81 / 82
聖戦の始動編
閑話 魔族領域
しおりを挟む
~魔族サイド~
魔族領域-------------
それは人類と敵対する勢力の住まう土地-------------
人類の希望たる勇者と相反する魔王が支配する領域-------------
そんな魔族領にあるとある場所で、魔族達が慌ただしく蠢いていた。
「おい、状況はどうなっている!!!」
「先行したアザルとリザリーネの部隊はどうした!!?」
「カザルト砦の詳細な状況は!!?」
「ええいっ!!! 一体、何が起きているというのだ!!!!」
誰もが右往左往と動き回り、怒号が飛び交う此処は、誰もが耳にした事のある《魔王城》の一室-------------
その一室では、ある問題に対する危急的な会議が何時間にも渡り、行われていた。
そんな慌ただしい現場で、ただ一人だけ-------------いや、一体だけ、平然と、その光景を静観する者がいた。
それこそが、魔族を統べ、表裏一体とも言うべき、勇者の宿敵-------------《魔王》その人である。
「……………………」
魔王は冷静に、怒号飛び交う会話に耳を傾け、状況の推移を虎視眈々と判断していく。
だが、導き出される答えは、どれも最悪なもので、僅かだが、魔王の表情が歪んで行っている。
「ご、ご報告致します!!!」
そんな慌ただしい雰囲気が蔓延する部屋に、一体の魔族が勢い良く、見るからに頑丈そうな扉を開け放ち、入って来た。
全身に鎧を纏っている背格好からして、どうやら、魔族側の兵士のようだ。
そんな兵士が息を切らせながらも、部屋全体に聴き渡るようにして、報告した。
「ぜ、全滅!!! 先行部隊が全滅しました!!!」
それは魔族側からすれば、信じられないものだった。
先行部隊が全滅した?
それは本当なのか?
確かな情報なのか?
様々な事を、その兵士へと投げ掛けた。
だが、悉く、全てが絶望的に否定され、更に追加される報告に、段々と室内にいた者達の顔色が青を通り越して、白く、血の気が引いて行くものへと変わって行った。
「そ、そんな馬鹿な…………!!!」
「ありえるのか?!」
「いや、ありえない!!!」
「しかし、現に奴らは-------------」
誰もが、不安に駆られた。
誰もが、信じたくはなかった。
だが、現実とは、非常なもので-------------また、新たな兵士が室内へてやって来て…………。
報告をする間も無く、その場で、その兵士の頭が吹き飛んだ。
「来たか…………」
魔王が悠然と立ち上がり、今、頭の吹き飛んだ兵士が立っていた入り口へと、鋭利な視線を向ける。
そこへやって来たのは、湊のいう《レギオン》タイプと呼ばれるロボットだった。
「か、かかれぇええええええええ!!!!!!」
入り口付近に現れたレギオンに対し、皆、果敢に立ち向かって行くが、右手に装備したマシンガンで向かって来る者達を容赦なく、機械的に反撃し、蹂躙するレギオン。
魔法で攻撃しても、全身の装甲は《魔法無効化》の効果で、無効化される為、意味がない。
そして、数分もしない内に、弾切れになったマシンガンを投げ捨てるレギオン。
ゆっくりと、もう片方の手に握られた大斧を引き摺りながら、残りの敵へと歩み始める。
その部屋で唯一立ってい者-------------《魔王》の元へと向かって…………。
「まさか…………これ程とは-------------」
魔王が初めて言葉を紡ぐ。
その上で、戦闘態勢に入るなり、数十にもなる魔法をレギオンに浴びせる。
だが、これも、奴は全て、無効化してみせる。
これには、流石の魔王も表情が歪んだ。
そして、理解した。
あぁ、此処までか…………と-------------
魔王の視界が右斜めにズレた。
奴の腕には、先程まで、手にしていた大斧がない。
そう奴は、魔王が魔法を放つ際に、既に大斧を投擲していたのだ。
百戦錬磨とも謳われた魔王ですら、見抜けぬ投擲能力。
このままでは、我ら魔族は-------------
そんな危機感を募らせ、魔族最強の魔王はこの世を去った。
世界の破壊者たる奴らを残して-------------
「ふふっ…………」
そんな様子を、遠目で眺めていたある者は満足げに微笑むと、魔王の亡骸の側へと向かい-------------勢い良く、ヒールの踵を突き刺すように、踏み付けた。
楽しげに、そして、邪悪に頬を緩ませて…………。
この日、この時-------------《魔王》の死を持って、世界の存亡を掛けた《聖戦》が今、その幕を上げた。
魔族領域-------------
それは人類と敵対する勢力の住まう土地-------------
人類の希望たる勇者と相反する魔王が支配する領域-------------
そんな魔族領にあるとある場所で、魔族達が慌ただしく蠢いていた。
「おい、状況はどうなっている!!!」
「先行したアザルとリザリーネの部隊はどうした!!?」
「カザルト砦の詳細な状況は!!?」
「ええいっ!!! 一体、何が起きているというのだ!!!!」
誰もが右往左往と動き回り、怒号が飛び交う此処は、誰もが耳にした事のある《魔王城》の一室-------------
その一室では、ある問題に対する危急的な会議が何時間にも渡り、行われていた。
そんな慌ただしい現場で、ただ一人だけ-------------いや、一体だけ、平然と、その光景を静観する者がいた。
それこそが、魔族を統べ、表裏一体とも言うべき、勇者の宿敵-------------《魔王》その人である。
「……………………」
魔王は冷静に、怒号飛び交う会話に耳を傾け、状況の推移を虎視眈々と判断していく。
だが、導き出される答えは、どれも最悪なもので、僅かだが、魔王の表情が歪んで行っている。
「ご、ご報告致します!!!」
そんな慌ただしい雰囲気が蔓延する部屋に、一体の魔族が勢い良く、見るからに頑丈そうな扉を開け放ち、入って来た。
全身に鎧を纏っている背格好からして、どうやら、魔族側の兵士のようだ。
そんな兵士が息を切らせながらも、部屋全体に聴き渡るようにして、報告した。
「ぜ、全滅!!! 先行部隊が全滅しました!!!」
それは魔族側からすれば、信じられないものだった。
先行部隊が全滅した?
それは本当なのか?
確かな情報なのか?
様々な事を、その兵士へと投げ掛けた。
だが、悉く、全てが絶望的に否定され、更に追加される報告に、段々と室内にいた者達の顔色が青を通り越して、白く、血の気が引いて行くものへと変わって行った。
「そ、そんな馬鹿な…………!!!」
「ありえるのか?!」
「いや、ありえない!!!」
「しかし、現に奴らは-------------」
誰もが、不安に駆られた。
誰もが、信じたくはなかった。
だが、現実とは、非常なもので-------------また、新たな兵士が室内へてやって来て…………。
報告をする間も無く、その場で、その兵士の頭が吹き飛んだ。
「来たか…………」
魔王が悠然と立ち上がり、今、頭の吹き飛んだ兵士が立っていた入り口へと、鋭利な視線を向ける。
そこへやって来たのは、湊のいう《レギオン》タイプと呼ばれるロボットだった。
「か、かかれぇええええええええ!!!!!!」
入り口付近に現れたレギオンに対し、皆、果敢に立ち向かって行くが、右手に装備したマシンガンで向かって来る者達を容赦なく、機械的に反撃し、蹂躙するレギオン。
魔法で攻撃しても、全身の装甲は《魔法無効化》の効果で、無効化される為、意味がない。
そして、数分もしない内に、弾切れになったマシンガンを投げ捨てるレギオン。
ゆっくりと、もう片方の手に握られた大斧を引き摺りながら、残りの敵へと歩み始める。
その部屋で唯一立ってい者-------------《魔王》の元へと向かって…………。
「まさか…………これ程とは-------------」
魔王が初めて言葉を紡ぐ。
その上で、戦闘態勢に入るなり、数十にもなる魔法をレギオンに浴びせる。
だが、これも、奴は全て、無効化してみせる。
これには、流石の魔王も表情が歪んだ。
そして、理解した。
あぁ、此処までか…………と-------------
魔王の視界が右斜めにズレた。
奴の腕には、先程まで、手にしていた大斧がない。
そう奴は、魔王が魔法を放つ際に、既に大斧を投擲していたのだ。
百戦錬磨とも謳われた魔王ですら、見抜けぬ投擲能力。
このままでは、我ら魔族は-------------
そんな危機感を募らせ、魔族最強の魔王はこの世を去った。
世界の破壊者たる奴らを残して-------------
「ふふっ…………」
そんな様子を、遠目で眺めていたある者は満足げに微笑むと、魔王の亡骸の側へと向かい-------------勢い良く、ヒールの踵を突き刺すように、踏み付けた。
楽しげに、そして、邪悪に頬を緩ませて…………。
この日、この時-------------《魔王》の死を持って、世界の存亡を掛けた《聖戦》が今、その幕を上げた。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。


ハズレ勇者のメカ武装 〜役立たずと王都を追い出されたので、暇つぶしに魔王を倒す〜 試作品
水先 冬菜
ファンタジー
マンガでも良くある勇者召喚で呼び出された俺、東條真幸(とうじょうまさき)は-------------呼び出した王国の連中に《役立たず』だと、罵倒を浴びせられ、無一文で着の身着のままで、王都を追い出された挙句、証拠を隠滅する為に、刺客を差し向けられる。
なんて、ありがちな不運設定なのにも関わらず、初めから隠していた《特殊スキル》で、それらを撃退。
そして、この刺客達を証拠に、王国の連中が自分に手出し出来ないように仕向けたり、関わらせないようにと、ありとあらゆる方法で嫌がらせをして旅へと出た。
それから、冒険者になりすましながら、各地を転々として、早二年-------------
ある程度、生活の基盤が出来て、暇になったので、お約束通りに、ここは"暇つぶし"に魔王を倒しに行きますか!!
そう思っていた矢先に、俺に無礼を働きまくった王国の王女とやらが頭を下げて来て-------------
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる