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序章、第一話
他にも土産があるのを忘れてたよ
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◆
それからスズメは与えられた隠れ部屋から度々抜け出すようになった。今度こそ見つからないよう細心の注意を払ってユウギリと共に情報集めに奔走する。ヨルとロムにバレないように行動することも忘れない。スズメが情報集めをしていると知ったらまた怖い顔で止めてくるに決まっているからだ。
ヨルとロムがやって来るのは大体昼間だった。ロムはわざと正面玄関を潜ってヨルと合流する。二人ともまだスズメを探しているというアピールを欠かさない。そして鴉族当主にしか知らされない地下通路を通ってスズメのところに来るのだった。
「スズメ、今日は果物を持ってきたぞ」
外套のポケットからよく熟した林檎を取り出してヨルが微笑む。ロムはいつも呆れ顔だ。
「ヨル、そんなに土産ばっかり持ってこなくていいって」
「林檎は嫌いだったか?」
「いや、好きだけどさ・・・・・・」
隙を見つけては甘やかそうとするヨルにスズメは少々不安になる。
(俺のこと小さな子供って思ってるんじゃないだろうな)
物心ついてからとっくに十年は経っているのだ。少なくとも十四、五歳にはなっていると自分では思っている。アウトサイドの仲間達の中では一番年長であったのもあってスズメはなかなかヨルの過保護な接し方に慣れなかった。
「あ! そうだ。他にも土産があるのを忘れてたよ」
「も、もういいってば!」
「ほら、長期任務の時に手に入れたんだ。メタセコイアという木の種らしい。変わった形で面白いだろう?」
「種・・・・・・」
恐らくはスズメの能力のことを考えて選んでくれたのだろう。ゴツゴツとした不思議な形の種を手のひらの上に乗せられて胸が熱くなる。だからこういう扱いには慣れていないといっているのに。
「・・・・・・ありがとう、ヨル」
「どういたしまして!」
素直に礼を言うと、ヨルは心底嬉しそうな顔で破顔した。
それからスズメは与えられた隠れ部屋から度々抜け出すようになった。今度こそ見つからないよう細心の注意を払ってユウギリと共に情報集めに奔走する。ヨルとロムにバレないように行動することも忘れない。スズメが情報集めをしていると知ったらまた怖い顔で止めてくるに決まっているからだ。
ヨルとロムがやって来るのは大体昼間だった。ロムはわざと正面玄関を潜ってヨルと合流する。二人ともまだスズメを探しているというアピールを欠かさない。そして鴉族当主にしか知らされない地下通路を通ってスズメのところに来るのだった。
「スズメ、今日は果物を持ってきたぞ」
外套のポケットからよく熟した林檎を取り出してヨルが微笑む。ロムはいつも呆れ顔だ。
「ヨル、そんなに土産ばっかり持ってこなくていいって」
「林檎は嫌いだったか?」
「いや、好きだけどさ・・・・・・」
隙を見つけては甘やかそうとするヨルにスズメは少々不安になる。
(俺のこと小さな子供って思ってるんじゃないだろうな)
物心ついてからとっくに十年は経っているのだ。少なくとも十四、五歳にはなっていると自分では思っている。アウトサイドの仲間達の中では一番年長であったのもあってスズメはなかなかヨルの過保護な接し方に慣れなかった。
「あ! そうだ。他にも土産があるのを忘れてたよ」
「も、もういいってば!」
「ほら、長期任務の時に手に入れたんだ。メタセコイアという木の種らしい。変わった形で面白いだろう?」
「種・・・・・・」
恐らくはスズメの能力のことを考えて選んでくれたのだろう。ゴツゴツとした不思議な形の種を手のひらの上に乗せられて胸が熱くなる。だからこういう扱いには慣れていないといっているのに。
「・・・・・・ありがとう、ヨル」
「どういたしまして!」
素直に礼を言うと、ヨルは心底嬉しそうな顔で破顔した。
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