【修正中】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜

水先 冬菜

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世界の破滅編

閑話 信じられない光景

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~勇者サイド~


「…………ありえない…………」

 そう呟いたのは誰だったのか、分からない。

 皆、呆然と赤く染まる街並みに言葉を失っていた。

 あの後、湊のミサイル攻撃により、彼を見失った勇者パーティーは、その後も湊を懸命に捜索し続けていた。

 彼が飛び去った方角へと歩みを進め-------------その道中、聖女がからの《神託》を受け、この街へと訪れていたのだ。

「っ!!!」

 真っ先に勇者がいつもの如く、街へと向けて、駆け出した。

 もちろん、勇者として、街の人々を守る為にだ。

 身体強化の魔法で視力を底上げ、街の様子を伺いながら、草原を駆け抜ける。

 すると、驚いた事に、先日、湊を見つけた際に遭遇した《ロボット》と呼ばれるゴーレムの集団が街を襲っているようだ。

 他の勇者パーティーの面々も、すぐに彼女の意図に気付いて、その後を追った。

 瓦礫とかし、崩れ去った街の周りに聳え立っていた筈の城門を飛び越え、街へと突入する。

 そして、まず、勇者が目にしたのは、見るも無惨に横たわった住民の悲惨な死に顔だった。

「…………これは…………!?」

 思わず、その異様な光景に口元を押さえて、胃を蒸し返すような嘔吐感に襲われる。

 老若男女問わず、街のあちこちに、多くの手足が…………死体の山が気付かれていた。

「ひっ!? た、助けて----------------」

 最後まで言わせず、ただ、一方的に命を奪う前にも見た金属のゴーレム達-------------

 今、目の前で、その振り上げた大斧を血に染め、肉塊に変えた怨敵に、勇者の怒りは頂点に達した。

「お、お前えええええええええ!!!!!」

《アロンダイト》

 勇者は腰にぶら下げていた聖剣を抜き放ち、光を金属のゴーレムに向け、解き放つ。

 そんな光を何事でもないかのように、ハエを払うかのように、軽く手を振って、弾き返すゴーレムに、驚愕の表情を向ける勇者。

 だが、次の瞬間、数メートル離れた場所から一気に勇者の目の前に奴は現れ、勇者を吹き飛ばした。

「くっ!!!」

 何とか、聖剣で力任せに、横凪で放たれた大斧を防ぎ、受け身を取る。

 そして、そのまま、体勢を立て直し-------------勇者はそのまま、頭を奴に掴まれ、地面へと顔面から叩き付けられる。

 それは後から追い付いて来た勇者パーティーメンバーにも、地面に叩き付けられた勇者本人にも、何が起きたのか、全く持って、理解出来なかった。

「貴様ああああああああああっ!!!!!」

「…………!!! 駄目っ!!!」

 聖女の静止を振り切って、戦士が勇者を救おうと立ち向かって行く。

 身体強化系の魔法を用い、一気に距離を詰め、ゴーレム達にも負けないくらい大斧を振り下ろそうとして-------------

「……………………え?」

 突如、戦士の視界が上下左右に歪んだ。

 勇者の目の前で、戦士だった細切れにされた肉片となり、爆ぜるようにして、周囲に建物や路上に飛び散る。

 再び、言葉を失うメンバー。

 今、仲間を殺されたショックも、それなりに大きいが-------------それよりも、驚きを隠せないのは、ゴーレムの戦闘能力だ。

 言わずもがな、勇者パーティーのメンバーは、宿敵である魔族の王である《魔王》を討伐を目的とした戦闘集団だ。

 それは当然、各国でも、より優れた人材が加入している事を意味している。

 そんなメンバーが、ああも簡単に屠られるという事は、ゴーレムの戦闘能力は勇者パーティーの面々の上を軽く超えているという事で…………。

「「「……………………」」」

 剣聖・聖女・魔法使いの三人はすぐ様、戦闘態勢に入り、ゴーレムを警戒した。

