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第16話あんな経験は最初で最後

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 あれは私の記憶の中で一番輝いている記憶である。

「あー……一緒にカレー作ったあの日か」
「そ。そして初めて繋がった日」

 当時私は冬休みという事もあり家でゴロゴロしていた。

 そんな時に高城から『今日良かった俺ん家で一緒にカレー作って食わない?明日の夜まで両親帰ってこないから人見知りでも大丈夫』というメールが来て、下心を隠し切れていないその内容が何だかおかしくて、可愛くて、私は友達の家に泊まりに行くと嘘をつき、高城と一緒にカレーとサラダを作りグダグダな初めてを経験した。

 でも、カレーは人生で一番楽しかったし初めてもあれはあれで初めて故のグダグダが今は逆に眩しいくらい輝いて見える。

 あんな経験は最初で最後であろう。

「高城のメールは下心丸出しだし全然その下心を隠せて無いし、カレー作りの時もずっとそわそわするし、グダグダだし痛いし」
「………懐かしいな」
「でも、今の私にとってはあの日の全てが眩しく見える」

 あの頃がまさに私にとっての青春そのものだったんだろう。

「まぁ、今が輝いているかどうかなんて未来で過去として俯瞰で見ないと案外分からない物だしな。当時は大変だったとしても振り返れば案外輝いて見える事もあるしなぁ」
「例えば」
「そうだな、部活とかそうだな。当時はキツくて逃げ出したい、辞めたいと毎日思ってたけど………今思えば楽しかったんだと思うし輝いて見える。もう二度とあんなに没頭できる何かを見つける事はできないんじゃないかなとも同時に思うな。さ、早く飯食って動物園行こうか」
「………わざと話題を変えたわね」
「俺にとっては恥ずかしい過去でもあるんだ。察してくれよ」
「知ってた」
「お前なぁ」

 そして私達は二人で当時の様に笑いながら朝食を食べ始める。

「あぁーっ! もうっ! やけに静かだと思ったら納豆を手で捏ねて遊んじゃダメって言ってるでしょうマナっ!」
「ねばねばっ! まま、ねばねばーっ!」
「分かったからっ! ネバネバなのは分かったからその最早凶器とかした手で髪を触っちゃダメっ! ママの髪はもっとダメだからっ!!」





「どーぶつえんっ! どーぶつえんっ!」
「久しぶりの動物園だねマナ。どの動物さんを見に行くのかなー?」
「うーんと、すずめっ!」
「す、雀かぁー。雀さんは家でもいっぱい見えるでしょ? 他にはないのかなー?」
「ほかにはわー………ききんさんっ!!」
「キリンさんかぁー。今日は泣かない様にしないとねー」
「まな、泣いた事無いよ?ききんさん、好きだもん」
「そっかー、偉いねー」
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