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第一章 キリエ争奪戦

報告

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「何だと……?」

 誠がいる草原から少し離れた森の中--------一人の男がある報告を受け、訝しげに眉を寄せた。


「もう一度申し上げます。先程、草原エリアにいた《守護者》全二百三十八名の反応をロスト致しました」

「それは確かな情報か……?」

「数度、検証致しましたが、結果は変わりませんでした」

 男にそう報告していた者は、悲痛な面持ちで答えた。

「どうみる……?」

 男は報告者を下がらせると、手を顎に当て、思考を巡らせた。

 そして、ある程度考えをまとめると、隣で佇んでいた相手に問い掛けた。

「十中八九、キリエとかいう咎人だ。まだ、聖域が開かれて間もない。それをこの短時間で殲滅せんめつ出来る奴がいるとすれば、咎人以外、俺は思いつかん」


 男の意見も同様だった。

 
 こんなあり得ない芸当が出来るのは、咎人である奴くらいのものだと…………。


 恐らく、また、あの悪しき力によって、聖域を穢していったのだろう。


 それも、我らが同胞の誇りを踏みにじって…………。

 そう思うと、自然に拳を握る力が強くなった。

 拳を握る手からは血が滴り落ち、男の目には憎悪が滲み出る。

 周りの者達もそうだ。

 キリエに対する筋違いな憎しみを抱き、殺気をほとばしらせている。


 
「最早、神罰を降すだけでは足らんな…………」


「あぁ、奴には神罰を受ける価値すらない。我らが崇高なる神のため、《粛清しゅくせい》を行うべきだ」

 男はそれに深く頷いた。

 そして、背後にいる《守護者》達へと向き直ると、すぐ様指示を出した。


 指示を受け取った者達はすぐ様動き出し、視界から一瞬で姿が消えると、犬歯を剥き出しにして、獰猛に笑った。



「咎人風情が…………。首を長くして待っていろ。我ら、マホロバを敵に回すと、どうなるかをな…………」

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