【修正中】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜

水先 冬菜

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聖戦の始動編

勇者、堕ちる時--------

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『だと言ったら…………どうする?』

 スピーカー越しに、あのストーカー勇者がほくそ笑む声が聞こえて来る。

 だが、何だか、声色というか…………雰囲気が、変わったような気がする。

「とりあえず、さっさと降ろせ!!! クソ野郎!!!?」

『駄目に決まっているでしょ? 君は僕と共に来るんだ。の為に…………』

「はぁ?! あの方…………?」

 おいおい、何か、話している事も変わっていないか?

 確か、前は『世界を救う為に』とか、そんな感じな事を言っていなかったか?

『逆らうなら、今、此処で握り潰してあげる』

「ぐっ…………」

 しかも、何か、ヤンデレってぽくなってるし…………。

 つか、死ぬ死ぬ!!!

 死ぬって!?

『さぁっ!? 僕に連いて行くと言え!!! 言うんだ!!?』

 こいつ、等々、狂いやがったのか!?

『宣誓しないなら、このまま、握り潰して-------------』

『駄目っ!!!!!』

 俺が、本気で、命の危機を感じた瞬間、ソードの横っ面に体当たりをかます巨大な影があった。

 その衝撃で、運良く、ソードの腕から脱出した俺は、地面に身体を強く打ち付けながらも、ヨロヨロになりながら、気合いで立ち上がる。

 そして、顔を上げるなり、両手で取っ組み合いをしている《ソード》と《リヴァーサル》タイプの姿が映る。

『勇者様、あなたは一体、何をなさっているのか、分かっておられるのですか!?』

 このスピーカーから漏れる声からして、聖女様だな…………?

『世界を救う為には、この男の力は必要不可欠!!! そう言ったのは、他ならぬ、あなたでしょう!!?』

 そんで、こっちが、剣聖様ですね。

『うるさい!!! うるさいうるさいうるさいっ!!!!!!!』

 《ソード》が、ゾンビの如く、身体を起こして、《リヴァーサル》へと、拳を放って来る。

『このっ!!!!』

 剣聖が操縦しているのか、《リヴァーサル》は拳を受け流し、クロスカウンターを食らわせる。

 つか、操縦方法を教えた覚えもないのに、よく動かせんな…………って、見てる場合じゃないっ!!!

「っ!!!」

 俺は爆発で、飛ばされた機体の方へと向き直り、急いで、駆け寄る。

 幸い、横たわってくれているおかげで、すんなりと、腹部のコックピットに搭乗出来た。

「んで、この機体の名称は…………?」

 操縦席に座るなり、左右のスティックを握り、機体の起動に専念する。

 周りのモニターやパネルが点滅して、様々な情報が表示されて行く。

 その中に、この機体の名称と思しき名が現れる。


 《ストラーダ》


 どうやら、水中戦闘を目的とした機体らしい。

「起動シークエンス・オールグリーン。システムチェック。魔力ゲージ・イエロー。出力半減。駆動系・操縦系回路問題なし。機体兵装を戦闘ステータスへ移行-------------」

『邪魔だああああああっ!!!!!!』

『きゃああああああーっ!!!!!』

「っ!?」

 前方のモニターに、勇者を乗せた《ソード》が剣を抜き放ち、剣聖達の《リヴァーサル》に振り下ろす姿がある。

 クソがっ!?

 早く、早くしやがれっ!!!!

「機体ダメージ・グリーン。武装残弾:水中ミサイル×8・複合カノン・シールド砲×4-------------後は、これかっ!!!」

 俺は内心、焦りつつも、一つ一つ項目を確認して行く。

 そして、急いで、機体を起こし、腰に装備された二振のナイフを引き抜いて、構える。

「全システム確認終了。駆動系・操縦系統正常-------------力を貸せっ!!! 《ストラーダ》!!!!」

 背中と両脚のスラスターを吹かせて、一気に《ソード》との距離を詰める。

 その上で、片手に握り締めたナイフを一振り、ソードの腕に突き刺した。

『何っ!?』

 《リヴァーサル》を足で踏み付けていた強固なソードの腕が、二の腕の辺りに突き刺さり、ダラリと垂れ下がり、続け様に右肩の大型シールドの体当たりで、奴の巨大をよろめかせる。

 そして、両肩の大型シールドの内部に収納されたキャノン砲の砲身を展開して、発射。

 奴の頭部と左ももの辺りに、砲弾は命中して、後方に倒れ込んだ。

『クソ…………クソクソクソがっ!!!!!! 動けっ!!!!! 動けよっ!!!!! 僕は世界を救うんだっ!!!!!! あの男を殺して、あの人に明け渡すんだああああああああーーーーー!!!!!!!

 何か、支離滅裂な事を勇者様が叫んでいるんだが…………。

 つうか……………………こっわっ!!!??

 あのクソストーカー勇者って、あんなキャラだっけ…………?

『ゆ、勇者…………様…………?』

『な、何が起きてるの…………?』

 《リヴァーサル》を起き上がらせた剣聖達の困惑の声が、機体のスピーカー越しに聞こえる。

 どうやら、剣聖や聖女も、勇者の言動に対して、動揺しているみたいだ。

 一体全体、あのクソ勇者に何があったんだ?

『どうやら、ここまでのようですね』

 不意に、何処からか、声が聞こえる。

 咄嗟に、周りを見渡し、センサーを出来る限り全開にして、探すが-------------辺りには、何も見当たらない。

『探しても無駄ですわ。あなた方がおられる場所に、わたくしはおりませんから…………』

 人の心が読めるのか、その声は見透かしたような口調で言葉を紡いで来る。

 というか、この声はまさか------------!?

『あら、わたくしの事を覚えてくだされるなんて…………。流石は、わたくしの夫』

 うわぁあ~…………これ、あの時の女神だわ。

 聞いているだけで、気色悪い。

『…………そういう物言いは女性に対して、失礼ではなくって…………?』

 明らかに、不機嫌そうな声が、頭に響く。

 どうやら、俺の世界の噂に聞く《念話》という奴で、直接、頭に言葉を届けて、聞いているらしいな…………。

「一体、何の用だ…………?」

 俺は不機嫌そうに、あの女神に尋ねた。

 すると、女神が、クスリと微笑む声が聞こえた瞬間-------------

「なっ!?」

 俺の目の前のモニター画面から勇者の搭乗していた《ソード》の真下に、魔法陣が一瞬で展開され、跡形も無く、姿を消した。

 急いで、センサーやレーダーを確認してみても、ソードの機体反応は検知されない。

 どうやら、何処かに転移されたようだ。

 しかも、あの魔法陣には見覚えがある。

 そう…………あの魔法陣は、《フォートナー》で、幾つかの街を救っている時に、レギオンタイプのロボット達の姿が掻き消えた時のものだ。

 あの時も、奴らが、何らかの転移魔法で、何処かへと跳んだと考えていたのだが…………。

 まさか、この女神の仕業だったのか?

「おい、勇者の野郎を何処にやった…………」

 女神からの返答はない。

 ただ、とても愉快に笑う声が聞こえる。

 そして、ひとしきり笑い終えた後、女神は-------------

『これで、終わり…………なんて、思ってはいけませんよ? これは始まりなんです。愛すべき夫であるあなたとわたくしの愛を紡ぐ為の-------------だから、わたくしを探しなさい。わたくしを楽しませなさい。わたくしの心を満たしなさい。そして、わたくしのみを愛しなさい』

 さもなくば-------------












『わたくしの傀儡が、世界に絶望を運ぶでしょう-------------』









 -------------そう一方的に言い残して、声が途絶えた。

 






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