51 / 56
第51話 もう、手遅れだろう
しおりを挟む「ひぃいっ!!」
「まだ自分から悪事を包み隠さずに言ってくれたのならばどうにかなったのかも知れないというのに、最後まで隠し通そうとするそのくさった性根ではもう、手遅れだろう……」
そして、ラインハルト陛下の圧にシュバルツ殿下は崩れ落ち、尻餅をついた状態で後ずさる。
そんなシュバルツ殿下を見ながらラインハルト陛下はどこか悲しそうな声音で自らの子供に『手遅れ』だと言い放つではないか。
「ちょ、ちょっと待ってください父上っ!!」
その陛下の言った『手遅れ』という意味を流石のシュバルツ殿下も何かを感じ取ったのか、縋りつこうとするも、その手を払いのけられる。
その時のラインハルト陛下の表情は、一人の父親の表情から一国の王として表情へと切り替わっていた。
「誰かこの失礼極まりない平民を摘まみだせ」
「ち、父上っ!? やめろっ!! 離せっ!! 俺は王族であり王位継承権第一位の男だぞっ!! やめろと言っているだろうがっ!! 近衛兵風情が無礼だぞっ!!」
「誰が王族であると、王位継承権を持っていると名乗って良いと言った? 余は言ったはずである。『お主の望み通り廃嫡し、平民に落としてやる』と。当然王家の名を名乗る事も許さぬ。お主が名乗って良いのは『シュバルツ』という名前のみであり、これからは王族でも何でもなくただのシュバルツとして生きていく事だな」
「そ、そんな……父上……っ」
「次許可なく王族である等と言った戯言を口にした瞬間この平民の首を不敬罪として切り落としてかまわん。とうぜん抵抗するのならば殴ってでも城の外に摘まみだせ。とうぜんそこのアイリスという女性も同様にだ」
国王陛下の命令によりシュバルツとアイリスは近衛兵によって城の外に摘まみだされるのだが、ヒステリックに叫ぶアイリスと違いさすがのシュバルツも実の父親からあそこまで言われては反抗する気も起きなかったらしく大人しく摘まみだされて行く。
「では、気を取り直してパーティーを再開しようと思うのだが、君たちに紹介したい者たちがいるので紹介しよう。余の親友である四宮総一郎、そしてその妻であるシャーリーを紹介しよう」
そしてわたくしとソウイチロウ様は国王陛下に紹介され、それと同時にソウイチロウ様の悪い噂は本日消え去るであろう。
それにしても、国王陛下が認めたソウイチロウ様の妻がわたくしであるという事が周知された事の方がわたくしにとっては大きかったと言えよう。
流石のソウイチロウ様も、もうわたくしの事を『近所に住む女の子』の目線ではなくて『妻』として意識してくれる機会も増えてくるだろう。
そして、国王陛下から紹介された後わたくしたち夫婦は貴族たちへ挨拶まわりをしながら酒のつまみ、特にビールに良く合うと『わさびーふ』を配り歩くのであった。
196
お気に入りに追加
801
あなたにおすすめの小説
あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
私は何も知らなかった
まるまる⭐️
恋愛
「ディアーナ、お前との婚約を解消する。恨むんならお前の存在を最後まで認めなかったお前の祖父シナールを恨むんだな」 母を失ったばかりの私は、突然王太子殿下から婚約の解消を告げられた。
失意の中屋敷に戻ると其処には、見知らぬ女性と父によく似た男の子…。「今日からお前の母親となるバーバラと弟のエクメットだ」父は女性の肩を抱きながら、嬉しそうに2人を紹介した。え?まだお母様が亡くなったばかりなのに?お父様とお母様は深く愛し合っていたんじゃ無かったの?だからこそお母様は家族も地位も全てを捨ててお父様と駆け落ちまでしたのに…。
弟の存在から、父が母の存命中から不貞を働いていたのは明らかだ。
生まれて初めて父に反抗し、屋敷を追い出された私は街を彷徨い、そこで見知らぬ男達に攫われる。部屋に閉じ込められ絶望した私の前に現れたのは、私に婚約解消を告げたはずの王太子殿下だった…。
侯爵夫人は子育て要員でした。
シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。
楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。
初恋も一瞬でさめたわ。
まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。
離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。
近衛騎士、聖女の姉に身悶える
饕餮
恋愛
世界は闇に覆われ、人々は魔獣との戦いに日々疲弊しはじめていた。そんなある日、女神から神託が降る──『聖女の召喚を許可します』と。
そして聖女召喚はなされたが、召喚されたのは聖女を含めた四人。
近衛騎士はその中の一人と目が合い、その笑顔と小動物のような行動に見惚れ、一家四人やもう一人の仲間と浄化や魔獣討伐の旅をしながら、色んな話をする中でどんどん惹かれていき、その言動に身悶える──。
強面で右側の顔に傷がある近衛騎士のエルンスト・クライネル(38)が、童顔で聖女の姉の彩芽・鳴嶋・サザーランド(27)を、旅の途中や妻にした後の言動に悶えて我慢できず、ひたすら愛でたり愛撫したりとイチャコラするだけの話である。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
公爵家の次男は北の辺境に帰りたい
あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。
8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。
序盤はBL要素薄め。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる