【下地版】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜

水先 冬菜

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聖剣の秘密

閑話 立ちはだかる聖女

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~ベリンキューム帝国帝都~

 
「それは本当なのですか?」

 ベリンキューム帝国帝都の王城-------------

 その一室に、皇帝ベルクリフの名の元に、剣聖は呼び出されていた。

 互いに、向かい側の高価なソファーに腰掛け、ある話題に付いて、話し合いが持たれていた。

 その話題とは、当然ながら、湊に関する報告だった。

 剣聖の祖国であるハート皇国に、あの男が現れ、女神の一柱を滅したらしい。

 そして、同行していた女神とフレジスタ王国の精鋭騎士達とも、戦闘をしたそうだが、何故か、その女神達を見逃し-------------あまつさえ、治療まで行ったそうだ。

 その情報は、ハート皇国の隠密部隊が、すぐ様、ベリンキューム帝国におられた、剣聖の父である国王アレクサンドリア・ハートへと伝えられ-------------

 それを知った父、アレクサンドリアが、ベルクリフ様へと、情報を提供。

 そして、今に至る。

「アレクサンドリア殿は、事態究明の為、急ぎハート皇国へと戻られるそうだ。

 剣聖である君には、その護衛を頼みたい。

 そして、もし、かの者と遭遇した場合の交渉の方も…………」

「……………………」

 皇帝のその申し出に、簡単に頷く事の出来ない剣聖。

 あの日、湊に敗北を期してから、世界は急激な変化を迎えていた。

 勇者の心神喪失-------------

 聖女ルリの死-------------

 魔族との休戦交渉、及び、同盟の締結-------------

 魔族共同で行われる各国家間による、聖戦への対抗策の協議-------------

 などの、そんな急過ぎる事案が、度重なって起きていた。

 それと共に、世界が滅びへと向かっている事も含めて-------------

「お主の気持ちは、わしにも痛い程、分かっておる。

 しかし、世界の現状を鑑みるに、我が国で、は、もうお主しかおらんのだ」

 重苦しい空気の中、剣聖を諭す皇帝ベルクリフ。

 確かに、皇帝の言う通りであった。

 現状、人類の最高戦力であった、勇者パーティーで、まともに動けられるのは、剣聖である彼女『エレノア・ハート』一人であった。

 他の勇者メンバーは今現在も、先日の戦闘の傷を癒すべく療養中。

 その上、先日の戦闘の負傷により、二人とも戦線に復帰するのは、絶望的だとの診断を受けていた。

 それにより、事実上、勇者パーティーは解散。

 今は帝国の上層部の力によって、情報は完璧に隠蔽されているが、そう長く持つ筈がない。

 いつか、必ず綻び、その事実が聖戦で困窮する人々をより、不安にさせてしまうだろう。

 そうなれば、世界中が混乱し、多くの犯罪や暴動などが起きてしまう可能性が高い。

「……………………」

 そんな事は剣聖エレノアも分かっていた。

 分かってはいるが、やはり首を縦に振る事を躊躇ってしまう。

 勇者パーティーは、人類の敵である魔王を倒すべく結成された、勇者を筆頭とする人類の希望だ。

 だから、世界の為、この世界で暮らす人々の為、世界を救う使命を帯びている。

 だから、剣聖である彼女も、その為に行動しないといけない。

 そんな事は頭では分かっている。

 分かっているのだが、世界に絶望し、光を無くした勇者の姿を思い浮かべると-------------

 悔しさのあまり、下唇を噛み締め、衣服の袖を強く握る剣聖。

 そんな剣聖の口元から血が流れ落ちた時だった。

「っ!?

 何だ!?」

 城を許す巨大な爆発音-------------

 慌てて、皇帝ベルクリフが窓の外へと駆け寄ると、城と城下町を遮る城門の一部が煙を上げて倒壊していた。

「すぐに向かいます!」

 それに追随して、外の様子を一認した剣聖は立て掛けてあった剣を取り、城の中を駆けて行った。

 そして、数分後-------------

「っ!! そんな…………」

 倒壊した門の前へと、辿り着いた剣聖が目にしたのは、門を破壊したであろう侵入者と戦いを繰り広げる騎士達の姿-------------否、正確に言えば、その騎士達に刃を向ける一人の少女に、釘付けになっていた。

「くっ!!」

「うわあああああ!!!」

 今にも、斬り掛かろうとした少女と騎士の間に入って、受け止める剣聖は叫んだ。

「何をしているのよ!?

 ルリ!!!」

 そう今、騎士に斬り掛かろうとしたのは、剣聖エレノアの幼なじみにして、先日、生贄となり、死亡した筈の聖女ルリだった。

「? 

 ルリとは、私の事でしょうか?」

 頭に疑問符でも、浮かべていそうな表情で、聖女ルリが剣聖の剣を弾き、後方へと下がる。

「っ!?

 その剣は!?」

 慌てて体勢を立て直した時、剣聖の顔が驚愕に染まった。

 構えを取り、対峙する聖女が、右腕に装着するその剣は、あの湊が最も信頼し、愛用する主要武装-------------

 《シグマ・ブレード》と全く同じものだった。
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