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第36話記念日
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灰汁等取る筈もなくそのままルーを入れて煮込んで終わり、出来上がりだ。
余った時間を使いレタスとトマトで適当にサラダも作り一口つまむと今まで食べたどのサラダよりおいしく感じられた為思わず「すっごく美味しいんだけど、このサラダ」と私が言うと「じゃぁ………今日が俺達のサラダ記念日だな」なんて照れながら返す高城は幸せいっぱいと言った表情であった。
そんな感じで過ごしていると炊飯器からご飯が炊けた音が鳴り響く。
すかさず炊飯器を開けてご飯をお皿に盛ろうとするのだが、高城に腕を掴まれて止められた。
「まだ芯が残っているかもしれないからもう三十分くらい待とう」
「炊けてないの?」
「分からん。分からんから念の為に蒸らす」
「ふーん。そういうもんなんだ」
今思えば両親共働き故に自分で炊いて失敗した経験が高城にはあったのだろう。
しかし当時の私はすました返事を返しているものの、その事を料理ができて物知りであるとトキめいたものだ。
そして高城の言うとおりに三十分程蒸らした後炊飯器を開ける。
そこには私が炊いたご飯が確かにできていた。
水の分量は高城に教えてもらいながらであったとしても初めて炊飯器で炊いたご飯を見るのはそれはそれで感動的だったのを覚えている。
今見ればご飯は当たり前なのだがひび割れて砕けた形で炊けているのだが見てくれが悪かろうが味はさほど変わらない。
ご飯はご飯である。
その、私が初めて炊いたご飯へ高城と作ったカレーをかけテーブルへサラダと共に並べていく。
なんだかその一連の作業が『高城と夫婦になったらこんな感じなのかな?』なんて、らしくない事を想像してしまう。
初めて作ったカレーライスはサラダ同様に人生で一番おいしく感じられ、未だにあの頃のカレーライスを超える食べ物には出会った事が無いと思える程である。
高城は少し不満そうな表情をしており、高城曰くこの事が切っ掛けで料理にのめり始めたと後に語るのだが、誰が何と言おうと今日この日食べたカレーライスは最高においしかったと私が思っているのだからこのカレーライスは最高においしいカレーライスなのだ。
そして私たちはカレーライスとサラダを食べ、じゃんけんで負けた高城が食器を洗い、私が拭いて片づけていく。
その片付けの途中から、また私たちを取りまく空気はぎこちない物へとなっていき、自然と互いに口数が減っていく。
互いに口には出さないもののこの後はやるのであろうという緊張感を互いに感じていた。
余った時間を使いレタスとトマトで適当にサラダも作り一口つまむと今まで食べたどのサラダよりおいしく感じられた為思わず「すっごく美味しいんだけど、このサラダ」と私が言うと「じゃぁ………今日が俺達のサラダ記念日だな」なんて照れながら返す高城は幸せいっぱいと言った表情であった。
そんな感じで過ごしていると炊飯器からご飯が炊けた音が鳴り響く。
すかさず炊飯器を開けてご飯をお皿に盛ろうとするのだが、高城に腕を掴まれて止められた。
「まだ芯が残っているかもしれないからもう三十分くらい待とう」
「炊けてないの?」
「分からん。分からんから念の為に蒸らす」
「ふーん。そういうもんなんだ」
今思えば両親共働き故に自分で炊いて失敗した経験が高城にはあったのだろう。
しかし当時の私はすました返事を返しているものの、その事を料理ができて物知りであるとトキめいたものだ。
そして高城の言うとおりに三十分程蒸らした後炊飯器を開ける。
そこには私が炊いたご飯が確かにできていた。
水の分量は高城に教えてもらいながらであったとしても初めて炊飯器で炊いたご飯を見るのはそれはそれで感動的だったのを覚えている。
今見ればご飯は当たり前なのだがひび割れて砕けた形で炊けているのだが見てくれが悪かろうが味はさほど変わらない。
ご飯はご飯である。
その、私が初めて炊いたご飯へ高城と作ったカレーをかけテーブルへサラダと共に並べていく。
なんだかその一連の作業が『高城と夫婦になったらこんな感じなのかな?』なんて、らしくない事を想像してしまう。
初めて作ったカレーライスはサラダ同様に人生で一番おいしく感じられ、未だにあの頃のカレーライスを超える食べ物には出会った事が無いと思える程である。
高城は少し不満そうな表情をしており、高城曰くこの事が切っ掛けで料理にのめり始めたと後に語るのだが、誰が何と言おうと今日この日食べたカレーライスは最高においしかったと私が思っているのだからこのカレーライスは最高においしいカレーライスなのだ。
そして私たちはカレーライスとサラダを食べ、じゃんけんで負けた高城が食器を洗い、私が拭いて片づけていく。
その片付けの途中から、また私たちを取りまく空気はぎこちない物へとなっていき、自然と互いに口数が減っていく。
互いに口には出さないもののこの後はやるのであろうという緊張感を互いに感じていた。
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