モダンな財閥令嬢は、立派な軍人です~愛よりも、軍神へと召され.....

逢瀬琴

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68 静子令嬢の逆襲

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ーーーある上級国民の洋館にて......。

「なかなか綺麗なご令嬢だった」
 畑中中将は葉巻を一本貰って吸う。
「藤宮少将の娘だったよな」
 革張りの椅子に腰かけている一人の将校。
 無論、対等か、違うところか......。

「所詮は男装軍人など、お飾りに過ぎない」

「反動......というやつですか」
 と、畑中中将。
 
 反動とは上司がその人に対してどうしても気に入らないからと、召集したり名指しして戦地へ送りつけたりする意味合いで、要は隠語であり、あまり世間には知られていない。

「......まぁ...。これからの課題は、大陸で、ある資料を手に入れてもらいたいからな。色仕掛けには使えなくはない......」

「本気で使う気ですか」

「あの男には、わたしも気に食わんところがあるから、ちょうどいい。整いしだい、男装軍人を大陸に送りゴロツキ兵隊どもに、鍛えてもらおう」
「分かりました......」

 畑中中将はまたふーん......、と、考える。どうやら、考えるのが癖のようだ。

(藤宮少将には借りがあるから......なぁ)

 反動とは可愛そうだが、そこらじゅうでやってることだ。

(目を付けられて当然だろうな。所詮は女、役には立たない......か。静子令嬢のようにあからさまな態度をとってきた。あれは滑稽過ぎたがなぁ)

 畑中中将は静子令嬢の滑稽さを思い出して、冷笑した。


ーーーー畑中中将の洋館......(前回に戻る)


 婦人たちは別の部屋に促され、そこで雑談が始まる。パーティーのようなものだ。ご婦人たちの服装は洋装やら和服やら、モダン飛び交う香りが漂っている。
 
 お茶会なので、洋菓子やら和菓子が振る舞われていた。
「殿方は好き勝手、ブランデーやら、葉巻を楽しんでいるようなので、わたしたちはわたしたちで、楽しみましょう」
 と、畑中婦人が指揮を取る。

「こちらは大手飲料会社の令嬢で静子さんです。萩原大尉の婚約者です」
 そして皆に紹介した。
「初めまして、静子と申します」
 静子は外国風に会釈をする。
「まぁ、なんて素敵なお方! お友達になりましょう」
 婦人たちの娘等がよってきて一人が言うと、輪になる。

「今話題の舞台、見ていらっしゃる?!」
 一人の少女がわくわくしながら、お菓子に手を伸ばす。
「男装軍人と三銃士ですよね」

「裕太郎様とあたる様がかっこよくて」

「裕太郎様はイケスな女泣かせですわ」
 と、静子。
「あら? そこが魅力的でなくて? 魔性の男ともいわれているわ」
「それはいっぱい女を泣かせていたからだわ」

「あ......、あなた、確かいつも【赤いルージュ劇場】で......」
 
「ええ。裕太郎様の待ち人でしたの」

 キャーーーーッ! 

 と、黄色い声が響く。

「愛なんてなかったわ」
「ひどいわ。こんな綺麗な方だのに」
「お金がなくなれば、いそいそわたしに近寄ってくるの」

「あーん......。そんなお方だったの?」
「でもハンサムだから許せちゃわない?」
 色々な話が飛び交う。
 主に裕太郎の話だ。
「だけど、あんな素敵な方と婚約なさったのだから、今では淡い思い出じゃない?」

 静子はふうっ、と、溜め息をつき、ソファーに腰かける。

「そう、そう言いたいわ。萩原のおかげで、わたしの怒りから、おさまっていったの」
「怒り?!?! どうかなさったの?」
「問題は、その男装軍人だわ」
「ああ......、わたしもあの方はちょっと好まないというか......ねぇ......」
「そうゆう境遇だけど、わたしも......」

 どうやらご婦人たちには、人気のない伊吹のようだ。

「わたしのほうが先だったのに、あの男装軍人のせいですべてを取られてしまったの」
 事実ではある。
「まぁ。男装でも、なんだかんだ、やることはやるのね。厭らしい......」
「ほんと」
 女性独特の悪口大会。
 これは、ご婦人たちだ。

「えー、でもわたしは結構好きだわ。かっこいいものー」
 と、婦人のご令嬢が憧れたように話す。
「......確かにかっこよくて、一度お友達になろうと思って、近付いたら、冷たくあしらわれてしまったの」
 静子は悲しそうな顔をした。
 ご令嬢たちも悲しげ。
「そんな方でしたの?」
「分かりませんけど、異性との態度が違うのは確実......」
「それはがっかりですわ。なんとかならないかしら」
 と、一人のご令嬢がポツリ。
「なんとかって?」
 切なげに問う静子。

「いいことを思い付いた」
 一人の婦人が嬉しそうに言った。
「それはなんですの?」

 和子婦人はただ黙って静観している。
 さすがは中将の女房である。
 芯が通っているようだ。

 他の婦人方はヒソヒソと、話始めた。
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