魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第一章 キリエ争奪戦

マホロバ

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 とある国にある町外れの廃墟--------


 そこはかつて、数百年前まで、行き場を失った子供を養っていた教会の跡地。

 そこにフードを被った怪しげな集団が集まっていた。

「皆の者、よく集まってくれた…………。早速で大変申し訳ないのだが…………」

 教壇に佇んでいた者が口を開くと、その場にいた者達は皆、何も語らず、ただ視線だけを向け、耳を傾る。

「皆も知っていよう。明日の正午には、我らが《聖域》の門が再び開かれる。

 神に愛されし我々が敗北する事などまずありわしない…………」

 その者は次回の聖戦において、この場にいる自分や他の者達が負ける。

 そんな事はありえないと断言するかのように、はっきりとした口調で語り掛けた。

「だが、あろう事か…………。

 先日、我らが神を冒涜ぼうとくするかの如く、不敬な蛮族ばんぞくによって、聖域が悪き邪な炎によって焼かれ--------けがされてしまった」

 あからさまに被りを振り、嘆き、悲しんだ素振りを見せた。

 それに呼応するかのように、その者達はどす黒い殺気をほとばしらせ、周辺の空気が一気に重くなった。

「なればこそ、神の代行者たる我々が神罰を与え、かの愚か者に己が罪の重さを思い知らせなければならない!」

 その者は腰に帯刀していた剣を鞘から引き抜き、高らかに掲げ、叫んだ。

「我らが神に祝福を! 悪しき咎人とがびとには死を!!」

『我らが神に祝福を! 悪しき咎人には死を!!』

 残りの者達も剣や槍などを空に掲げて叫ぶ。


 彼らの名は『聖域機関マホロバ』

 聖戦による異世界は、神の創造せし《聖域》であり、神器を保有する自分達は神によって選ばれた聖戦を守る《守護者》と名乗っている宗教クランだ。

 聖域たる異世界に入り込みし、参加者プレイヤーを見つけては《侵略者》と罵り、殺す、イカれた狂信者集団だ。


 現実世界では、幾つもの国で爆破や殺人など、多くの罪状で広域指名手配されており、各国のブラックリストに入ってはいるのだが…………。

 神器というあらゆる武器を凌駕した聖具を保有する集団に多くの国が挑んだが…………。

 当然の如く、武器の性能差に天と地の差があり過ぎるため、どの国もことごとく破れさり、手をこまねいていた。

 そんな時にである。

 先の聖戦でも、当然のようにマホロバのメンバーは参戦していた。

 だが、あの女が唐突に現れ、圧倒的な力を持って、勝利した。

 その結果、先の聖戦に参加…………戦いに敗北し、参加資格たる《神器》を剥奪されたマホロバのメンバーは絶望のあまり現実世界に帰還した瞬間--------その場で首をき切り、自害した。


 それを知った彼らは自らの同胞を辱め、死なせた、と身勝手な理由で、誠を逆恨みし、抹殺する事を前提に暗躍あんやくし始める。

 その話はすぐ様、多くの国の耳にも入り、彼らの一味を打倒した誠を一刻も早く見つけ出し、取り込もうと動き出したのだった。


 
 
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