魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第一章 キリエ争奪戦

予習と婚約者

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 俺、刀城誠は授業を終えてから、学園の図書館を訪れた。


 理由はもちろん、聖戦に関する資料を探すためである。


 まあ、いわゆる明日の聖戦のための予習と言ったところだ。

 まあ、俺にとってはそれだけじゃないないんだが…………。


 えぇ~っと、受付の子はDの十四番辺りにあるって言ってたか…………。

 Dの十四…………Dの十四…………。

「げっ…………」


 俺は目的の場所に到着して早々、顔を引きつらせた。

 何故なら、目的の資料がある本棚の前に見覚えのある顔があったからだ。

「…………いきなり会うなり、そんな言い方はないんじゃないですか……?」

 この嫌味ったらしく言ってくるのは、ただ一人…………。


 俺の許婚様。

 神童一美さんが俺に対して、にこやかに微笑んでいらっしゃる。

 だが、目が笑っていない。

 やばい…………。

 幼少期から共に過ごしてきた経験が俺に訴えかけてくる。






 逃げろ!!! と……………………




「あ、用事があったの忘れてた。じゃっ!」

 俺はさっさとその場を離れようとする。

 だが------------

「ぐえっ…………」

 えりを掴まれ、無残にも引き戻される。

 あぁ、神よ…………。

 何故、私にこのような仕打ちをなされるのですか…………。

 どんなに嘆いても状況を覆せる
訳はなく…………。


 両の手でガッチリと掴まれ、振り向かされると至近距離で目が合った。

 その目はやたらと冷たく、光がない。



 あ、死んだな…………。


 こういう時は、いつも鉄拳が飛んで来るんだっけか……?


 そう思って、目を閉じたが…………。


「……………………」

 一向に拳が飛んでくる気配がない。


 恐る恐る目を開けると--------

「……………………」

 彼女はカクカクと眠たげに頭を揺らしていた。

 よく見ると、化粧で隠してはいるが、目の下にクマがある。

 そういえば…………さっき話していた時、何やら疲れが滲み出ているかのように、何やら弱弱しかったな…………。

 そんな事を思っていると、突然、彼女は前のめりに俺の方に倒れて来ては…………。

 ポン、と俺の胸元に顔をうずめ、静かに寝息を立て出した。


 どうやら、相当お疲れなようだ。

「…………仕方ねぇなぁ…………」

 とりあえず、俺は一美を起こさないよう抱え上げると、保健室は何処だったかなぁ、とため息混じりに呟いた。
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