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プロローグ

異世界鬼ごっこ、とは?

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 《異世界鬼ごっこ》


 それは三つの陣営に分かれた《鬼》が、町に紛れた数十人の《逃走者》を捕まえるシンプルなルール。


 ただ、一つ、普通の鬼ごっこと違うのは、《異世界召喚》と呼ばれる《鬼側の特殊な特権》がある事。


 逃走者を一人指定して、現実の世界を模した別の空間へと召喚し、魔法あり、殺し合いありのバトルへと強制参加させる。


 もし《鬼側》が勝利すれば、その逃走者を捕まえた事になり、他の逃走者の情報を得られ…………。


 《逃走者側》が勝利すれば、莫大な賞金と一週間の休息期間が設けられ、鬼側は手出しが出来なくなる。


 まあ、ざっとルールをまとめるとこんな感じだ。



 そんな、何でもありな鬼ごっこの常連にして、過去、四度逃げ切った実績を持つ俺。


 溝呂木雪葉みそろぎゆきはは、今年も運営から参加状が届いて、また出場する羽目になったのだが…………。


 その会場に入って早々、可笑しな事に気付いた。


「……………………」


 いつもなら、会場内には、《逃走者側》の参加者が数百名程いて、喧騒に包まれている筈なのだが…………。


 何故か、会場内には、俺だけしかおらず、不気味な程、静かだったのだ。


「日付…………間違えたか……?」


 そう思って、手元の案内状を再度確認する。

 
 しかし、日付も、時間も間違えてはいない。


 不思議そうに首を傾げていると…………。


「お待たせ致しました。

 今、大会に参加なされる雪葉様でおられますね……?」


 奥の扉から、メガネをかけたスーツ姿の女性が現れた。


「はい。

 そうですが…………。

 もしかして、俺、会場の場所を間違えましたか……?」


 ちょっと、不安になって彼女に聞いてみた。


「いいえ、間違ってはおりませんよ」


「そうなのですか……?

 なら、他の参加者達はどちらにいますか?

 出来れば、その人達と情報を共有したので…………」


 そう彼女に尋ねた時、彼女は困ったように苦笑する。


「それは…………難しいですね…………」


「何でですか……?」


「実は…………今回の逃走者はなんです…………」


「……………………は………………?」


 言っている意味が分からなくて、思わず口を開けて固まる俺。


「すいません。

 もう一度、言って貰えませんか……?」


 いやいや、きっと気の所為だ。

 俺の聞き間違えだ。


 そう願う俺の想いを裏切るように、彼女は再び口を開いた。


「ですから、今回執り行われる《異世界鬼ごっこ》の逃走者はあなた一人になるんですよ」

 




 
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