【下地版】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜

水先 冬菜

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脅威

納得がいかない

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「…………あの…………あれで、よろしかったのですか?」

 移動要塞へと転移するなり、不安げに聖女が俺に問い掛けて来た。

「問題はない。

 ああいう奴らには、あれくらいで丁度良い…………。

 下手にこっちが手を差し伸べたら、いつまでも甘い汁をすすろうと画策するような外道な連中だ。

 同情するだけ無駄だぞ…………?」

 何せ、聖女様。

 平和とやらの為に、あんたを生贄にする奴らだ。

 情けなどいらん。

「そうなのですか?」

 いや、そんな悲しげに訊かれても-------------

 第一、協力するメリットが、こっちには何もない訳だし、問題は無いと思うぞ?

 あいつら、どうせ、あのエセ勇者とかを利用しようと考えるんだろうけど……………………逆に、羽目になるだろうからな…………。

 それを踏まえても、迷惑以外の何者でもない。

 何もしないなら、放っておくに限る。

「……………………」

 でも、聖女様は納得いっていないご様子。

「…………心配しなくても、奴らなら、何とかするだろう…………。

 そんな事よりも、まずはお前の治療が先だ」

 尚も言いたげな視線を向けて来る聖女に対して、うんざりしながらも答えた俺。

 シスターズ共は、あのポンコツ駄メイドの所為で使えねぇ…………だから、俺が連れて行くしかない。

 こうなるかもと、徹夜して、頭に要塞の見取り図を叩き込んで置いて良かったぜ。


------------------------------------------

~剣聖サイド~

 
 一方、湊に拒絶され、転移を許してしまったベリンキューム帝国では、湊達が消え去った場所を悲しげに見つめ、佇む剣聖の姿があった。

「やっぱり、彼は私達に協力してくれないみたいね」

 しばし、剣聖が眺めていると、背後からゆっくりとサキュバスのヘレスディアが声を掛けて来る。

 そして、剣聖の隣に立ち、ソッと剣聖である彼女の肩に手を添えた。

「でも、それは仕方のない事なのかもしれないわね」

 見るからに、残念そうに呟くヘレスディアの発言に耳を傾けながら、剣聖も同意するように、静かに頷いた。

 話は逸れるが、魔族との休戦の最中、剣聖とヘレスディアとで、とある情報交換が行われた。

 それはもちろん、彼-------------如月湊に関する情報だ。

 私はその時、ヘレスディアから伝えられた情報に、耳を疑った。

 彼を召喚したと思われるリズネーゼ王国は、彼を召喚した後、生産系のスキルだからと彼を魔物が多く現れる危険な森へと捨てたらしい。

 そして、私が彼と出会うきっかけになった、あのスタンピード事件。

 事もあろうに、彼の秘密に気付いたその国は、彼を連れ戻そうと捕縛部隊を秘密裏に送り込んだ。

 だが、返り討ちに遭い、彼に慈悲を請い、戻って来て貰うように嘆願した。

 当然、怒り心頭な彼は拒否。

 リズネーゼ王国を守護していた女神様も、その捕縛部隊をに協力して、神罰を落とすなど、彼を脅したみたいだが、逆に王国を滅ぼすと脅され、渋々、従ったそうだ。

 そして、王国へ帰還する途中、彼を欲する他の女神に隙を突かれた後、取り込まれた。

 その結果、リズネーゼ王国は女神の加護を失い、魔族によってなす術もなく、滅ぼされた。

 ヘレスディアは、戦いに敗れ、捕虜となった、そのリズネーゼ王国の連中から、何とか、彼の事を聞き出したのだ。

 だからこそ、ヘレスディアはこう思っているのだろう。

 異界の地から、自分の意思とは関係なく呼び出された彼が、このような不当な扱いを受けて来て、今更、この世界の私達に手を貸してくれる訳がないと-------------

 それは違う。

 なんて事は言えない。

 何故なら、私だって、自分達の都合で、仲間を生贄した。

 話を聞かず、一方的に何度も彼に刃を向けた。

 なのに、謝りもせず、彼の力を頼ろうとした。

 もし私が彼の立場だったら、このような行いをした連中を許しただろうか?

 私だったら、許せない。

 許せる筈がない。

 だから、私は-------------

「た、大変です!!」

 物思いに耽っていると、城内から一人の騎士が慌てた様子で、私達に駆け寄って来た。

 一体、何事かと、周りの者達も、その騎士の方へと視線が集中した。

「ミズーリ王国が滅ぼされました!!!」

 その騎士の叫びの元、報告を聞き、皆、焦りにも似た焦燥感が顔に滲み出ている。

 無理もない。

 このまま、何も対処出来ず、聖戦を放っておけば、いずれこの国も、その厄災に見舞われ、滅び去る。

 そう、滅びはまだ始まったばかりだ。

 この報告の後、世界は更なる災厄に呑まれて行く。

 
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