしているようだった。
もしかしなくても、私の治療をしたのは間違いなく、目の前にいる人物だろう…………。
だが、今は聖戦の只中…………。
相手の素性が分からない以上、下手に信用するのは危険だ。
治療を受けておきながら、恩を仇で返すようで、申し訳ないけれど…………。
迂闊にも、私の近くに神託が置いてあった。
私はこっそりと神託のアイテムボックスからナイフを一振り取り出し、怪しい人物の背後に近寄り、覆い被さると、首筋にナイフを突きつけた。
そして、名前と私の処遇を問うと、体の感触からして、彼女が…………何事もないかのように手にした薪をくべた。
少しイラッとしながらも、再度問うと、彼女はキリエと名乗り、偶然にも私を見つけて治療したという。
キリエ!?
じゃあ、彼女が…………。
そんな風に一瞬だけ動揺した隙を彼女は見逃さず、次に目を開けた時には私は痛みに悶えながら、彼女にナイフを奪われ、逆にナイフを突き付けられていた。
どうやら、私はこれまでのようだ。
そう思ったが、何故か彼女はナイフを捨て、再び私の治療を行うと意識が朦朧としている私を再びテントまで運んで行った。
そして--------
「休んでなさい」
--------と、母親が我が子を諭すような、優しい口調で語り掛けて、私の頭を撫でてくれた。
何が何だかいまいち状況が理解出来なかったが、何故か彼女と接していると、心が暖かくなって、キュッと胸が苦しくなった。
何だか、一度経験した事があるかのような奇妙な既視感を覚えて--------ふと、彼女の背中に、ある人の面影が浮かび上がった。
そうだ。
彼女は彼に似ているんだ。
私の大切で、大好きな許嫁。
嫌々言いながらも、必ず私の側にいてくれて…………。
私が何か悩んでいたら、すぐに見抜いては心配してくれる。
いつも素っ気ない癖に、困った時には真摯に優しく手を差し伸べてくれる。
そんな彼のような…………。
大きく、安心出来る。
そんな彼の大きな後ろ姿に…………。
まるで、彼が側でいてくれているかのような、穏やかな気持ちを抱き--------私はソッと意識を手放した。
無事に帰れたら、彼にうんと甘えよう…………。
そう心に決めて…………。
どうやら、視界に映る状況からして、私はテントの中で寝ていたらしい。
何だか、妙に頭がクラクラする…………。
そういえば、何でこんなところにいるんだっけ……?
おぼろげながら、記憶を思い返そうとして--------ふと、ある事を思い出す。
そうだ!
私は今、聖戦に出場していて…………。
それで、あの時…………!
「うっ…………!」
お腹の辺りに痛みを感じて、思わず顔が歪んだ。
思わずお腹の辺りに触れて、ある事に気づく。
この手触りは包帯……?
あれ……? 私、手にも包帯も巻いていたかしら……?
どうやら、私が寝ている内に治療を受けたようだ。
あまり状況がうまく飲み込めてはいないが、周りの状況を確認すべく、恐る恐る起き上がると、私はあるものを見つけて戦慄した。
それは見るからに怪しいげな奴が焚き火の前で鎮座しながら、こちらに背を向けて、何やら作業をしているようだった。
もしかしなくても、私の治療をしたのは間違いなく、目の前にいる人物だろう…………。
だが、今は聖戦の只中…………。
相手の素性が分からない以上、下手に信用するのは危険だ。
治療を受けておきながら、恩を仇で返すようで、申し訳ないけれど…………。
迂闊にも、私の近くに神託が置いてあった。
私はこっそりと神託のアイテムボックスからナイフを一振り取り出し、怪しい人物の背後に近寄り、覆い被さると、首筋にナイフを突きつけた。
そして、名前と私の処遇を問うと、体の感触からして、彼女が…………何事もないかのように手にした薪をくべた。
少しイラッとしながらも、再度問うと、彼女はキリエと名乗り、偶然にも私を見つけて治療したという。
キリエ!?
じゃあ、彼女が…………。
そんな風に一瞬だけ動揺した隙を彼女は見逃さず、次に目を開けた時には私は痛みに悶えながら、彼女にナイフを奪われ、逆にナイフを突き付けられていた。
どうやら、私はこれまでのようだ。
そう思ったが、何故か彼女はナイフを捨て、再び私の治療を行うと意識が朦朧としている私を再びテントまで運んで行った。
そして--------
「休んでなさい」
--------と、母親が我が子を諭すような、優しい口調で語り掛けて、私の頭を撫でてくれた。
何が何だかいまいち状況が理解出来なかったが、何故か彼女と接していると、心が暖かくなって、キュッと胸が苦しくなった。
何だか、一度経験した事があるかのような奇妙な既視感を覚えて--------ふと、彼女の背中に、ある人の面影が浮かび上がった。
そうだ。
彼女は彼に似ているんだ。
私の大切で、大好きな許嫁。
嫌々言いながらも、必ず私の側にいてくれて…………。
私が何か悩んでいたら、すぐに見抜いては心配してくれる。
いつも素っ気ない癖に、困った時には真摯に優しく手を差し伸べてくれる。
そんな彼のような…………。
大きく、安心出来る。
そんな彼の大きな後ろ姿に…………。
まるで、彼が側でいてくれているかのような、穏やかな気持ちを抱き--------私はソッと意識を手放した。
無事に帰れたら、彼にうんと甘えよう…………。
そう心に決めて…………。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる