異世界、鬼ごっこ 〜捕まったら即結婚!? 史上最強の逃走者のメカチート無双〜

水先 冬菜

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プロローグ

何で、俺一人だけ……?

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「ちょっと、ちょっと!?

 何でそんな事になっているんですか!?


 たった一人で逃げ切れって言うんですか!?」


 逃走者が俺一人だけと聞いて、思わず女性の肩を掴んで詰め寄る。


「そ、そう言われましても…………。

 私は雪葉様を連れて来るように言われただけで、詳しい事までは…………」


「だったら、その人の所に今すぐ連れて行け!!」


「は、はいぃいいいい~!!!」


------------------------------------------


「お、お連れしました…………」


 涙目になりながら、応接室らしき場所へと俺を連れて来た彼女。


 その室内には、如何にも厳格そうな、顔の厳つい初老の男性がこちらを睨み付けていた。

「君が、今大会の参加者。

 溝呂木雪葉くんだね。

 私は《異世界鬼ごっこ》の総運営を任されている鍵咲かぎざきというものだ」



 彼は、手で彼女に退室するように指示を出すと、俺の方に向き直って話掛けて来た。



「君も、色々と聞きたい事があるだろうが…………。

 私としても、非常に困惑していてね…………。

 全く、こっちの都合も考えて欲しいものだよ…………」



 目頭を押さえて話す彼の背中には、明らかな疲労が見て取れる。


「君には、大変申し訳ないんだが…………。

 今大会では、たった一人での参加をお願いしたい」


「…………理由を聞いても…………?」


 その答えを待っていたかのように、彼は机の引き出しから、三通の手紙を取り出して、俺へと手渡して来る。


 これを読めって事か……?


 その内の一つを取り、中を広げて、目を通していく。


「……………………何ですか、これ……?」


 そして、ある程度、文面を読み終えて、彼の方へ視線を戻すと…………。


「その文面の通りだよ…………」


 彼はサッと視線を逸らした。


 他の手紙も中身を確認してみる。


 どの手紙にも、言葉は違えど、同じような内容が書かれていた。


 その内容とは、簡単に言えば、ラブレターだ。


 俺への想いやら、結婚を前提としたお付き合いをしてください、などが書かれてあった。

 
 でも、それが何故、俺が一人で参加する事に繋がるのか…………?


「君は《三代英雄》を知っているかい?」


 何だ……? 急に…………。


「ええ、知っていますよ。

 確か、剣・魔法・弓の才能に秀でた三姉妹。

 かつて、世界を滅亡から救ったこの国の姫様達でしたよね……?

 何で、そんな人達の話が出て------------」


 待てよ。


 もしかして…………!?


「そのまさかだよ…………」


 俺の考えを察してか、彼は申し訳なさそうに頭を抱えた。


「実は、その姫様達は君の大ファンらしくて…………。

 何でも、昨年、誰が君のお嫁さんになるかと日夜、争ったらしく…………。

 困った国王が、ある条件を彼女達に出したそうなんだよ」


「……………………」


 すっげえー、嫌な予感がする。


「その条件というのがね…………。

 今大会で、『君を捕まえた者を妃とする』そうだ。

 本人の了承もなしにね…………」


 呆れたように、ため息を吐く彼。

 俺も俺で、何とも言えない表情になる。


「ちなみに、断る事は……?」


「残念だけど、それは無理だね…………。

 姫様達も乗り気みたいだし…………。

 国王陛下も、前々から君に目を掛けていたみたいだ。

 大会の規定上、君の素性を知らないとはいえ、歴代史上初ともいえる、四連続逃走の偉業を成した君の事が気になって、仕方ないんだろう。

 現に、私も君には色々と期待しているしね」


「いや、そんな事言われても…………」


 それ程、特別な事はしていないけどなぁ~…………。


 無我夢中に逃げて…………。


 襲われたら、返り討ちにして…………。


 うん。


 別段、特に、何もやってはいないな…………。


「まあ、そんな訳だから、頑張ってくれ…………。

 もちろん、私達の方でも、君を色々とフォローしていくつもりだから…………」


「……………………」


 何か、話を聞いてドッと疲れが込み上げて来た。


 ほんと、どうしよう……?
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