2 / 4
プロローグ
何で、俺一人だけ……?
しおりを挟む
「ちょっと、ちょっと!?
何でそんな事になっているんですか!?
たった一人で逃げ切れって言うんですか!?」
逃走者が俺一人だけと聞いて、思わず女性の肩を掴んで詰め寄る。
「そ、そう言われましても…………。
私は雪葉様を連れて来るように言われただけで、詳しい事までは…………」
「だったら、その人の所に今すぐ連れて行け!!」
「は、はいぃいいいい~!!!」
------------------------------------------
「お、お連れしました…………」
涙目になりながら、応接室らしき場所へと俺を連れて来た彼女。
その室内には、如何にも厳格そうな、顔の厳つい初老の男性がこちらを睨み付けていた。
「君が、今大会の参加者。
溝呂木雪葉くんだね。
私は《異世界鬼ごっこ》の総運営を任されている鍵咲というものだ」
彼は、手で彼女に退室するように指示を出すと、俺の方に向き直って話掛けて来た。
「君も、色々と聞きたい事があるだろうが…………。
私としても、非常に困惑していてね…………。
全く、こっちの都合も考えて欲しいものだよ…………」
目頭を押さえて話す彼の背中には、明らかな疲労が見て取れる。
「君には、大変申し訳ないんだが…………。
今大会では、たった一人での参加をお願いしたい」
「…………理由を聞いても…………?」
その答えを待っていたかのように、彼は机の引き出しから、三通の手紙を取り出して、俺へと手渡して来る。
これを読めって事か……?
その内の一つを取り、中を広げて、目を通していく。
「……………………何ですか、これ……?」
そして、ある程度、文面を読み終えて、彼の方へ視線を戻すと…………。
「その文面の通りだよ…………」
彼はサッと視線を逸らした。
他の手紙も中身を確認してみる。
どの手紙にも、言葉は違えど、同じような内容が書かれていた。
その内容とは、簡単に言えば、ラブレターだ。
俺への想いやら、結婚を前提としたお付き合いをしてください、などが書かれてあった。
でも、それが何故、俺が一人で参加する事に繋がるのか…………?
「君は《三代英雄》を知っているかい?」
何だ……? 急に…………。
「ええ、知っていますよ。
確か、剣・魔法・弓の才能に秀でた三姉妹。
かつて、世界を滅亡から救ったこの国の姫様達でしたよね……?
何で、そんな人達の話が出て------------」
待てよ。
もしかして…………!?
「そのまさかだよ…………」
俺の考えを察してか、彼は申し訳なさそうに頭を抱えた。
「実は、その姫様達は君の大ファンらしくて…………。
何でも、昨年、誰が君のお嫁さんになるかと日夜、争ったらしく…………。
困った国王が、ある条件を彼女達に出したそうなんだよ」
「……………………」
すっげえー、嫌な予感がする。
「その条件というのがね…………。
今大会で、『君を捕まえた者を妃とする』そうだ。
本人の了承もなしにね…………」
呆れたように、ため息を吐く彼。
俺も俺で、何とも言えない表情になる。
「ちなみに、断る事は……?」
「残念だけど、それは無理だね…………。
姫様達も乗り気みたいだし…………。
国王陛下も、前々から君に目を掛けていたみたいだ。
大会の規定上、君の素性を知らないとはいえ、歴代史上初ともいえる、四連続逃走の偉業を成した君の事が気になって、仕方ないんだろう。
現に、私も君には色々と期待しているしね」
「いや、そんな事言われても…………」
それ程、特別な事はしていないけどなぁ~…………。
無我夢中に逃げて…………。
襲われたら、返り討ちにして…………。
うん。
別段、特に、何もやってはいないな…………。
「まあ、そんな訳だから、頑張ってくれ…………。
もちろん、私達の方でも、君を色々とフォローしていくつもりだから…………」
「……………………」
何か、話を聞いてドッと疲れが込み上げて来た。
ほんと、どうしよう……?
