【下地版】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった？〜

闇の息吹

関話 どうしてそこまで-------------

～要塞内、医療区画の一室～


　どうして、そこまでして-------------

　ある日、私、剣聖エレノア・ハートは信じられない光景を目の当たりにした。

　フレジスタ王国の王子一向を救出してから、数日の間、あの人は要塞へと王子達を避難させるべく、殿を務めた。

　その結果であろう。

　彼は戻るなり、全身、血だらけになって転移されて来た。

　すぐ様、あの同じ顔をした《シスターズ》と呼ばれる人形のゴーレムメイド達が慌ただしく、彼の治療に専念し、無事に命は取り留めた。

　この要塞にいる、ミハエルという少女から聞き出した内容によると、例の聖戦に関係する敵の襲撃と相対し、死に掛けたそうだ。

　それから、数日の間、あの人は治療ポッドという魔導具内で、治療を受け-------------私は要塞を駆け回り、避難して来た者達の治療に勤めていた。

　そんな時、私は再び、あの人にあった。

　最初、見た時は隣にいた聖女ルリも、フレジスタ王国の王子であるリオン殿も、信じられないような光景を目の当たりにしたのだ。

　何せ、あの人は要塞内の通路を壁を背にして、血を垂れ流しながら、虚な瞳で弱々しく歩んでいたからだ。

　通路の壁を赤く染め、幾つもの水滴が床へと落ち続けている。

　慌てて駆け寄ると、あの人は意識が朦朧としているのか。

　弱々しく受け答え、私の手を振り解いて、格納庫へと向かおうとして-------------倒れた。

　慌てて、起こそうとすると、あの人の傷口は開き、危険な状態である事は明らかだった。

　ルリが慌てて、通路の壁にある通信装置とやらで、あのゴーレムメイドを呼び出して、数分もしない内に、あの人が運ばれていく。

　どうして、あの人はあんなに傷付いても立ち上がれるのか。

　その時の私には分からなかった。

　だから、私は、それを知ろうとあの人が向かおうとしていた場所へと聖女ルリやリヒト王子と共に向かい-------------驚愕した。

「これは…………」

　開いた口が塞がらないとは、この事だろうか？

　格納庫と呼ばれるその一画に入るなり、私の目に飛び込んで来たのは、彼が変身したゴーレムとは異なる、巨大なゴーレムの姿だった。