『庭師』の称号

うつみきいろ

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序章、第一話

勘違いしないことだ

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 ◆

 ユウギリに事情を伝えた後、ユウギリはザンヤに、スズメはヨル達自警団に知らせることになった。夜明けまで時間がない。急がなければ。

 スズメは隠し通路からこっそり屋敷の外に出て、自警団の駐屯地に向かう。

 駐屯地は街の中心部にある。徒歩だとかなり時間がかかってしまうが他に移動手段がない。スズメは中心部に向かう坂道を駆け上った。誰かがつけて来る様子はない。

 幸か不幸かトコヤミ達も明日の作戦実行の準備に追われていて、スズメの動向を監視する暇がないのだろう。隠れる必要がないとなればこっちのものだ。アウトサイドで鍛えた足の速さは誰にも負けない。スズメは坂を登り切ると繁華街を擦り抜け、教会の前の広場を通り過ぎ、自警団駐屯地へと駆け込んだ。

「自警団団長はいらっしゃいますか!?」
 
自警団の建物に入り、大声で叫ぶ。すると受付カウンターから一番近くにいた上背がある団員が此方を向いた。

「何だね君は?」

 その団員はスズメの姿を見るなり訝しげに顔を顰める。
当然だ。
いきなり夜中に子供が飛び込んできたら何事かと思うだろう。もしかしたら悪戯だと思われるかもしれない。スズメがどう団長に取り次いでもらおうかと頭を悩ませていると、奥の扉からやたらとカラフルな髪色をした男が出てきた。赤や黄色、緑、青など毛束毎に色が違う髪を長く伸ばし、後ろで一つに纏めた男は、ヨルやロムより豪華な制服に身を包んでいる。

「私に何か用かね?」
「あなたが団長、ですか?」
「そうだよ」

 優しく微笑んで頷いた男はパロットと名乗った。この人が自警団のトップ。それにしてはやけに若くみえる。しかし纏うオーラはずしりと重く、人を統率する者としての経験値の高さが窺い知れた。スズメは緊張で渇いた喉を鳴らして口を開く。

「私はスズメと言います。今ヨルの家で厄介になっている者です」
「あぁ、君がスズメくんか! 話は聞いているよ」

 パロットによるとヨルやロム、ザンヤにスズメの存在については聞いていたらしい。
 それなら話はスムーズに進む。スズメは全ての経緯をすっ飛ばして結論だけを述べた。

「クーデターの日取りが早まりました。明日の朝、やつらは動き出します」

 一瞬にして建物内が静寂に包まれる。そして次の瞬間、頭に直接声が響いた。

『総員戦闘配備! これより明朝行われるクーデター鎮圧のため準備を行う!』

「うわぁ!?」

 スズメは驚いて思わず両手で耳を塞いで座り込む。

「すまない、びっくりさせてしまったかな。私の称号は『通信士』でね。特定の範囲内、特定の人間に情報を伝えられるんだ」
「特定の範囲内・・・・・・?」
「今の号令で、この建物内の団員全員に情報が伝わったってことだよ。しかし今此処にいない団員には遠過ぎて情報が伝わらない。ここからは足を使わないとね」

 団長は小脇に抱えていた軍帽を被ると、周りの団員にてきぱきと指示を飛ばし始めた。

「情報をありがとう、スズメくん。これで多くの命が救われるよ」
「なんでそんな簡単に私の話を信じてくれるんですか・・・・・・?」
「ヨルとロムのお墨付きだからね。それに情報が間違っていても撤退すればいいだけの話だ。最悪なのは、君の言う事が確かで我々がそれを無視した場合だよ」
 
なるほど理にかなっている。トコヤミ達のことが本当で自警団が何もしなかった場合、多くの死傷者が出るのは必至だ。それよりは現場に急行するのが良いと判断したのだろう。

「後のことは任せて君は施設に避難するんだ。施設のある街の中心部あたりまでなら君の声が届くから、危なくなった時は私の名前を呼んでから思い切り叫びなさい」
「声が、届く?」
「あぁ、私の能力は遠くにいる者の声を拾うことも出来るんだよ。やはり範囲は限られるけどね」

 団長の能力は受信と発信両方が可能らしい。連絡手段が手紙しかないことを考えれば、便利な能力だ。しかし便利な能力といえばスズメも負けていない。

「あの、他に私にできることは・・・・・・」
「ない」

 もっと力になりたくて溢した言葉は、冷たい声によって遮られた。はっと顔を上げるとパロットの黄金の瞳が此方を見詰めている。

「君はまだ団員じゃない。勘違いしないことだ」

 次の瞬間には頭をぐしゃぐしゃと撫でられて「ここも安全じゃない。早く帰りなさい」と諭された。完全に子供扱いだ。子供な上にまだ自警団の訓練生なのは事実だけれど、能力はあるし役に立ちたいのに。しかしパロットはこれ以上の反論は許さないという態度を崩さない。ここは大人しく引き下がるしかない。スズメは小さく頷くと自警団の建物を後にした。
 ◆
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