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生命の綱

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 そう言えば木に牙が突き刺さったままのフェイボアを放置していたんだったな。
 少しは大人しくなっていると良いんだが。

「大人しくなってるとしたら、体力の回復を、してるのかも」
 何?じゃあ放置は逆効果だったか?

「まずは、スコラ達の救出が、最優先だった。間違ってない」
 それならよかった。
 フェイボアに近づいて行くと、あの鼻息がやっぱり聞こえてくる。

 しかも今度はこっちが近づいて行くので興奮させている模様。
 牙を外そうと地団駄踏んでいる。
 首は振りたくても動かない。

 この体格でこんな林は不釣り合いだな。
 生活し辛そうだ。

「外から来たのかも」
 その線が濃厚だな。
 この体格と維持するのには食料が大量にいりそうだ。
 もしかしたら定住地が無い可能性もあるか。

 それで、こいつはどうする?

「仕留める」
 その線で行くのな。
 だとしたら、一人で大丈夫なのか?さすがに抵抗されたら危険じゃ?

「使ってみたい、スキルがある」
 そうなのか。

「それには、偽造が必要。この辺に無いか?」
 問いかけはセキ達にだが、主語が無いぞ。

「「「キュッ」」」
 それでも理解してどこかにカークを案内する三匹に、何だか疎外感。
 もやもやしながら辿り着いた先の獣道にあったのは獣用の罠、落とし穴付き。
 穴の大きさからみて足を踏み外したら罠にかかる仕組みのようだ。
 まだ獲物がかかっていない落とし穴をわざと壊し、固定用のロープを切らずにむしり取る。

 そうしてフェイボアの所に戻ると、カバンからケイとセンを出す。

「前足を片方、浮かせてくれ」
 ……羽根を振ってフェイボアに近づいて行く二匹。
 踏まれそうだな。
 でも後ろ足よりは捕まえやすいのか?

「普通、罠にかかるのは、前足」
 そっちの理由か。

 二匹は足元まで近付いて、踏みつけようと足が持ち上がるのを見た瞬間、硬化した羽根を足の付け根に向けて突き上げた。
 足を上げたままつっかえ棒されて足をおろせなくなっていた。
 意外と簡単にいったな。

 カークが浮いた足にむしってきた罠をかける。
「離れていいぞ」
 合図で足が自由になると、途端に暴れ出すフェイボア。
 ロープの端はカークの肩に巻かれて持って行かれないように踏ん張っている。
 カーク!固めた足は大丈夫なのか?

「ん!」
 しばらく怒りのままに暴れ続けてフェイボアの足に擦り傷ができるほどになる。
 つまり、このフェイボアはあの罠にかかって暴れてロープを引きちぎったように見せるわけだ。
 カーク頑張った!
 固めてある骨折中の足は変化が無い。キャスキューなんて頑丈なんだ!

「血流増加、させてたから、頑丈さ増してた」
 スライムの特性的なものか。
 それでこの後どうするんだ?

「スキル使う。ケイ、セン、固定」
 再び二匹によるつっかえ棒がされる。
 ロープは離されて、足に結ばれたまま垂れ下がっている。
 その足にカークが手に持った石を当てる。
 自分じゃないぞ。

生命いのちの綱」
 カークがそう言うと、フェイボアの傷に当てた白い石が赤く染まっていき、空いている方の手でその石を撫でると、石から赤いロープが溢れて来た!
 その赤いロープを手繰り寄せながら、石はフェイボアから離さない。
 何だこれ!!
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