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第一章 キリエ争奪戦

再びの聖戦

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 土曜の正午まで残り十分--------


 俺はと言うと、早々に着替えを済ませた。

 前回見つけた黒のコートを身にまとい。


 フードを深く被って、忍びマスクで口元を覆う。

 そして、今回からはゴーグルではなく、これの登場だ。


 その名も『霧隠れの仮面』

 某町外れの骨董品こっとうひん店で見つけたそれは、何でも、聖戦に参加していた者が、神器の魔法で生み出した魔道具らしく。

 隠蔽や透明化など、様々な隠密系の能力を内包していた。

 購入する際、試しに使ってみたが、周りの景色に溶け込むように、衣服を含めた体が透明になり、気配や足音なども消し去ってくれた。


 更にこの魔道具の最も良い点は、相手の認識を阻害してくれる事。

 簡単に言えば、これを身につけている間、俺が例え話している時に、ボロを出したとしても、キリエの正体が俺、刀城誠である--------と、誰と相対したとしても、相手には、俺が誠であると理解するどころか、記憶さえ残らない。


 例え、思い返そうとしても、ボヤけていて、うまく思い出せない。


 この仮面をつけている間、俺の正体がバレる事はないのだ。


 ちょっと高いお買い物でしたが、これで気兼ねなく戦える!

 さあ、いつでもかかってらっしゃい!

 と、勢い付いていると…………。


「ん……?」


 神託のメッセージに新着の文字が浮かんでいた。


 急いでディスプレイを操作して、開いてみると、全体通知でそれは送られていた。


 内容はと言うと--------

「うわぁ~…………」


 俺は心底嫌そうにその文面を眺めた。

 何せ、発信者はあの悪名高い狂信者集団『マホロバ』のものだったからだ。


 何でも、今聖戦において、許し難き咎人…………に仕立て上げられた俺を、亡き者にする、という内容だった。


 それに加担した者も、邪魔した者も同罪。


 現実世界で報復する、とさえ言っている。


 なんてはた迷惑な…………。


 ま、こんな連中に俺を止めれるかな……?

 
 とりあえず、今聖戦においての俺の目標は出来るだけ順位を上げて、上位ランカーを目指す、だ。


 ちょっと、神託のヘルプ等で聖戦の事を調べてみたが、どうやら千位圏内に入れば、上位ランカーを認められ、聖戦への参加への有無を決める事が出来るそうだ。


 ちなみに、一美の順位を調べてみたが、中間上辺りにその名前を見つける事が出来た。


 あいつ、かなりの凄かったのな…………。


 でも、上位ランカーの八割程が宗教クラン『マホロバ』に所属してらっしゃるのですが…………。


 もしかしなくても、今回の聖戦って、かなりの高プレイヤーだらけになりません?


 とりあえず、焼き払った方が良いのかな……?


 色々と戸惑いながらも、壁に立てかけてある時計を確認してみると、後、数秒程で転送される事が分かる。


 ま、何とかなるか…………。


 そうお気楽に考えていた時期が、僕にもありました。

 
 


 
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