魔法聖戦の女神 〜変幻自在の魔導書は規格外過ぎた〜

水先 冬菜

文字の大きさ
上 下
7 / 54
プロローグ

聖戦の後

しおりを挟む
 聖戦は俺の圧勝にして、優勝で幕を閉じた。

 《聖戦》やら、優勝者インタビューやらが終わって早々、俺は飛ばされた家に戻り、冷め切った夕食を温め直した。


 そんでもって、やけ食いとばかりに夕食をかき込んで--------そのまま寝た。


 そして、次の日の朝--------

 町は昨日の《聖戦》の話題で持ちきりだった。

「おい、お前ら見たか? 昨日の…………」

「見た見た。何だよあのとんでもねえ威力!」

「確か、……? だっけか…………。

 顔を隠してはいたからよく分からんが、あの我がままなスタイルからして、俺は中々に良いだと思うぜ?」

「「ちげぇねぇ!!」」

 そんな下卑げびた笑いをする男達一向。

 正直、聞いている俺からしたら、おぞましい話だ。

 もちろん、『キリエ』とはその場で咄嗟に言った偽名だ。

 体の方も、ちょっとした方法を用いて騙した。

 聖戦を終えた後、実を言うと、別の空間に転送された俺はその先にいた記者達のインタビューを受ける事になった。

 だが、さっさと飯食って、寝たい、と面倒くさがった俺は名前だけを言い残し、インタビューを断固拒否。

 早々にその場から立ち去った。

 その影響もあるのか。

 記者達は血眼になって、俺の情報を探っているらしい。

「……………………」


 うん。

 町の反応を見る限り、誰もあれが俺だとは気付いていないみたいだ。


 何故、そんな事をしたのかって……?

 それは前話した通り、厄介ごとに巻き込まれないためだ。

 特に今回、俺は先の聖戦で力を見せつけ過ぎた。

 恐らく、今頃、王宮や騎士団といった所は俺を勧誘する為に、躍起になって、西や東へと走り回っている事だろう。


 だが、残念な事に俺を見つける事は不可能だ。


 何せ、聖戦に参加した者の情報はない。

 ただ、一方的に、町の空に、観戦する為の映像が流れるだけで、その後は、自ら名乗る以外は独自に国が調査をして、身元割り出すしか方法がない。


 しかしだ。

 俺は顔を含めた全身を隠し、とある方法で女だと騙して、キリエという偽名を名乗った。

 正体不明。

 嘘だらけ。

 一切の情報がない。

 戸籍すら無い。

 さて、どうやって俺を見つけられる?

 答えは不可能だ。

 どう足掻いても、俺に繋がる情報がない。

 の方法を除いて、俺がこっちの世界でヘマをしなければ、何事もなく、平凡に過ごせる筈だ。

「よし! 頑張りますか、ね…………」

 俺は大きく背を伸ばすと、学園の門を潜った。

 これが、俺、刀城誠とうじょうまことの始まりにして、面倒事の始まりでもあった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...