スキル、弾丸生産? 〜メカチートな落第騎士は、最強である事をひた隠す〜

水先 冬菜

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生まれ変わって…………

男として死んだ日

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「ここは…………」


 私は辺りを見渡すと、そこは私がエーテルに突き落とされた谷底の上にあった崖の縁で佇んでいた。


(これで問題はありませんよね)


 一瞬の出来事に、戸惑う私にその銃は語り掛けて来る。


「あなた…………一体、何をしたの……?」

(さあ……? 一体、何をしたんでしょうね……?)


 私の問い掛けに、そいつは言葉を濁して答えない。

 その代わりに…………。

(それよりも、あれは良いんですか……?)


「あれ……?」


 そう私が問い掛けると同時に、近くで土煙が起こる程の爆発が起きる。


「あれは……?」


 遠くてよくは見えない…………筈なのに、何故か、私はその状況を事細かに視認する事が出来た。


 視界を遮る木々を擦り抜けかのように、透視して、その状況を確認していく。


 すると、私の目に入ったのは、頬を涙で濡らしながら、エーテルに向かって行く弟とその幼なじみがいた。


(どうやら、は正常に機能しているようですね)


 神眼……?

 この透視能力の事か……?


 全く持って、理解は出来ないが、見る限り、弟達は敵エーテルに押されている。


 早く助けに行かないと!!


(自己進化プロセス起動。

 第二形態へ移行します)

 
 右手の銃が急速に形を変え、新たな姿となる。


 それは、対戦車ライフルと呼ばれる大口径ライフル銃だった。


 ライフル銃の銃身に取り付けられたアンカーが地面に突き刺さり、自動でスコープの照準を合わせ始める。


「これは…………!?」


(考えている暇があるなら、さっさと狙ってください)

「分かってる!」

 この際、何でも良い!


「スキル《弾丸生産》」


 掌に銃弾が瞬時に作られ、そのまま、ライフルに装填。


 相手を狙って--------引き金を引く!!


 放たれた弾丸は一直線に、エーテルに命中し、不利だと悟ったのか。


 スコープ越しに、エーテルがその場から退却していくが見える。

(敵エーテルの退却を確認。

 お見事です)

 銃から私を称賛する声がする。


 だが、私はそれどころではなかった。


「…………私がやったの……?」


 私の手が震えている。


 それは恐怖ではない。


 どちらかといえば、歓喜にも似た感情だった。

 防人の試験に落ちた私が、どんな形であれ、世界の敵であるエーテルから誰かを守る。


 こんな嬉しい事はない。


 やばい。


 本格的に泣けて来た。

(何故、泣いておられるのですか?)


「あなたには、一生分からないわよ…………」

 そんなこんなで、私が感動で打ち震えていると…………。

(生体反応を確認。

 物凄い勢いでこちらに向かって来ています)


「…………え……?」


 恐る恐る、顔を上げて見てみると、神眼と呼ばれるこの目には、物凄い剣幕で、我が弟とその幼なじみがこちらに向かって来ていた。


 あれ……?


 どうしよう……?


 急に、女になっちゃったし、何て説明したら良いの……?


 状況的にも、まずいと判断した私はその場から咄嗟に逃げ出したが…………。

「「待ちなさい(やがれ)!!」」

「ひぃいいいっ!!!!」

 後になって知った事だが、私が二人から逃げ回っている内に、私の死亡届けが出されていたみたいで…………。
 

 この日、カズハ・ミツルギという男は戸籍の面でも死んだ事になった。

 
 まあ、私がそれを知るのは、まだ先の事になるのだが…………。
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