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47 戦への目覚め......
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すき焼きはほとんど伊吹とキヨ子が食べ、男たちは酒の方を徹していた。たまに積まんで食べるくらいだった。
「.........無限に食べていたな」
池山中尉の半ば呆れ顔。
「すき焼きなんて祝い事でしか、食わんからな」
「伊吹の家でもそうなのか?」
伊吹は頷く。
「藤宮家は一度没落してるからな。慎重なんだろう」
と、大前大尉。
「ごちそうさまでした」
二人は頭を下げる。
「いやいや、二人が満足してくれたらそれでいい」
大前大尉は嬉しそうだ。
「強いて言えばデザートが........」
伊吹はボソッと言う。
「分かったから! 俺が連れてく!」
恥ずかしい池山だ。
「えっ? いいのか?」
伊吹の顔が緩む。
「鶴屋か? それともローズ?」
「鶴屋であんみつを食べたい!」
「わたしも!」
と同意のはキヨ子。
「邪魔をするな.........」
降旗はキヨ子を遠慮させた。
本音は二人だけにさせたくない降旗だが。
「何、よかったらキヨ子さんもどうぞ」
池山はくすくす笑う。
「だが.........」
「帰りはちゃんと送るから、心配しないで」
「少尉殿も.........」
「こんなナリだ。心配するな」
「それが心配なんすよ」
最近のちまたでは、偉いところの重役や大臣などが殺害されるという事件が相次いでいる。
そんな記事を見ている降旗は気になって仕方がないのだ。
それに、池山の行動といい......。
(少しは自覚をしろ。てめぇも軍人なんだから)
降旗軍曹はイラついたようにガシガシ頭を掻いた。
「それなら藤宮君の家に行って、前崎さんを寄越したら?」
と、提案したのは大前大尉。
「それはいいですね!」
「電話もあるから.........。鶴屋があるな」
降旗はひとまず胸を撫で下ろす。
「なら安心して任せられます」
と言った。
「わたしは降旗の子どもか?」
「プフッ」
と、拭いたのは池山中尉。
「なっにが可笑しいんすか? 中尉殿」
「いや、伊吹はいっぱい保護者がいて羨ましい、と、思ってさ」
「なんだと?」
あからさまな嫌味に、カチンとくる伊吹。
「ここ二週間、なんなんだ?! 女々しい事ばっか言ってきて!!」
啖呵を切る伊吹。
すると数人の、刀を持った男たちが、鞘から刀を抜いた。
三人の軍人も瞬発的に抜く。
いきなりの状況に伊吹も唖然とするが、キヨ子を守る体制だ。
通りすがりの人たちの悲鳴。逃げ始める人々。
「キャーーーッ!」
キヨ子の悲鳴にハッとして、
伊吹もやっと鞘から軍刀を抜いた。
囲まれてしまい、キヨ子を離す事が出来ない。
「何事だっ!!!」
と叫んだのは、大前大尉。
「この裏切り者がっ!!!!」
一人が池山中尉へ刀を振り回す。
池山中尉は、それを軍刀で受け止め、跳ね返す。
襲撃である。
三人の戦いを見ていたら、確かに礼儀もなっていない。
多勢に無勢だが、三人はなぎ倒して行き、周囲は血の海と化して行く。
刃は伊吹にも向かってきた。
「一般市民もいるんだっ!!!! 巻き込むな!」
伊吹は声を上げた。
「うるせぇっ!! 命がけだっ!」
刃の重なり合う音。
伊吹は相手から離すように、腹を蹴り上げた。
「ゲェッ」
相手は腹を押さえてよろける。
(今だっ!)
伊吹は構えた。
構えたものの、つい相手を重んじてしまう心が出てしまう。
間髪入れずに、その男を肩から切り裂いたのが降旗軍曹だ。
血飛沫が伊吹の顔に飛び散る。
「礼儀よくしてたらやられるんですよ! キヨ子! 人を呼んで来いっ!」
「わ、わかった!」
「伊吹っ!!! これは実践だっ!! 殺れ!」
悪戦苦闘している池山が教えるように叫んだ。
その言葉で衝撃が全身に走る。
軽やかに動き始めた。
けれど切る事はせず軍刀の柄を使って倒している。
「生ぬるい財閥令嬢がっ!!」
後から小松がやってきた。
伊吹は息を飲む。
池山たちからかけ離れてしまった。
小松のオーラに怯む伊吹。
初めて会った時のオーラも、射抜くような視線で恐怖だったが、その時と同じ。
「負けたら死......」
伊吹もそう言って、睨み付ける。
「よく分かってるな、男装軍人」
小松は鞘を抜いて、投げ捨てる。
「財閥令嬢だ、男装軍人だと馬鹿にするな」
伊吹はギリッと足に地を着けた。
「貴様が負けだぁぁっ!!!」
二人で叫ぶ。
日本刀と軍刀の闘い。
二人の死闘。
「.........無限に食べていたな」
池山中尉の半ば呆れ顔。
「すき焼きなんて祝い事でしか、食わんからな」
「伊吹の家でもそうなのか?」
伊吹は頷く。
「藤宮家は一度没落してるからな。慎重なんだろう」
と、大前大尉。
「ごちそうさまでした」
二人は頭を下げる。
「いやいや、二人が満足してくれたらそれでいい」
大前大尉は嬉しそうだ。
「強いて言えばデザートが........」
伊吹はボソッと言う。
「分かったから! 俺が連れてく!」
恥ずかしい池山だ。
「えっ? いいのか?」
伊吹の顔が緩む。
「鶴屋か? それともローズ?」
「鶴屋であんみつを食べたい!」
「わたしも!」
と同意のはキヨ子。
「邪魔をするな.........」
降旗はキヨ子を遠慮させた。
本音は二人だけにさせたくない降旗だが。
「何、よかったらキヨ子さんもどうぞ」
池山はくすくす笑う。
「だが.........」
「帰りはちゃんと送るから、心配しないで」
「少尉殿も.........」
「こんなナリだ。心配するな」
「それが心配なんすよ」
最近のちまたでは、偉いところの重役や大臣などが殺害されるという事件が相次いでいる。
そんな記事を見ている降旗は気になって仕方がないのだ。
それに、池山の行動といい......。
(少しは自覚をしろ。てめぇも軍人なんだから)
降旗軍曹はイラついたようにガシガシ頭を掻いた。
「それなら藤宮君の家に行って、前崎さんを寄越したら?」
と、提案したのは大前大尉。
「それはいいですね!」
「電話もあるから.........。鶴屋があるな」
降旗はひとまず胸を撫で下ろす。
「なら安心して任せられます」
と言った。
「わたしは降旗の子どもか?」
「プフッ」
と、拭いたのは池山中尉。
「なっにが可笑しいんすか? 中尉殿」
「いや、伊吹はいっぱい保護者がいて羨ましい、と、思ってさ」
「なんだと?」
あからさまな嫌味に、カチンとくる伊吹。
「ここ二週間、なんなんだ?! 女々しい事ばっか言ってきて!!」
啖呵を切る伊吹。
すると数人の、刀を持った男たちが、鞘から刀を抜いた。
三人の軍人も瞬発的に抜く。
いきなりの状況に伊吹も唖然とするが、キヨ子を守る体制だ。
通りすがりの人たちの悲鳴。逃げ始める人々。
「キャーーーッ!」
キヨ子の悲鳴にハッとして、
伊吹もやっと鞘から軍刀を抜いた。
囲まれてしまい、キヨ子を離す事が出来ない。
「何事だっ!!!」
と叫んだのは、大前大尉。
「この裏切り者がっ!!!!」
一人が池山中尉へ刀を振り回す。
池山中尉は、それを軍刀で受け止め、跳ね返す。
襲撃である。
三人の戦いを見ていたら、確かに礼儀もなっていない。
多勢に無勢だが、三人はなぎ倒して行き、周囲は血の海と化して行く。
刃は伊吹にも向かってきた。
「一般市民もいるんだっ!!!! 巻き込むな!」
伊吹は声を上げた。
「うるせぇっ!! 命がけだっ!」
刃の重なり合う音。
伊吹は相手から離すように、腹を蹴り上げた。
「ゲェッ」
相手は腹を押さえてよろける。
(今だっ!)
伊吹は構えた。
構えたものの、つい相手を重んじてしまう心が出てしまう。
間髪入れずに、その男を肩から切り裂いたのが降旗軍曹だ。
血飛沫が伊吹の顔に飛び散る。
「礼儀よくしてたらやられるんですよ! キヨ子! 人を呼んで来いっ!」
「わ、わかった!」
「伊吹っ!!! これは実践だっ!! 殺れ!」
悪戦苦闘している池山が教えるように叫んだ。
その言葉で衝撃が全身に走る。
軽やかに動き始めた。
けれど切る事はせず軍刀の柄を使って倒している。
「生ぬるい財閥令嬢がっ!!」
後から小松がやってきた。
伊吹は息を飲む。
池山たちからかけ離れてしまった。
小松のオーラに怯む伊吹。
初めて会った時のオーラも、射抜くような視線で恐怖だったが、その時と同じ。
「負けたら死......」
伊吹もそう言って、睨み付ける。
「よく分かってるな、男装軍人」
小松は鞘を抜いて、投げ捨てる。
「財閥令嬢だ、男装軍人だと馬鹿にするな」
伊吹はギリッと足に地を着けた。
「貴様が負けだぁぁっ!!!」
二人で叫ぶ。
日本刀と軍刀の闘い。
二人の死闘。
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