 意識が朦朧として来たのか、勇者は未だに頭をゴーレムに掴まれ、頭から流れる血で、顔を赤く染めながら、うめき声のようなものを上げていた。

 既に満身創痍だ。

「……………………」

 長年、戦場に身を投じて来た剣聖も長年の経験と培って来た感性が、ゴーレムの危険性を示唆しているのを感じていた。

 もし此処で私達が撤退すれば、勇者もこの街の人々も確実に殺されるだろう。

 だが、立ち向かっても、勝ち目などない。

 戦士と同じ末路が待っているだけだ。

 その証拠に-------------


《フレイムアロー》


 魔法使いが、ゴーレムの背後に炎の矢を幾つも出現させ、放った。

 しかし、その赤き矢はゴーレムの身体を貫く事叶わず、金属の身体に触れるだけで、霧散してしまった。


《マジックキャンセラー》


 それは、あらゆる魔力を無効化する能力-------------

 それを持っているという事は、あのゴーレムには魔法は一切、通用しない事を意味している。

「がはっ!!!」

 その上で、ゴーレムの腕に先程まであった大斧の姿が消えている事を認識していると、その刃が魔法使いの身体を真っ二つに両断していた。

 既に戦闘能力の差は歴然だった。

 前に苦戦した奴とは明らかに違うその力に、剣聖と聖女は戦慄した。

 このまま行けば、確実に死ぬ-------------

 それは【変えられぬ運命】だと、嘲笑われているかのように、何気ない動作で一歩、一歩と勇者を引き摺りながら、二人の前まで歩みを進めるゴーレム。

 絶望という名の巨大な壁が、歩を進める度に、二人の身はすくみ、恐怖が身体中を駆け巡る。

 まるで、タチの悪い伝染病のように、二人はその場で震えながら、立ち尽くすしかなかった。

 ゴーレムが歩を止め、剣聖の隣で佇む聖女の前へと到着し、ゆっくりとその手の指を槍の如く細め-------------聖女の心の臓を貫く為に、その腕を後方へと引いた。

 お願い…………動いて…………。

 動いてよ!!!!!

 親友である聖女の死を確信しながらも、恐怖で動けずにいる剣聖は、何度も、剣を引き抜こうと心の中で叫んだ。

 だが、一度、心に根付いてしまった恐怖を拭える訳もなく、指一本ですら、自分の言う事を聞き入れてはくれなかった。

 そして、放たれた槍の如き貫手が聖女の胸を貫くか、貫かないかという境目で、剣聖は思わず、縋ってしまった。






 誰か、助けて-------------!!!



 親友の死を直視出来ず、思わず目を閉じる剣聖。

 そんな時に、それは起きた。

「……………………何? あれは…………」

 それは聖女の戸惑いの声から始まった。

 いつまで経っても、親友の悲鳴も、己の死が来ない事に疑問を思った剣聖が、恐る恐るその瞼を開くと、あのゴーレムと思しき、両腕の残骸のみが地面に転がっていた。

 それどころか、天から降り注ぐ光の雨が遠目から見るからでも、あのゴーレムの集団-------------もとい、軍勢に降り注ぎ、駆逐する光景が映る。

 信じられなかった。

 自分が死ななかった事もそうだが、あれ程の力を持つゴーレム達が、紙屑同然に倒されて行くその光景が…………。

「……………………ねぇ、エレノア…………あれは、何…………?」

 剣聖と同様に、今もその圧倒的な光景に目を奪われていた聖女が、剣聖に対して、言葉を紡いだ。

 聖女が指差す方には、空を自在に駆け抜ける一体のゴーレムがいた。

 それを見て、剣聖は再び確信する。


 あれは彼だと-------------


 やはり、彼はであるのだと-------------

 剣聖は走り出した。

 全てのゴーレム達を破壊したのか、街の外へと姿を変え、飛び去って行くその巨体を-------------

 その届かぬ頂きに手を伸ばす為に-------------

 彼女は懸命に走った。

 だが、如何に身体強化の魔法を使用した肉体でも、その巨体に追い付ける訳もなく、微かな希望は、その場から立ち去って行った。
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