【修正中】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜

水先 冬菜

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聖戦の始動編

閑話 魔族領域

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~魔族サイド~


 魔族領域-------------

 それは人類と敵対する勢力の住まう土地-------------

 人類の希望たる勇者と相反する魔王が支配する領域-------------

 そんな魔族領にあるとある場所で、魔族達が慌ただしく蠢いていた。

「おい、状況はどうなっている!!!」

「先行したアザルとリザリーネの部隊はどうした!!?」

「カザルト砦の詳細な状況は!!?」

「ええいっ!!! 一体、何が起きているというのだ!!!!」

 誰もが右往左往と動き回り、怒号が飛び交う此処は、誰もが耳にした事のある《魔王城》の一室-------------

 その一室では、ある問題に対するが何時間にも渡り、行われていた。

 そんな慌ただしい現場で、ただ一人だけ-------------いや、一体だけ、平然と、その光景を静観する者がいた。

 それこそが、魔族を統べ、表裏一体とも言うべき、勇者の宿敵-------------《魔王》その人である。


「……………………」


 魔王は冷静に、怒号飛び交う会話に耳を傾け、状況の推移を虎視眈々こしたんたんと判断していく。

 だが、導き出される答えは、どれも最悪なもので、僅かだが、魔王の表情が歪んで行っている。

「ご、ご報告致します!!!」

 そんな慌ただしい雰囲気が蔓延する部屋に、一体の魔族が勢い良く、見るからに頑丈そうな扉を開け放ち、入って来た。

 全身に鎧を纏っている背格好からして、どうやら、魔族側の兵士のようだ。

 そんな兵士が息を切らせながらも、部屋全体に聴き渡るようにして、報告した。

「ぜ、全滅!!! 先行部隊が全滅しました!!!」

 それは魔族側からすれば、信じられないものだった。

 先行部隊が全滅した?

 それは本当なのか?

 確かな情報なのか?

 様々な事を、その兵士へと投げ掛けた。

 だが、悉く、全てが絶望的に否定され、更に追加される報告に、段々と室内にいた者達の顔色が青を通り越して、白く、血の気が引いて行くものへと変わって行った。

「そ、そんな馬鹿な…………!!!」

「ありえるのか?!」

「いや、ありえない!!!」

「しかし、現に奴らは-------------」

 誰もが、不安に駆られた。

 誰もが、信じたくはなかった。

 だが、現実とは、非常なもので-------------また、新たな兵士が室内へてやって来て…………。

 報告をする間も無く、その場で、その兵士の頭が吹き飛んだ。


「来たか…………」

 
 魔王が悠然と立ち上がり、今、頭の吹き飛んだ兵士が立っていた入り口へと、鋭利な視線を向ける。

 そこへやって来たのは、湊のいう《レギオン》タイプと呼ばれるロボットだった。

「か、かかれぇええええええええ!!!!!!」

 入り口付近に現れたレギオンに対し、皆、果敢に立ち向かって行くが、右手に装備したマシンガンで向かって来る者達を容赦なく、機械的に反撃し、蹂躙するレギオン。

 魔法で攻撃しても、全身の装甲は《魔法無効化マジック・キャンセラー》の効果で、無効化される為、意味がない。

 そして、数分もしない内に、弾切れになったマシンガンを投げ捨てるレギオン。

 ゆっくりと、もう片方の手に握られた大斧を引き摺りながら、残りの敵へと歩み始める。

 その部屋で唯一立ってい者-------------《魔王》の元へと向かって…………。

「まさか…………これ程とは-------------」

 魔王が初めて言葉を紡ぐ。

 その上で、戦闘態勢に入るなり、数十にもなる魔法をレギオンに浴びせる。

 だが、これも、奴は全て、無効化してみせる。

 これには、流石の魔王も表情が歪んだ。

 そして、理解した。

 
 あぁ、此処までか…………と-------------

 
 魔王の視界が右斜めにズレた。

 奴の腕には、先程まで、手にしていた大斧がない。

 そう奴は、魔王が魔法を放つ際に、既に大斧を投擲していたのだ。

 百戦錬磨とも謳われた魔王ですら、見抜けぬ投擲能力。

 このままでは、我ら魔族は-------------

 そんな危機感を募らせ、魔族最強の魔王はこの世を去った。

 世界の破壊者たる奴らを残して-------------

「ふふっ…………」

 そんな様子を、遠目で眺めていたは満足げに微笑むと、魔王の亡骸の側へと向かい-------------勢い良く、ヒールの踵を突き刺すように、踏み付けた。

 楽しげに、そして、邪悪に頬を緩ませて…………。

 



 この日、この時-------------《魔王》の死を持って、世界の存亡を掛けた《聖戦》が今、その幕を上げた。

 






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