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第41話 呆けた表情が見えた
しおりを挟むそして、シュバルツ殿下とアイリスに、いやシュバルツ殿下とアイリスだけではなく、パーティーへ訪れた貴族全員この馬車と家が合体した乗り物で二泊して来たと言っても間違いなく信じてくれないだろう。
それほどまでに王国と『にっぽん』との技術力に開きがあるということなのだろう。
実際にわたくしも『にっぽん』へと訪れた時は目に入って来るもの全てに驚いていた程である。
飛ぶようなスピードで走る馬無し馬車、空高くまで伸びる建物、夜でも煌々と輝く街並み。
しかも『にっぽん』にはそれだけではなく空を飛ぶ鉄の乗り物まであるそうではないか。
もしわたくしがシノミヤ家に嫁ぐ前であったら『空飛ぶ鉄の乗り物』などまず間違いなく信じなかったであろうが、今のわたくしはそれを聞いて『にっぽん』ならあり得ると納得してしまうほど、わたくしの中の常識は見事に破壊されてしまった。
そして今度はわたくしではなく、わたくしへ無実の罪で婚約破棄を突きつけたシュバルツ殿下が『りむじん』を見て驚く番である。
わたくしとしてはもっと度肝を抜かしてやりたいとは思うものの、ソウイチロウ様曰く国王陛下が何やら当日にサプライズを用意しているようなので、目立ちすぎは良くないだろう。
その点も考慮した場合は馬無し馬車である『りむじん』が丁度いいくらいである。
そんな事を思いながらわたくしはソウイチロウ様と同じ『りむじん』へと乗り込むのであった。
◆
王都を走る二台の黒光りする『りむじん』に平民だけではなく貴族もくぎ付けであった。
そして当然シュバルツ殿下とアイリスも含まれており、わたくしとソウイチロウ様が乗っている『りむじん』を物珍し気に眺めているのが『りむじん』の中から窺える事ができる。
ちなみにこの『りむじん』は中からは外が見えるのだが、外からは『りむじん』の中を覗く事はできなくなっている。
初めは何らかの付与魔法かと思いソウイチロウ様へ聞いてみると、どうやら魔法ではないらしいのだけれども、分かったのはそれだけで結局どうやって作ったのか余計に分からなくなってしまった。
しかしながらそのお陰でシュバルツ殿下の呆けた表情が見えたので、作り方は知らなくてもそれだけで大満足と言えよう。
知ったところで作れるわけでもないですしね。
ちなみにこの演出の為に貴族は一度皆が揃うまでは外で待機という事になっていたようで、ソウイチロウ様と国王陛下が楽しそうに悪知恵を働かせているのが容易に想像できてしまう。
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