スキル【雪女】〜学園最底辺な包帯男の【聖女】伝説〜

水先 冬菜

文字の大きさ
上 下
11 / 16
01-孤高の白雪編

違和感

しおりを挟む
「いたぞ!!!」

「そっちに向かった!!!」

「囲め!!!」


 これは、どういう事だ…………?


「「「「「……………………」」」」」


 次の異界戦争が始まって早々、何で、こうもまた、シークレット王国の騎士と接敵する事になる?

 しかも、今度は、多くの仲間を引き連れて-------------


「……………………」


 シークレット王国の騎士達は、俺を取り囲みながら、徐々に距離を詰めて来る。

 俺は、それを感じながらも、正直、億劫おっくうになるくらい騎士の連中に腹を立てていた。

 もう殺しても良いかな…………?

 なんて、物騒な事を思ってしまうくらいには---------


「……………………」


「かかれ!!!!!!」

「「「やああああああああっ!!!!!!」」」


 うるさいわ!!!!


「「「ぐわああああああああーーー!!!!!」」」


 とりあえず、氷の礫を俺の周囲全体に生成して、解き放ちつつ、何時もの如く、端末の画面に表示された『棄権』をタップしようとして、その手が止まった。


「……………………」


 ネズミが、まだ、いるようだ。

 俺は、右後方にある岩塊へと視線を向けると、その岩陰からニ人の少女が顔を出した。

 その顔が視界に映るなり、俺は思わず、溢れ出しそうな殺気を必死に抑え込む。


「はぁ~い♪ お久しぶりぃ~♪」


 一人は先日、お世話になったメリア・カーナ。

 もう一人は、この世で、俺が最も顔を見たくない奴だった。


「あなたが、《白雪》---------?」

「……………………」

「メリアの言う通り、本当に、無口なのね? まぁ、そんな些細な事はどうでも良いの…………」


 少女はそういうなり、一気に距離を詰め、あるものを奪おうとして来る。

 狙いが何なのか、予想していた俺は、それを即座に懐にしまいながら、蹴り技を繰り出し、少女との距離を取る。


「ふぅ~ん…………私の狙いを読んだのね?」


 いやいや、あからさま過ぎるよね?

 どう考えったって、が、あんたの目的だよね?

 少女が狙っていたのは、俺の端末-------------

 どうやら、こいつら、俺の端末を奪って、棄権させないつもりのようだ。

 その証拠に-------------


「貰い!!!! って、何よこれ!!?」


 背後から、俺の懐に手を突っ込んで、端末を奪った(氷で作った偽物)を見て、声を上げるメリア。

 まだまだ、甘いよお主-------------

 そんで、その隙に、本物の端末で、棄権をタップする俺。


「……………………」


 しかし、何故か、棄権の表示をタップしても、いつまで経っても、異世界から転送される気配はない。

 可笑しいと思い、何度も、何度も、棄権の表示をタップする。

 しかし、何も起きない。


「どうやら、間に合ったようね」


 どういう事だ?

 そんな俺の心情を察してか、聞きたくめない事をペラペラと少女は語り出した。


「悪いけど、今回、運営の方に依頼して、あんたの端末の機能の一部を停止させて貰ったわ。何度、タップしても無駄よ」


 は?

 端末の機能を停止だと?

 つまり、俺はこのゲーム中、もう棄権するのは無理って事か?

 つか、運営の奴ら、何してくれてんだよ!?


「あんたが悪いのよ? 毎度毎度、面倒になったら、棄権ばかりして……………………探すこっちの苦労も考えろってのよ…………」


 俺が目をスッと細めて、憎々しげに、少女を睨むと、少女も憎々しげに睨み付けながら、悪態を吐いて来た。

 そっちの事情なんか知らんわ!!!

 つか、汚ねぇぞ!!??

 というか、運営も運営だ!!!

 何で、こんな奴の言う通りに動いてんだよ!?

 寧ろ、悪態吐きたいのは俺の方だ!!!!


「まぁ、時間は掛かったけど、これで、あんたのいつもの手は封じた。メリア。さっさと終わらすよ」

「はぁ~い♪♪」

「ちっ…………」


 二人は構えると、一気に距離を詰めて、腰の剣を引き抜き、振り下ろして来た。

 反射的に、それを氷の槍を作って受け止めるなり、苛立たしげに舌打ちをしながら、二人の剣を弾いて、氷槍を変幻自在に振るう。

 互いに剣と槍が交錯し、ぶつかり合い、受け流し合い、攻防一線の戦いが繰り広げられる。

 側から見れば、両者の戦いは拮抗しているように見えるだろう。

 だが、、押され始めているのは俺の方だった。


「くっ…………!!!」


 不味い…………《雪女》のリミットが近い。

 手がかじかんで-------------


「貰った!!!」


 本の一瞬、手元が緩んだ事を見逃さずミリアの剣が、俺の槍を弾き飛ばした。

 そして、武器を持たない無防備な俺に、再び、その刃が振り下ろされ-------------


「……………………え?」


 -------------無かった。

 ミリアの身体は、上下左右にずれ落ち、鈍い音を立てて、転がり……………………光の粒子になって、消滅した。

 後に残ったのは、いつの間にか、一振りのを手にしている俺がいるだけで…………。




 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Red Assassin(完結)

まさきち
ファンタジー
自分の目的の為、アサシンとなった主人公。 活動を進めていく中で、少しずつ真実に近付いていく。 村に伝わる秘密の力を使い時を遡り、最後に辿り着く答えとは... ごく普通の剣と魔法の物語。 平日:毎日18:30公開。 日曜日:10:30、18:30の1日2話公開。 ※12/27の日曜日のみ18:30の1話だけ公開です。 年末年始 12/30~1/3:10:30、18:30の1日2話公開。 ※2/11 18:30完結しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

クズの異世界転生

中二病
ファンタジー
現代日本で高校生だった主人公は夜に散歩していたら赤信号を突っ切ってきたトラックに轢かれて死んでしまい気がついたら赤子になっていた。 トラックに轢かれ死んでしまって転生した直後主人公に天使が念話で話しかけてきた。 その天使はもう少しで主人公を助けてくれる人が来るという、その話を天使が話した少し後、司祭とシスターだろう男女が主人公の前まで来た。 ……しかしその司祭は私欲のために、主人公を助けずに見捨てた……。 そんな状況を見た神は強硬な手段で主人公を助けることにした。 しかし主人公を助けた貴族家やその貴族家が帰属する国の貴族家や王家の内部には敵国と内通する者たちがたくさんいた!しかも問題はそれだけではなく十数年後には魔王が復活してしまうらしい……。 主人公は神から力を貰ったがだからといって簡単に内通者や魔王そしてその他の問題を解決をできなかった……。 なぜなら主人公が転生した世界には主人公と同等に強い人間や主人公より強い人間がたくさんいたからだ……。 そんな世界で主人公は大切な人たちや護るべき人たちを護るために奮闘する。 カクヨム様と小説家になろう様の方でも同じ作品を書いています。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...