【下地版】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜

水先 冬菜

文字の大きさ
上 下
92 / 163
水の遺跡

閑話 魔族来訪

しおりを挟む
~王城サイド~

 ベリンキューム帝国の王城-------------

 その玉座の間にて、皇帝ベリクリフは多くの騎士の護衛の元、四天王ヘレスディアを向かい入れていた。

「こちらの無理な申し出をお受け頂きありがとうございます。

 魔王軍四天王が一人、ヘレスディアと申します」

 室内へと入るなり、にこやかな笑顔を浮かべ、礼儀正しい挨拶をするヘレスディア。

 ベルクリフの周りにいる騎士達は警戒を緩める事なく、いつでも動けるよう、剣の柄に手を掛けていた。

 一瞬でも、気を抜く事を許されない。

 文字通り、生か、死か-------------その二択を迫られるような独特な緊張感が周りを支配していく。

「お初にお目に掛かる。

 我は現ベリンキューム帝国皇帝、ベルクリフ・ベリンキュームと申す。

 して、かの名高いヘレスディア殿が私のようなものに何用かな…………?」

 何とか、受け答えするベリクリフだったが、内心では戦々恐々としていた。

 一つでも、選択肢を誤れば、この国は数日もしない内に滅びる。

 それを直で肌に感じられる程、今、目の前にいる魔族は強大で、恐ろしい存在であった。

 かつて、とある小国で、その美貌で男という男を惑わし、数ヶ月もの間、人間同士を殺し合わせ続けた狡猾にして、残忍なサキュバス。

 人間の世界において、ヘレスディアはそういう認識であった。

 そんなサキュバスが、自分に面会を求めて来た。
 
 何か、裏がある。

 そう踏んでいたのだが-------------

「今回は私が魔王軍を代表して、休戦の申し出をしに参りました」

 ヘレスディアの発言に、室内にいた全員が驚愕する。

 あの魔王軍が人類に対して、休戦を申し入れて来た。

 人類の長い歴史において、そんな話、今までに無かった事-------------

 すぐに何かの策略だと、皆、顔を引き締めたのだが…………。

【聖戦】

 不意に、ヘレスディアがそう呟いた。

「こちらでは、もう始まっておられるんですよね?」

「…………何が言いたい…………?」

 彼女の真意を掴め切れないベルクリフは訝しげな視線を送りながらも、静かに問い掛ける。

 すると、彼女は先程までと打って変わって、真剣な眼差しで語り掛けて来る。

「魔王様が殺されました」

「何だとっ!?」

 驚きのあまり王座から立ち上がるベルクリフ。

「それも聖戦のものと思しき、たった一体のゴーレムによってです。

 私の配下達に調べさせた限りでは、魔王様は応戦するも、魔法や剣が全く通用せず、そのまま…………」

「……………………」

 にわかには信じられない話だった。

 だが、その魔法や剣が通じないというのは、我が国の諜報員が、レミリア共和国の数少ない生存者からの証言と合致する。

 しかし、確証がない。

 本当に魔王は殺されたのか?

 この話は本当に信用しても良いものなのか?

 様々な葛藤がベルクリフの頭の中を駆け巡る。

「仕方がありませんね…………」

 そんなベルクリフの葛藤を読んでか、ヘレスディアが右腕に嵌めていた宝石状の腕輪に手をかざした。

 すると、ヘレスディアの背後に、映画の鑑賞スクリーンのようなものが現れ、とある映像が流れ始めた。

「これは…………?」

「現在、魔族領で行われている戦闘の映像です。

 記録水晶という名の魔導具はご存知ですよね?」

 それくらいなら、ベルクリフも嫌が応にも知っている。

 記録水晶-------------

 現在進行形で行われている任意の場所の映像を見せる古代の魔導具。

 所有者が一度、立ち寄った場所のみの映像しか映し出せない限定的な力ではあるが、---------------その映像は、古代の難解な術式で構築されている故、現代の技術では、映像を偽造する事が不可能とされている。

 そのため、現代では、世界の真実を映し出す魔導具として、伝説にもなっている貴重な魔導具だ。


 現在、その記録水晶が映し出す映像には、魔族と思しき兵士達が、ゴーレムのような何かと戦う姿が映し出されている。

 魔法も効かず、剣も跳ね返されても尚、戦い続ける魔族達の姿が-------------

「これが…………これが、聖戦の災厄…………」

「こんな奴らが攻めて来るのか…………?」

「こんな常識外れな連中とどうやって戦えっていうんだ?」

 なす術もなく、虐殺されて行く魔族達-------------

 それを背に悲痛な面持ちを浮かべるヘレスディア-------------

 いつしか、皇帝だけではない。

 皇帝の護衛をしている周りの騎士達すら食い入るように、映像から目が離せなくなっていた。

 奮闘虚しく、最後に生き残っていた魔族の兵士が敵に取り囲まれ、無数のゴーレムにより惨殺され-------------映像が途切れた。

「ご覧頂いたように、これが現在、が置かれている状況です。

 私も、かの災厄と遭遇致しましたが、まるで歯が立たず、このような結果になりました」

 突如、ヘレスディアが上に羽織っていたコートのようなものを脱ぎ落とすと、皆の視線が彼女の身体へと注がれた。

 決して、彼女の魅力的なプロポーションに目を奪われた訳ではない。

 むしろその逆、皆の視線は彼女の身体のある一点に集中していた。

 肩の辺りからお腹の辺りまで伸びる痛々しいその大きな傷跡に皆、恐怖する。
 
「四天王である私でさえも、全く歯が立ちませんでした。

 この傷が何よりの証明とです。

 今は人類だの、魔族だのと争っている場合ではないのです。

 一刻も早く互いに手を取り合い、聖戦によってもたらされる災厄に対抗しなければなりません。

 それが出来なければ、災厄は瞬く間に世界全土を包み込み、あらゆる生命が死を迎える事でしょう」

 この場にいる誰もが、彼女の言葉を否定しない。

 否、否定出来る訳がない。

 実際に、大国の一つが滅ぼされて、まだ日が浅い。

 その上、世界の真実を映す、あの《記録水晶》の映像。

 そして、四天王である彼女のあの傷跡を見れば、かなりの信憑性がある。

「もしベルクリフ様が、我々、魔王軍の休戦の申し出を受けて下さるなら、こちらが知り得る災厄の情報を全て提供する事をお約束致します」

「……………………」

 ベルクリフは悩みに悩んだ末、彼女の申し出を受ける事にした。

 これをきっかけに、聖戦に関する研究は飛躍的に進み始め、人々はを得て行く事になる。

 それが破滅への道だとしても-------------

 
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...