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珪砂

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 透明になった砂に助けられ、今、自分は浮いている。
 包み込まれた状態で透明な塊の真ん中に据え置かれている。

 自分は石なので呼吸の心配はない。と思う。

 一段高い位置にいて、あっちが見たいと考えると砂が向きを変えてくれる。
 結構便利だ。
 透明だから視界も良好で助かる。

 河原の砂は全体的に白い。
 もっと近くで見たいと言えば、自分は塊の表面に寄せられて背中だけくっついた状態で河原の砂に身体を伸ばしてくれた。
 顔を寄せて見させてもらえば、砂粒は半透明でできているようだ。
 何て言うのだろうなこれは……。
  ピコンッ
 ん?
 何か頭の中に浮かんだ。
  ――――――――――---‐
   珪砂ケイシャ
  ――――――――――---‐
 そうか。
 この砂は珪砂と言うのか。
 じゃあ自分を包んでいるも珪砂で出来ているんだろうな。

 ……それならこれからをケイと呼ぼう。
 『おーい』では味気ないしな。

 うわっ揺れるぞ!
 包まれたままだからどこかにぶつかるという事はないけど、上下に揺れるのは怖いぞ!
 ……今度は横に震えだした。
 ケイには感情があるのか?
 うわっまた縦に!
 うわっまた横に!
 止めてくれ!

 ん?
 止まったので見渡せば、ケイの上半分が斜めに傾いていた。
 曲がった部分が白く濁っている。
 困ってるのか?
 言った傍から体が上昇して、落とされたら叫ぶと構えていたのにゆっくり元の位置に戻った。

 これはもしかして意思表示が体を動かすしかないのに、自分が怖がるから困ってるのか?
 あ、持ち上がった。
 なら、塊の外に動かす部分を作ったらどうだ?

 塊の外側が突き出した模様。
 内側から見ると、背景が歪んで見える。
 一個でいいのに全面から突き出しているみたいだ。
 きっと外から見たら不思議な物体だろう。
 そして突起部分の統合が起こり始める。
 突起の歪みが重なって渦巻いて一つになる。

 しばらくしてやっと一つに落ち着いたみたいだ。
 もう平気か?
 突起が上下に振られる。
 今のは『いいよ』だな。じゃあ『いやだ』は?
 突起が横に振られる。

 わかった。
 じゃあここから移動することは出来るか?
 ……縦だな。
 河原の真ん中は目立つし移動しよう。
 希望は木の間だけど、その前に川を見に行きたい。良いか?
 突起は縦に振られて移動が始まる。

 振動は少し、この位なら問題ないな。
 しかしどうやって動いているのだろう……。
 チラリと下を見る。
 砂に横線を残しながら進んでいる模様。
 先頭部分を見てみると、ちょっと伸ばした部分を砂に引っ掛けて体を引き寄せているようだ。
 この進み方は……ミミズだと考えが浮かんだ。
 たまに目の前を横切っていくのを見たような気がする。

 まあどうでもいいか。
 川は目の前だ!
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