何でそんな事になっているんですか!?
たった一人で逃げ切れって言うんですか!?」
逃走者が俺一人だけと聞いて、思わず女性の肩を掴んで詰め寄る。
「そ、そう言われましても…………。
私は雪葉様を連れて来るように言われただけで、詳しい事までは…………」
「だったら、その人の所に今すぐ連れて行け!!」
「は、はいぃいいいい~!!!」
------------------------------------------
「お、お連れしました…………」
涙目になりながら、応接室らしき場所へと俺を連れて来た彼女。
その室内には、如何にも厳格そうな、顔の厳つい初老の男性がこちらを睨み付けていた。
「君が、今大会の参加者。
溝呂木雪葉くんだね。
私は《異世界鬼ごっこ》の総運営を任されている鍵咲というものだ」
彼は、手で彼女に退室するように指示を出すと、俺の方に向き直って話掛けて来た。
「君も、色々と聞きたい事があるだろうが…………。
私としても、非常に困惑していてね…………。
全く、こっちの都合も考えて欲しいものだよ…………」
目頭を押さえて話す彼の背中には、明らかな疲労が見て取れる。
「君には、大変申し訳ないんだが…………。
今大会では、たった一人での参加をお願いしたい」
「…………理由を聞いても…………?」
その答えを待っていたかのように、彼は机の引き出しから、三通の手紙を取り出して、俺へと手渡して来る。
これを読めって事か……?
その内の一つを取り、中を広げて、目を通していく。
「……………………何ですか、これ……?」
そして、ある程度、文面を読み終えて、彼の方へ視線を戻すと…………。
「その文面の通りだよ…………」
彼はサッと視線を逸らした。
他の手紙も中身を確認してみる。
どの手紙にも、言葉は違えど、同じような内容が書かれていた。
その内容とは、簡単に言えば、ラブレターだ。
俺への想いやら、結婚を前提としたお付き合いをしてください、などが書かれてあった。
でも、それが何故、俺が一人で参加する事に繋がるのか…………?
「君は《三代英雄》を知っているかい?」
何だ……? 急に…………。
「ええ、知っていますよ。
確か、剣・魔法・弓の才能に秀でた三姉妹。
かつて、世界を滅亡から救ったこの国の姫様達でしたよね……?
何で、そんな人達の話が出て------------」
待てよ。
もしかして…………!?
「そのまさかだよ…………」
俺の考えを察してか、彼は申し訳なさそうに頭を抱えた。
「実は、その姫様達は君の大ファンらしくて…………。
何でも、昨年、誰が君のお嫁さんになるかと日夜、争ったらしく…………。
困った国王が、ある条件を彼女達に出したそうなんだよ」
「……………………」
すっげえー、嫌な予感がする。
「その条件というのがね…………。
今大会で、『君を捕まえた者を妃とする』そうだ。
本人の了承もなしにね…………」
呆れたように、ため息を吐く彼。
俺も俺で、何とも言えない表情になる。
「ちなみに、断る事は……?」
「残念だけど、それは無理だね…………。
姫様達も乗り気みたいだし…………。
国王陛下も、前々から君に目を掛けていたみたいだ。
大会の規定上、君の素性を知らないとはいえ、歴代史上初ともいえる、四連続逃走の偉業を成した君の事が気になって、仕方ないんだろう。
現に、私も君には色々と期待しているしね」
「いや、そんな事言われても…………」
それ程、特別な事はしていないけどなぁ~…………。
無我夢中に逃げて…………。
襲われたら、返り討ちにして…………。
うん。
別段、特に、何もやってはいないな…………。
「まあ、そんな訳だから、頑張ってくれ…………。
もちろん、私達の方でも、君を色々とフォローしていくつもりだから…………」
「……………………」
何か、話を聞いてドッと疲れが込み上げて来た。
ほんと、どうしよう……?
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる