19 / 54
第一章 キリエ争奪戦
神託の使い方
しおりを挟む
しばらく洞窟の中を進み、ちょうど身を隠せそうな窪みを発見した俺は神託を取り出して、ある機能を起動させた。
それは『簡易キャンプ機能』というものだ。
これを使えば、焚き火やテントといったキャンプ道具一式が既に組み立てられ、配置された状態で出てくるらしい。
ディスプレイを操作すると、ほんとに目の前にテントや焚き火といった道具が組み立てられて出て来た。
それも、俺が思った通りの場所に、だ。
テントを壁がある奥の方へ、その手前に焚き火やら、飯盒やフライパンといった簡単な調理道具が置かれている。
テントは大きさからして、大体二人ぐらいが入れる大きさか……?
丁度良いや、そう思い、テントの中へ一美を寝かせようとして…………ある事に気付いた。
「……………………」
テントの中に何か、白い箱のような者がある。
とりあえず、それを退かして…………一美をテントの中に寝かせると、その箱を手に取り、中を確認した。
「……………………」
中身は医療キットだった。
包帯やら消毒液やら、何か都合の良さげなものばかりが入っている。
ちょっと、これは調べた方が良さそうだな…………。
------------------------------------------
あれから、一美の治療を終えた俺は焚き火を絶やさないよう薪を焼べつつ…………神託の機能について調べていた。
とりあえず、今分かっている事といえば、現在使われているのはこの二つ--------
・マップ機能
・簡易キャンプ機能
--------だ。
他には、俺がまだ使っていない。
ろくに調べていないだけで--------
・鑑定機能
・探索機能
・申請機能
・通信機能
・治療キット機能
などがある。
調べている内にいくつか知らない機能がある事が分かった。
流し目で、適当にヘルプって奴を読んだもんだから、知らなかったが、よくよく見れば、『ポーション作成機能』の文字が…………。
どうやら、これを使っていたから、一美はポーションを持っていたのだろう。
聖戦のフィールド内なら材料さえ集めれば一秒かからず、一瞬で作れるみたいだし…………。
って、『アイテムボックス機能』……?
収集空間と呼ばれる異空間へとあらゆるものを収納したり、出したりする機能。
持ち運びなど、困った時に使うと便利…………って、こんなのがあったのか……?
それなら、色々と持ってこれたのに…………。
思わず、頭を抱えたくなった。
その時--------
「動かないで…………」
聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、いかなり首筋にナイフの刃を突きつけられた。
先程、治療の際、服を脱がせた時はなかったし…………。
おそらく、このアイテムボックスに収納してあった物だろう。
まあ、気配でこっちに近づいて来てるのは分かってたし、そこまで動揺はしなかったが…………。
一美はそうもいかない。
「あなたは誰……? 私をどうするつもり……?」
そう問う声には、明らかな焦りや恐怖が入り混じっていた。
まあ、当然か…………。
起きたら突然、見知らぬ場所にいて…………。
身ぐるみ剥がされて…………。
いかにも怪しい奴が近くにいるんだから…………。
よくよく考えたら、盗賊っぽいな…………。
一応、治療した後は服も着せたよ?
ちゃんと寝袋に寝かせて…………。
でも、中々に良い体だった。
眼福眼福…………。
「質問に答えない…………!」
「キリエよ…………。たまたまここを通りかかったらお前が倒れていたから治療しただけよ…………」
何か、そろそろ答えないと、本気で切り付けて来そうだったので、とりあえず、ぶっきら棒にそう答えておいた。
「あなたが…………!?」
俺は一美が驚いた一瞬の隙を見逃さず、ナイフ持っている方の手首を掴むと同時に、地面を強く蹴って、背中から一美に体当たりをぶちかました。
体当たりされた一美は、俺に押し潰される形で、地面に接触すると、苦痛で顔を歪めた。
そして、俺はゆっくりと起き上がり、地面にぶつかった際、一美が手放したナイフを拾うとその切っ先を喉元に突き付ける。
「チェックメイト、ね…………」
一美はいかにも悔しそうに俺を睨みつけつつ、先程治療した際に最も傷が深かった場所…………腹部を押さえていた。
やっぱり、痩せ我慢してやがったか…………。
俺は喉元からナイフを離すと、焚き火の横あたりに適当に投げつけ、一美の傷を見る。
傷がまた開いたのか、包帯が見る見る赤く染まっていくのが分かる。
「とりあえず、包帯を取り替えるから動かないでねぇ…………」
俺は地面に転がっていた自分の神託を拾い上げると、治療キット機能を使用した。
ディスプレイをタッチすると、目の前に先程と同じ医療キットが現れたので、遠慮なくそれを使って治療を行った。
「……………………」
一美は黙って俺にやられるがまま、治療を受けた。
まあ、単純に疲弊し過ぎて、もう動けなかったという可能性もあるが…………。
とりあえず、邪魔が入らないのはそれはそれで良い。
スムーズに作業を終えた俺は「休んでなさい」とテントへと運び直した後、優しくそう語りかけた。
すると、余程疲れていたのか。
一美は安心し切ったように、穏やかな寝息を立て始めた。
その寝顔があまりにも、子供みたいで、可愛らしく思えたからか。
思わず、笑ってしまった。
まあ、眠っている間は守って差し上げますよ。
我が愛しの眠り姫…………。
それは『簡易キャンプ機能』というものだ。
これを使えば、焚き火やテントといったキャンプ道具一式が既に組み立てられ、配置された状態で出てくるらしい。
ディスプレイを操作すると、ほんとに目の前にテントや焚き火といった道具が組み立てられて出て来た。
それも、俺が思った通りの場所に、だ。
テントを壁がある奥の方へ、その手前に焚き火やら、飯盒やフライパンといった簡単な調理道具が置かれている。
テントは大きさからして、大体二人ぐらいが入れる大きさか……?
丁度良いや、そう思い、テントの中へ一美を寝かせようとして…………ある事に気付いた。
「……………………」
テントの中に何か、白い箱のような者がある。
とりあえず、それを退かして…………一美をテントの中に寝かせると、その箱を手に取り、中を確認した。
「……………………」
中身は医療キットだった。
包帯やら消毒液やら、何か都合の良さげなものばかりが入っている。
ちょっと、これは調べた方が良さそうだな…………。
------------------------------------------
あれから、一美の治療を終えた俺は焚き火を絶やさないよう薪を焼べつつ…………神託の機能について調べていた。
とりあえず、今分かっている事といえば、現在使われているのはこの二つ--------
・マップ機能
・簡易キャンプ機能
--------だ。
他には、俺がまだ使っていない。
ろくに調べていないだけで--------
・鑑定機能
・探索機能
・申請機能
・通信機能
・治療キット機能
などがある。
調べている内にいくつか知らない機能がある事が分かった。
流し目で、適当にヘルプって奴を読んだもんだから、知らなかったが、よくよく見れば、『ポーション作成機能』の文字が…………。
どうやら、これを使っていたから、一美はポーションを持っていたのだろう。
聖戦のフィールド内なら材料さえ集めれば一秒かからず、一瞬で作れるみたいだし…………。
って、『アイテムボックス機能』……?
収集空間と呼ばれる異空間へとあらゆるものを収納したり、出したりする機能。
持ち運びなど、困った時に使うと便利…………って、こんなのがあったのか……?
それなら、色々と持ってこれたのに…………。
思わず、頭を抱えたくなった。
その時--------
「動かないで…………」
聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、いかなり首筋にナイフの刃を突きつけられた。
先程、治療の際、服を脱がせた時はなかったし…………。
おそらく、このアイテムボックスに収納してあった物だろう。
まあ、気配でこっちに近づいて来てるのは分かってたし、そこまで動揺はしなかったが…………。
一美はそうもいかない。
「あなたは誰……? 私をどうするつもり……?」
そう問う声には、明らかな焦りや恐怖が入り混じっていた。
まあ、当然か…………。
起きたら突然、見知らぬ場所にいて…………。
身ぐるみ剥がされて…………。
いかにも怪しい奴が近くにいるんだから…………。
よくよく考えたら、盗賊っぽいな…………。
一応、治療した後は服も着せたよ?
ちゃんと寝袋に寝かせて…………。
でも、中々に良い体だった。
眼福眼福…………。
「質問に答えない…………!」
「キリエよ…………。たまたまここを通りかかったらお前が倒れていたから治療しただけよ…………」
何か、そろそろ答えないと、本気で切り付けて来そうだったので、とりあえず、ぶっきら棒にそう答えておいた。
「あなたが…………!?」
俺は一美が驚いた一瞬の隙を見逃さず、ナイフ持っている方の手首を掴むと同時に、地面を強く蹴って、背中から一美に体当たりをぶちかました。
体当たりされた一美は、俺に押し潰される形で、地面に接触すると、苦痛で顔を歪めた。
そして、俺はゆっくりと起き上がり、地面にぶつかった際、一美が手放したナイフを拾うとその切っ先を喉元に突き付ける。
「チェックメイト、ね…………」
一美はいかにも悔しそうに俺を睨みつけつつ、先程治療した際に最も傷が深かった場所…………腹部を押さえていた。
やっぱり、痩せ我慢してやがったか…………。
俺は喉元からナイフを離すと、焚き火の横あたりに適当に投げつけ、一美の傷を見る。
傷がまた開いたのか、包帯が見る見る赤く染まっていくのが分かる。
「とりあえず、包帯を取り替えるから動かないでねぇ…………」
俺は地面に転がっていた自分の神託を拾い上げると、治療キット機能を使用した。
ディスプレイをタッチすると、目の前に先程と同じ医療キットが現れたので、遠慮なくそれを使って治療を行った。
「……………………」
一美は黙って俺にやられるがまま、治療を受けた。
まあ、単純に疲弊し過ぎて、もう動けなかったという可能性もあるが…………。
とりあえず、邪魔が入らないのはそれはそれで良い。
スムーズに作業を終えた俺は「休んでなさい」とテントへと運び直した後、優しくそう語りかけた。
すると、余程疲れていたのか。
一美は安心し切ったように、穏やかな寝息を立て始めた。
その寝顔があまりにも、子供みたいで、可愛らしく思えたからか。
思わず、笑ってしまった。
まあ、眠っている間は守って差し上げますよ。
我が愛しの眠り姫…………。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
孤独の魔女と独りの少女
徒然ナルモ
ファンタジー
遥かな昔、凡ゆる魔術 凡ゆる法を極め抜き 老いや衰退すらも超克した最強の存在 魔女達の力で、大いなる厄災は払われ 世界は平穏を取り戻してより 、八千年 …避けられぬと思われていた滅びから世界を救った英雄 又は神として、世界は永遠を生きる七人の魔女達によって統治 管理 信仰され続けていた…
そんな中 救った世界を統治せず、行方をくらませた 幻の八人目の魔女が、深い森の中で 一人の少女を弟子にとったと言う
神話を生きる伝説と 今を生きる少女の行く末は、八千年前の滅びの再演か 新たな伝説の幕開けか、そんなものは 育ててみないと分からない
【小説家になろうとカクヨムにも同時に連載しております】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる