モダンな財閥令嬢は、立派な軍人です~愛よりも、軍神へと召され.....

逢瀬琴

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45 池山中尉と伊吹の対立

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 それから伊吹は金トレを倍に増やした。池山から少しでも近付けるために。
「やはり増やしたら身体はバキバキだな」
「そらそうでしょ。100から200なんですから」「なんで、降旗もついてくる」
 横から池山が割ってくる。
「二人にしたら、どっちかが監獄ってのになる可能性が高いですから」
 池山は冷淡な顔を向ける。
 木刀を渡そうとすると、伊吹はぷいっ、と、して、自分から持ってくる。
「覚悟しろ」
「1日2日でどうこうなるか」
 池山は構えた。
 高圧的なオーラに、昨日は怯んだが、今日の伊吹は怯まない。
 伊吹から木刀を振り上げた。
 池山はそれを簡単に弾く。伊吹はなりふり構わず池山に向かって行ったが、余裕な態度。
 伊吹は息を切らす。
 
(あんなんじゃ、無理だな)

 降旗軍曹はそれを見ていて溜め息。

「でぇいっ!」
 池山らしくない野太い声を出し、伊吹の腹に突くふりをしただけなのに、伊吹は驚いて尻餅を突く。

(あ~あ.........)

 伊吹は慌てて起き上がる。

「背中を向けるなっ!」
 ビシッ!
「ぐっ!」
 肩を叩かれ、肩を押さえながら倒れ込む。
「今日はこれでおしまいか?」 
 池山は伊吹の側にしゃがみ込み、この間のような態度になる。
 肩が痺れ、動けないのだ。

「少し待て.......」
「戦場に少し待てはないぞ」
「ちくしょう......」
   伊吹は吐き捨てると、よろけながらも立ち上がる。木刀を力強く握り締めた。
 池山も木刀を振り上げた瞬間に、伊吹は脇腹を目掛けて、横切りにした。
 バキッ! 
「うっ!」
 木刀が割れ、池山の悲鳴。
「池山!!」
「そんな顔をするなっ! ウッ」
 池山は片膝を突き、苦しそうに脇腹を押える。
 木刀が割れた勢いだ。
 伊吹は震えた手で、池山の木刀を取り、構える。
(これが戦場の世界..........?)
 止めを刺そうと振り上げたら、伊吹の動きが止まる。池山が足首に忍ばせておいたピストルを伊吹に向けていたのだ。

 黙って見ていた降旗軍曹もさすがに、片足が浮いた。
(ただ事じゃねぇっ!!)
「もし、向けられたらどうするんだ」
 全身に冷や汗が出る。
「本物か......」 
「そんな事を聞くか? 弾だって降ってくるんだよ」
(そりゃ、そうだが..........)
 降旗軍曹も汗が出てくる。
「どう切り抜く?」
 池山は引き金に指を置いた。
 それを見た降旗軍曹は、庇うように伊吹の前へ出た。伊吹もそれを見て驚く。
 そうして、昨日の医務室の出来事を思い出す。
「降旗、そこをどくんだ」
 と、池山。
「ここで引いてみて下さい。大事になりますよ」
「大事にしてるのはお前だ、降旗。軍事訓練の一貫でもある」
「なっにが一貫ですか。そんな気はないくせに。そんなら失礼!!」
 降旗軍曹は池山の手を蹴り上げた。
 蹴られた衝撃でピストルが落ちる。
「まったく、これを伊吹に教えようとしたのに......」
「あんたの目は、そんなんじゃなかった」
「上官なのにあんた呼ばわりか?」
「なら、男同士として言わせて下さい」
「何を?」
「最近のあなたは紳士に欠けている。あなたらしくないっ!!」
「降旗、黙れ」
 伊吹がそっと言う。
「ですが」
「ここは男社会だ。女を立てるのは、この場所じゃない。訓練なら、それに立ち向かうべきだ」
「少尉殿。ですが池山中尉は殺気だってました」
「それもいい訓練だ。他の人は誰もやってはくれない」
「............」
「池山........大丈夫か.......?」
 伊吹は恐る恐る声を掛けてみた。
「......気にするな.........。明日もな」
 ピストルを仕舞い、無表情のまま、部屋から出て行く。
「非正規のピストルが気になりますか?」
「なんであんなの隠し持ってたんだろうな」
「調べましょうか?」
「危険な真似はよせ。いつもの池山じゃないんだ」
「.........分かりましたよ」
 伊吹は降旗軍曹の表情を汲み、
「絶対だ。わたしを悲しませる真似はするな」
 と、念を押しておいた。


       
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