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64 秘密の秘密を暴露しろ
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「いきなり...」
マスターも突拍子ない彼女のセリフに驚く。
裕太郎も目を剥いた。
いきなりやってきて何を言いだすのだろうかと。
「いきなりやってきて、なんなんだ、君は?!」
と、裕太郎。
「あなた、歌劇団のオーディションを受ける予定だったのよね? あの襲撃事件がなければ、あなたは確実に来ていた」
劇団員とマスターは、その言葉にギョッとした。
裕太郎の目が泳いだ。
(いきなりの暴露かよ)
緑里がその言葉に、戻ってくる。目くじらを立て、
「それはどうゆう事なの?!」
と、叫んだ。
裕太郎は溜め息をつき、
「ここじゃ、のんびりしてられんと思ってね。前にも言ったよな。金と女のためだ。俺だって、いつまでも、お前のお姫様じゃいられないんだ」
と、言った。
「飛躍したい......。俺の夢だ」
「充分飛躍したわ」
「一時じゃダメなんだ。でも、まさか、花形スターからお声が掛かり、そして、暴露されるとはね」
裕太郎は苦笑した。
「みんなに知ってもらいたかったから」
と、あたる。
「ここでも充分いけるじゃないか」
そしてマスター。
裕太郎は苦虫を噛み潰したような顔をし、
「ふざけるな......」
と、呟く。
「なんだと?」
「あんたが家族のところへ俺たちの給金までを回すんじゃないか!!!」
拳を震わせた。
「えーっ?!」
スタッフ、劇団員は声を上げた。
前田は無表情。
「.........俺がここのマスターだからな......。好きな様にやるのは当たり前だろう。お前もやっと花が出たってもんだ。俺が......お前を開花させたようなもんだ!! 文句あるのか?!」
緑里がつかつかとやってきて、マスターをひっぱたいた。
「ぐぉっ!」
ほぼ拳に近い。
「何が......、何が文句あるかよ!! パトロンさえ抱えてなきゃ、色んな目に合わなかったわ! わたるが他の場所に行ったの、正しかった。恩義でわたしたちを手離すつもりなんてなかったのよ!! あんたこそ、感謝しなさいよ! 家族が路頭に迷わなかったんだからね!」
緑里の大爆発である。
「い、伊吹......」
助けを求めるおじだが、伊吹は肩を竦めた。
なんともはや、情けない。
「同情はしない。藤宮家のお金も巻き上げているんだから。おじさん、これからは、せめて藤宮家だけに頼るんだ。センスだってあるし、そうすれば、この劇場だって、もっともっと大きくなる。しっかりしてくれよ、おじさん」
さらに皆の前で言われたマスターはごもる。
「だ、だが......」
伊吹は腰に差していた軍刀を抜き、ダンッと、床へ叩いた。みんながビックリしたくらいだ。
「おじさん。誰がために、わたしは軍人になった?」
「.........」
何も言えなくなる。
「これからはみんなのためにも、精を出すんですね、おじさん」
マスターはハンカチで鼻を押さえながら、しょんぼりしていた。
「......なんだか申し訳ないです」
と、あたるが謝る。
「あんたのお陰でマスターの悪事が発覚したから、よかったわ」
と、緑里。
「こっちも生きるのに必死なんだがなぁ」
マスターはぼやく。
「悪どいんですよ!!」
と、裕太郎。
「それで、どうして裕太郎が欲しいんだ?」
伊吹は訊ねた。
「男装軍人と三銃士を舞台でやりたいのです」
「ここでやろうと申し出たが、突っぱねられた」
と、伊吹。
「......何故です?」
「戦意向上のためにはやりたくない」
裕太郎が自ら話した。
「戦意向上ではなく......、恋愛ならどうですか?!」
「あなたが来たら、池山中尉はあなたに決まっていました」
「なんなんだ! いきなり現れて、それはないだろう!」
マスターが威厳を見せるが勢いがない。
そうして、緑里に足を踏まれた。
「ウガッ!」
マスターは身体を萎めさせる。
「裕太郎、今度はわたしの大嫌いな響わたるのお姫様になるってわけね」
「男役なんだから、お姫様じゃないだろう。伊吹の役か......?」
「いいわよね、緑里?」
敢えて話を聞かないあたる。
「俺は所有物じゃあ、ないぞ」
裕太郎は苦笑する。
そして、
「所有していいのは、伊吹だけだ」
と、ハッキリ言った。
「えっ!? ほんとッ? そんな仲なの?!」
と、驚いたのはあたる。
「バ、バカ!!!」
伊吹は慌てて拒否する。
「否定しない方が、可愛いわよ。伊吹」
と、緑里。
緑里はあたるの肩に手を掛けて、
「あんた、運があれば、裕太郎を狙っていたとか?」
と、聞いてみた。
「まさか、少しでも舞台がよくなるようによ」
「ふうーん、どうだか」
「緑里のように色ボケじゃないわよ。ただ驚いただけ」
「なっ!!」
「色ボケ......」
伊吹がぷすっと笑う。
緑里は伊吹をキッと睨んだ。それを見て、肩を竦める。
「裕太郎さんの意見を聞きたいわ」
「緑里が色ボケとか?」
「いいえ、承知して下さるかどうか」
「.........まさかずっと歌劇団所属になるつもりじゃないよな」
と、マスター。
「俺次第じゃないですか?」
「契約はどうなってるのです?」
と、あたる。
「おいおい、引き抜きか?」
「おじさん!」
と、伊吹が制する。
「契約なんてないわよ」
と、緑里。
「え?」
「ああ、そう言えば」
裕太郎の言葉に、スタッフのみんなはマスターを一瞥。
「マスターに拾われたようなもんだから、そんなのなかったわ」
「悪どい! さすが、【赤いルージュ劇場】のマスターです」
あたるは納得する。
「恥ずかしいだけだ」
と、伊吹の溜め息。
「契約も必要だな」
裕太郎はマスターを見る。
「わかったわかった!! こうなったらこっちも本気入れるからな! 家族を食わせにゃならんから! 裕太郎、緑里!」
真剣になったマスターの表情に対して、二人も真顔になる。
「これからは3ヶ月の契約更新だ! こっちもバンバン気合い入れていくからな。看板が入れ替わらないよう、覚悟するんだな!」
「はいっ!!」
二人は嬉しそうに頷いた。
マスターも突拍子ない彼女のセリフに驚く。
裕太郎も目を剥いた。
いきなりやってきて何を言いだすのだろうかと。
「いきなりやってきて、なんなんだ、君は?!」
と、裕太郎。
「あなた、歌劇団のオーディションを受ける予定だったのよね? あの襲撃事件がなければ、あなたは確実に来ていた」
劇団員とマスターは、その言葉にギョッとした。
裕太郎の目が泳いだ。
(いきなりの暴露かよ)
緑里がその言葉に、戻ってくる。目くじらを立て、
「それはどうゆう事なの?!」
と、叫んだ。
裕太郎は溜め息をつき、
「ここじゃ、のんびりしてられんと思ってね。前にも言ったよな。金と女のためだ。俺だって、いつまでも、お前のお姫様じゃいられないんだ」
と、言った。
「飛躍したい......。俺の夢だ」
「充分飛躍したわ」
「一時じゃダメなんだ。でも、まさか、花形スターからお声が掛かり、そして、暴露されるとはね」
裕太郎は苦笑した。
「みんなに知ってもらいたかったから」
と、あたる。
「ここでも充分いけるじゃないか」
そしてマスター。
裕太郎は苦虫を噛み潰したような顔をし、
「ふざけるな......」
と、呟く。
「なんだと?」
「あんたが家族のところへ俺たちの給金までを回すんじゃないか!!!」
拳を震わせた。
「えーっ?!」
スタッフ、劇団員は声を上げた。
前田は無表情。
「.........俺がここのマスターだからな......。好きな様にやるのは当たり前だろう。お前もやっと花が出たってもんだ。俺が......お前を開花させたようなもんだ!! 文句あるのか?!」
緑里がつかつかとやってきて、マスターをひっぱたいた。
「ぐぉっ!」
ほぼ拳に近い。
「何が......、何が文句あるかよ!! パトロンさえ抱えてなきゃ、色んな目に合わなかったわ! わたるが他の場所に行ったの、正しかった。恩義でわたしたちを手離すつもりなんてなかったのよ!! あんたこそ、感謝しなさいよ! 家族が路頭に迷わなかったんだからね!」
