魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

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第一章 キリエ争奪戦

始まりは到達に…………

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「マジか…………」

 俺は起きて早々に頭を抱える羽目になった。

 それは俺の手に握られているが関係している。


 その道具の名称は『神託』

 簡単に言えば、《聖戦》--------あのクソゲーが行われる日程を教えてくれるスマホ型の通信魔道具だ。

 ちなみに、日程は明後日の正午。

 土曜の昼間に行われる。

 前回のクソゲーが行われてからまだ浅い。

 基本、聖戦ってのは一ヶ月毎に一回開催される筈なのだが…………案外、早く始まるのな…………。

 とりあえず、朝飯食って、学生の務めを果たしましょうか…………。


 そう思っていた時が懐かしい…………。

 俺は寝室から出て早々…………欠席したくなった。

「あら、随分と早起きね…………。今日は嵐にでもなるのかしら……?」

 そう嫌みったらしく行ってくる、凛とした大人びた感じの黒髪和風美女は神童一美しんどうかずみ

 俺が通う王立魔導研究学園の生徒会長にして、俺の幼なじみであり、

 簡単に言えば、許婚いいなずけである。

 --------が、何故か俺の部屋へと入り込み、キッチンを占領していた。

 とりあえず…………

「何でここにいる……?」

「決まっているでしょう……? 未来の夫たるあなたのために朝食あさげの準備をしているのよ…………」

 嬉しいでしょ……? っと、さも当然のように仰るあなたは何様ですか……?

 てか、どうやってあなた入って来たんですか……?

 一応ここ、学園の男子寮で、基本、女性は立入禁止ですよ?


 そう言ってやりたいが、時間の無駄だろう。

 俺は昔っからこいつの性格はよく知っている。

 可憐で優しく、聡明。

 文武両道で、成績も、頭脳も、学園十位代に入る程のトップクラス。

 誰よりも皆の前に立ち、気品溢れる彼女は学園では知らないものなどいない超有名人。

 言うなればアイドル的存在だ。

 噂によれば、隠れファンクラブがある程らしい。


 それに比べて俺は何とも情けない。

 成績も、学力も平凡で、多少なりとも武術の心得はあるものの--------はっきり言って凡人クラス。


 そんな俺の許婚なもんだから、ほんと俺へのやっかみは多い。

 分不相応な俺としてはさっさと婚約を破棄して、俺よりももっと良い奴を見つけて欲しいもんだ。

「うおっ!?」

 そう思っていたら、俺の顔の横を何が過ぎていった。

 恐る恐る振り返ると、そこには壁に突き刺さったクナイがあり--------

 そして…………。

「ふざけた事を考えていないで…………。さっさと顔、洗って来なさい…………」

 殺気の籠もった眼で睨まれた。

「はい…………」

 俺は蛇に睨まれた蛙の如く、彼女の言う通りに顔を洗いに行く。

 それしか、俺が生き残る道はない。

 本能だけじゃない。

 経験も相まって、俺は素直に彼女に従った。


 そんな彼女が寂しげに、俺を見ていた事にも気付かずに…………。
 
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