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第89話助けて貰ったのは私の方

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 因みに激しい運動と長時間のパートは禁止で鎮痛剤をもらいバストバンドをして生活、二週間ごとに定期診断をして問題なければ、早ければ四週、遅くても六週目で解放といった流れである。

「それに、私がいたらいろいろと不便でしょう?」
「何んだよ? その弱みを握った様な表情をされると無駄に緊張してしまうだろうが。言いたいことがあるのならさっさと言えよ」
「新しくできた彼女を呼べないのは不便かなと思っただけだよ」
「なっ!? ………どこで知ったか教えてもらいたいところだがどうせ元旦那経由だろう。俺の病気も気長に治るのを待ってくれるみたいだし一緒に治療をしていこうとまで言わせてしまっては断るに断れなくてな………もう良いだろこの話はっ!!出て行くのならばさっさと出ていけっ!! ほらっ!」

 そして私は高城によって半ば強引に追い出される。

 恐らく、いや間違いなく私がまだ住みたいと言えば部屋の一角をまだまだ間借させてくれたであろう。

 それこそ下手をすれば数年間は余裕で行けそうな気がするからこそ私はこのぬるま湯から早く抜け出そうと思い至ってというのもある。

 そして何だか清々しい様な一つ肩の荷が降りた様な、そんな気分で思わず肺いっぱいに空気を入れて深呼吸をして、その空気を吐き出した所で私のスマホから着信音が鳴る。

 スマホを手に取ってみると高城からメッセージが来ており『お前のおかげで女性をもう一度信頼してみようと思えた。お前自身は自分の事を高城にとってはただの厄介な住人だったと思っているかも知れないが、前に進むきっかけであった事は間違いがない。今までありがとう。そしてこれからも宜しく。何かあったら遠慮なく連絡しろよ』と書かれていた。

「ばか。助けて貰ったのは私の方なのに………ホント、お人好しなんだから」

 もしかしたら本当に高城が前へ進むきっかけをこの私如きが作れたのかも知れないし、単なるお世辞で高城の優しい嘘なのかも知れない。

 それでも、目の前景色は昨日までと違いほんの少しだけ鮮やかに映った。

 そして私はその足でスーパーへと向かう。

 皆私の事を心配してくれていた様で『大丈夫?』のオンパレードである。

 一応ご迷惑をかけた事を謝罪すると謝る必要は無いと声を揃えて言ってくれ、そして逆に私へ謝罪してくるので私からも謝る必要は無いと返す。

 因みに店長は土下座する勢いで謝ろうとしていたため、店長の土下座を阻止させるのが大変でもあった。

 そして皆と別れて店長とコレからバストバンドが取れるまでのシフト調整の話をするのだが、明らかに私に忖度しているのが丸分かりである。
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