『庭師』の称号

うつみきいろ

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序章、第一話

関係ない!次期当主は俺なんだ!

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 ヨルは朝焼けの街を必死に駆けていた。その後ろをロムも追う。

 任務が終わった後、子どもが路地で血を流して倒れていると情報が入ったのだ。その子どもの特徴がスズメと酷似していて二人は嫌な予感を拭えないでいた。

(どうか無事でいてくれ・・・・・・!)

 もっと速くと左右の足を動かしつつ、ヨルは心の中で祈る。もうすぐ目的の場所だ。

 孤児を受け入れている教会のすぐ近く。細い路地に出来た人集り。

「自警団です! 通して!」

 ヨルは人々を押し退け前へ前へと進む。そして見えた最悪の光景。

「スズメ!」

 石畳の道に広がった赤黒い血。その真ん中にぐったりと倒れているスズメの姿を発見した。

「スズメ、スズメ! しっかりしろっ!」
「あんまり揺らさない方がいい」

 血に濡れるのにも構わずに小さな身体を抱き上げると、ロムが冷静に傷の具合を確認する。

「ロム! お前の力なら治せるだろ!?」
「僕の力は一人につき一回しか使えない。ここで使ったら今後スズメには二度と使えなくなる」
「でも・・・・・・!」
「通常の治療で充分に治せるレベルだ。とにかく落ち着け」

 ロムはひとまずまだ出血している頭の傷にハンカチを押し当てた。

「・・・・・・屋敷に連れて帰る」
「はぁ!?」
「屋敷には有能な医者がいる。スズメのことは我が家で手当する!」

 ヨルは酷く取り乱しながらもしっかりとスズメを抱き直し、歩き出す。

 人集りはモーセが海を割ったように左右へと開けていき、遮るものはない。

「ヨル、考え直すんだ! 確かに君のところの医者は有能だけど、スズメは昼行性の一族なんだよ!?」
「関係ない! 次期当主は俺なんだ」

 ヨルはロムの忠告を無視して、自宅へと急いだ。
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