緑里の大爆発である。
「い、伊吹......」
助けを求めるおじだが、伊吹は肩を竦めた。
なんともはや、情けない。
「同情はしない。藤宮家のお金も巻き上げているんだから。おじさん、これからは、せめて藤宮家だけに頼るんだ。センスだってあるし、そうすれば、この劇場だって、もっともっと大きくなる。しっかりしてくれよ、おじさん」
さらに皆の前で言われたマスターはごもる。
「だ、だが......」
伊吹は腰に差していた軍刀を抜き、ダンッと、床へ叩いた。みんながビックリしたくらいだ。
「おじさん。誰がために、わたしは軍人になった?」
「.........」
何も言えなくなる。
「これからはみんなのためにも、精を出すんですね、おじさん」
マスターはハンカチで鼻を押さえながら、しょんぼりしていた。
「......なんだか申し訳ないです」
と、あたるが謝る。
「あんたのお陰でマスターの悪事が発覚したから、よかったわ」
と、緑里。
「こっちも生きるのに必死なんだがなぁ」
マスターはぼやく。
「悪どいんですよ!!」
と、裕太郎。
「それで、どうして裕太郎が欲しいんだ?」
伊吹は訊ねた。
「男装軍人と三銃士を舞台でやりたいのです」
「ここでやろうと申し出たが、突っぱねられた」
と、伊吹。
「......何故です?」
「戦意向上のためにはやりたくない」
裕太郎が自ら話した。
「戦意向上ではなく......、恋愛ならどうですか?!」
「あなたが来たら、池山中尉はあなたに決まっていました」
「なんなんだ! いきなり現れて、それはないだろう!」
マスターが威厳を見せるが勢いがない。
そうして、緑里に足を踏まれた。
「ウガッ!」
マスターは身体を萎めさせる。
「裕太郎、今度はわたしの大嫌いな響わたるのお姫様になるってわけね」
「男役なんだから、お姫様じゃないだろう。伊吹の役か......?」
「いいわよね、緑里?」
敢えて話を聞かないあたる。
「俺は所有物じゃあ、ないぞ」
裕太郎は苦笑する。
そして、
「所有していいのは、伊吹だけだ」
と、ハッキリ言った。
「えっ!? ほんとッ? そんな仲なの?!」
と、驚いたのはあたる。
「バ、バカ!!!」
伊吹は慌てて拒否する。
「否定しない方が、可愛いわよ。伊吹」
と、緑里。
緑里はあたるの肩に手を掛けて、
「あんた、運があれば、裕太郎を狙っていたとか?」
と、聞いてみた。
「まさか、少しでも舞台がよくなるようによ」
「ふうーん、どうだか」
「緑里のように色ボケじゃないわよ。ただ驚いただけ」
「なっ!!」
「色ボケ......」
伊吹がぷすっと笑う。
緑里は伊吹をキッと睨んだ。それを見て、肩を竦める。
「裕太郎さんの意見を聞きたいわ」
「緑里が色ボケとか?」
「いいえ、承知して下さるかどうか」
「.........まさかずっと歌劇団所属になるつもりじゃないよな」
と、マスター。
「俺次第じゃないですか?」
「契約はどうなってるのです?」
と、あたる。
「おいおい、引き抜きか?」
「おじさん!」
と、伊吹が制する。
「契約なんてないわよ」
と、緑里。
「え?」
「ああ、そう言えば」
裕太郎の言葉に、スタッフのみんなはマスターを一瞥。
「マスターに拾われたようなもんだから、そんなのなかったわ」
「悪どい! さすが、【赤いルージュ劇場】のマスターです」
あたるは納得する。
「恥ずかしいだけだ」
と、伊吹の溜め息。
「契約も必要だな」
裕太郎はマスターを見る。
「わかったわかった!! こうなったらこっちも本気入れるからな! 家族を食わせにゃならんから! 裕太郎、緑里!」
真剣になったマスターの表情に対して、二人も真顔になる。
「これからは3ヶ月の契約更新だ! こっちもバンバン気合い入れていくからな。看板が入れ替わらないよう、覚悟するんだな!」
「はいっ!!」
二人は嬉しそうに頷いた。
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