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第33話役立たずなのは後輩のせいではない

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「そりゃそうですよ高城先輩。なんてたって私は人見知りですから素が出るまではなかなか時間がかかってハムスターの様に怯える事しかできないんですよぇー。ま、ハムスターであろうと猫ちゃんであろうと可愛い動物には変わりないんで、高城先輩が私の事を可愛いと思ってくれているという事が分かっただけでも収穫ですよー。えへへへへ」
「何を言ってんだか。っていうかお前酔うの早すぎないか?流石に」

 そして後輩はそういうとご機嫌なのを隠そうともせず「えへえへ」とニヤついては偶に笑いだす。

 流石に生ビール中ジョッキの半分しか開けていない状態でこれでは、やはり後輩は実はアルコールは弱いのではないか?と思い始める。

「酔ってませーんっ! 店主っ!! 生ビールもう一丁っ!!」
「おい流石に止めとけって。洒落にならなくなるぞ」

 しかし心配し始める俺の気持ちなど知りませんとばかりに後輩はジョッキの残りを一気に飲み干すと新たに生ビールを頼み始めるではないか。

「良いから良いから。私は今物凄ーーーく気分がいいのれすっ! それは何れか高城には分りまるかぁ?」
「いや、気分が良いのは見てわかるが理由は分からないし呂律が怪しくなってきているからもう次で一旦止めておけよな?」

 アルコールが回り始めて機嫌が良いのは分かるのだが自分で帰れなくなるのはまだ良いのだが嘔吐されると後々面倒事になりかねないので流石にここらへんで止めに入る。

 自分の身体に嘔吐したりされたら、そんな人物をタクシーに乗せる訳もいかない為流石の俺も路上で捨てて行こうかと思ってしまう、というか以前友人を捨てて行ったしな。

 まぁ、今は冬の頭で夜が冷える上に後輩は女性である為流石に捨てていく事はしないのだが、嫌なものは嫌だし面倒臭いものは面倒臭い。

「良いじゃないれすか今日くらい、高城ぉー」
「高城先輩、または高城さんな」
「私異性がいる場所でお酒をぉー飲むのは今日が初めてなんれすからぁー」

 そう嬉しそうに言う彼女がどういう意図で今日酒を飲み、その事を俺にわざわざ言ってくるのか。

 流石にここまで来て知らぬ存ぜぬは厳しいだろう。

 そう思うと俺の心臓は緊張から急に激しく鼓動をし始める。

 その鼓動の高鳴りが嬉しさやこれから起こるであろう期待値からくるものではなく過去の記憶からくるものであるのだから、本当に呪いだと俺は思う。

 そして俺はその込み上げてくる感情を忘れようと酒を胃に流し込むのであった。



 そのあとは流れのままに後輩とホテルへ行き、一夜を過ごすのだが、申し訳なさそうな後輩の顔だけはやたら鮮明に覚えていたのが印象的であった。

 役立たずなのは後輩のせいではないのに。
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