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23 会いたいのだけれど......
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事務所へ行くと、制服を着た父の姿が。
「お父様...」
その声で父は振り向く。
父は伊吹の顔を見て、
「酷くやられたな」
と、冷淡に言われた。
「海軍将校たちはすべて釈放だ...」
「お父様......」
「なんだ?」
「なんだか、ピリピリしていませんでしたか?」
「お前は気にするな」
「何故です?」
「............」
「わたしも一人の軍人です」
「後で話す。そうムキになるな。その傷の手当てをしに行こう。名医を知っている」
「あと......。えん罪で牢に入れられた人たちを......」
「そこまで面倒は見きれん」
「お父様、お願いです」
「......あまり伊吹はお願いしてくれた事はないな...」
「そうですか?」
「ああ、しかも人様の事でお願いされるとは......。分かった。署長に話してくるから、待っていなさい」
「はい」
すると、
「伊吹っ! 大丈夫かーっ」
と、叫びながらおじがやってきた。
緑里も一緒である。
「おじさん、父の計らいで牢から出る事が出来ましたよ」
「よかった! 謙三は?」
「署長のところです」
「しっかし、酷い顔だな......」
と言った後に、
「よかったわ」
と、緑里がマスターを押し退けて、伊吹を抱き締める。
「......緑里...」
甘い香水が鼻腔に刺激された。
(ほんとうは優しいんだな)
「この時間だと......、一本ショーをやってから来ましたか?」
辛辣な声を出す。
「そりぁ...、お金も大事だからな......」
(裕太郎は、来なかったな......)
「裕太郎......?」
と、聞いてきたのは緑里だ。
(何で分かったんだろう? 緑里は......)
「あいつは......、ご令嬢と一緒だ」
と言ったのはマスター...。
「いてぇっ!」
マスターの悲鳴が何故あがったか、それは緑里がヒールで足を踏みつけたのだ。
ズキリ、
と、胸が傷んだ。
(そして、酷い顔をしているんだ。こんな顔で会ってもなぁ)
可愛らしいご令嬢の方が、きっと楽しい。
伊吹は顔の痛みよりも、胸の痛みの方がずきりとした。
父が戻ってくると、変な空気を察して、
「なんだ......? どうしたんだ?」
と、聞いてきた。
「二人して空気の読めない男ね」
と、緑里だから平気で言えた。
伊吹の父がどれだけ凄い人かも知れず...。
「お父様...」
その声で父は振り向く。
父は伊吹の顔を見て、
「酷くやられたな」
と、冷淡に言われた。
「海軍将校たちはすべて釈放だ...」
「お父様......」
「なんだ?」
「なんだか、ピリピリしていませんでしたか?」
「お前は気にするな」
「何故です?」
「............」
「わたしも一人の軍人です」
「後で話す。そうムキになるな。その傷の手当てをしに行こう。名医を知っている」
「あと......。えん罪で牢に入れられた人たちを......」
「そこまで面倒は見きれん」
「お父様、お願いです」
「......あまり伊吹はお願いしてくれた事はないな...」
「そうですか?」
「ああ、しかも人様の事でお願いされるとは......。分かった。署長に話してくるから、待っていなさい」
「はい」
すると、
「伊吹っ! 大丈夫かーっ」
と、叫びながらおじがやってきた。
緑里も一緒である。
「おじさん、父の計らいで牢から出る事が出来ましたよ」
「よかった! 謙三は?」
「署長のところです」
「しっかし、酷い顔だな......」
と言った後に、
「よかったわ」
と、緑里がマスターを押し退けて、伊吹を抱き締める。
「......緑里...」
甘い香水が鼻腔に刺激された。
(ほんとうは優しいんだな)
「この時間だと......、一本ショーをやってから来ましたか?」
辛辣な声を出す。
「そりぁ...、お金も大事だからな......」
(裕太郎は、来なかったな......)
「裕太郎......?」
と、聞いてきたのは緑里だ。
(何で分かったんだろう? 緑里は......)
「あいつは......、ご令嬢と一緒だ」
と言ったのはマスター...。
「いてぇっ!」
マスターの悲鳴が何故あがったか、それは緑里がヒールで足を踏みつけたのだ。
ズキリ、
と、胸が傷んだ。
(そして、酷い顔をしているんだ。こんな顔で会ってもなぁ)
可愛らしいご令嬢の方が、きっと楽しい。
伊吹は顔の痛みよりも、胸の痛みの方がずきりとした。
父が戻ってくると、変な空気を察して、
「なんだ......? どうしたんだ?」
と、聞いてきた。
「二人して空気の読めない男ね」
と、緑里だから平気で言えた。
伊吹の父がどれだけ凄い人かも知れず...。
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