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序章、第一話
スズメ!
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◆
ヨルは走っていた。自警団駐屯地に繋がる道を一心不乱に走っていた。ユウギリから報告を受け、クーデターが明日の朝になったこと、そしてスズメが一人でそれを自警団に伝えに行ったことを聞いて、家を飛び出したのだ。
「スズメ!」
ヨルは誰もいない暗闇に向かって叫ぶ。応える者は誰もいない。そんなに時間は経ってはいないはずなのにどこまで行ってもスズメは見つからなかった。嫌な想像ばかりが脳裏を過ぎる。もうトコヤミ達に捕まっているんじゃないだろうか。怪我をしているんじゃないか。いや、最悪の場合既に殺されている可能性だってある。そこまで考えてヨルは大きく首を左右に振った。縁起でもない。今はスズメを探し出すことに集中しよう。
ヨルは更に走る速度を上げる。息が上がるが関係ない。妹のトコヤミに罪を犯させないため。スズメの命を守るため。ヨルは必死に両足を動かした。
そうして街の中央部に入る坂道を駆け上った時だった。
『ヨル! 聞こえるか!』
「団長!?」
『あぁよかった、繋がって。クーデターの件、君のところにも連絡がいったんだね』
「・・・・・・っ! ということはスズメはそちらに着いているんですね!? 今も一緒にいるんですか?」
ヨルは頭に響く団長の声に期待をかける。しかしそれは一瞬で打ち砕かれてしまった。
『いや、もうここにはいないよ。危ないから施設に戻るよう促した』
「なっ!? 一人で行かせたんですか!?」
『人員が足りないんだ。準備が出来次第、全員出立するからここも無人になる。施設に行かせるのが得策だ』
「それにしたって一人くらい護衛をつけてもいいでしょう! あいつは命を狙われているんですよ!?」
スズメを一人で深夜の街に放り出したという団長にヨルは噛み付く。しかし団長に投げ掛ける言葉はそのまま自分への後悔でもあった。スズメを一人にしたのはヨルも同じなのだ。誰を責めることも出来ない。分かっているのに湧き上がる感情を抑えられない。団長はヨルが何を考えているか分かっているようだった。一言静かに『すまない』と言うと、次にヨルを励ました。
『大丈夫。彼はここまで一人でやって来たんだよ。能力もあるし判断力もある。施設はここからそう遠くないし、彼には私の電波を繋げているからね。危ない時は叫ぶように言ってある』
しかしそんな言葉は今のヨルには届かない。
「スズメが大人しく従って助けを呼べる奴だったら苦労しないんです! とにかく私はスズメを探して施設に送り届けてから行きますからっ!」
ヨルは強引に会話を終わらせると静まり返った繁華街を走り抜けた。
言い知れない焦燥感がヨルを急かす。
とうとう施設のある教会の前に辿り着くが、窓からは一つの灯りも見えない。誰かが起きている様子もない。ヨルはそのまま教会の前を素通りして再び自警団までの道を駆けた。
そしてそこで衝撃的な光景と出会う。
沢山の私兵団員に囲まれるスズメ。その前にはトコヤミがいて今まさに片手を上げ合図をしようとしている。トコヤミの隣には『弓使い』の称号を持った私兵が、光る矢をスズメに向けて弓を構えていた。
危ない。
考えるまでもなく身体が動いた。続いて身体を貫く衝撃。
ヨルは自分より小さな身体を守るようにすっぽりと抱え込んでそのまま地面に倒れ込んだ。
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ヨルは走っていた。自警団駐屯地に繋がる道を一心不乱に走っていた。ユウギリから報告を受け、クーデターが明日の朝になったこと、そしてスズメが一人でそれを自警団に伝えに行ったことを聞いて、家を飛び出したのだ。
「スズメ!」
ヨルは誰もいない暗闇に向かって叫ぶ。応える者は誰もいない。そんなに時間は経ってはいないはずなのにどこまで行ってもスズメは見つからなかった。嫌な想像ばかりが脳裏を過ぎる。もうトコヤミ達に捕まっているんじゃないだろうか。怪我をしているんじゃないか。いや、最悪の場合既に殺されている可能性だってある。そこまで考えてヨルは大きく首を左右に振った。縁起でもない。今はスズメを探し出すことに集中しよう。
ヨルは更に走る速度を上げる。息が上がるが関係ない。妹のトコヤミに罪を犯させないため。スズメの命を守るため。ヨルは必死に両足を動かした。
そうして街の中央部に入る坂道を駆け上った時だった。
『ヨル! 聞こえるか!』
「団長!?」
『あぁよかった、繋がって。クーデターの件、君のところにも連絡がいったんだね』
「・・・・・・っ! ということはスズメはそちらに着いているんですね!? 今も一緒にいるんですか?」
ヨルは頭に響く団長の声に期待をかける。しかしそれは一瞬で打ち砕かれてしまった。
『いや、もうここにはいないよ。危ないから施設に戻るよう促した』
「なっ!? 一人で行かせたんですか!?」
『人員が足りないんだ。準備が出来次第、全員出立するからここも無人になる。施設に行かせるのが得策だ』
「それにしたって一人くらい護衛をつけてもいいでしょう! あいつは命を狙われているんですよ!?」
スズメを一人で深夜の街に放り出したという団長にヨルは噛み付く。しかし団長に投げ掛ける言葉はそのまま自分への後悔でもあった。スズメを一人にしたのはヨルも同じなのだ。誰を責めることも出来ない。分かっているのに湧き上がる感情を抑えられない。団長はヨルが何を考えているか分かっているようだった。一言静かに『すまない』と言うと、次にヨルを励ました。
『大丈夫。彼はここまで一人でやって来たんだよ。能力もあるし判断力もある。施設はここからそう遠くないし、彼には私の電波を繋げているからね。危ない時は叫ぶように言ってある』
しかしそんな言葉は今のヨルには届かない。
「スズメが大人しく従って助けを呼べる奴だったら苦労しないんです! とにかく私はスズメを探して施設に送り届けてから行きますからっ!」
ヨルは強引に会話を終わらせると静まり返った繁華街を走り抜けた。
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