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第65話 他力本願

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 そして話を振られた皇帝陛下は招集したメンバーを一度見渡すと口を開く。

「そなたらにはそこの魔族であるマオを魔王の所まで護衛をする為に招集したに過ぎぬ。極力対魔王戦で全力が出せる様にこの者の魔力や体力を温存させよ」

 皇帝陛下がそう言った瞬間、俺でも分かるくらい空気が変わったのが肌で感じ取ることが出来た。

 魔族である魔王を倒しに行く為に招集されたと思っていたにも関わらず皇帝陛下は魔族である俺の護衛を魔王がいる所までしろというのだから殺気が周囲に満ちるのも致し方ないだろう。

 しかもその護衛する魔族は彼らからすればポットでの新顔であり強いかどうかも分からない様な青年風のケツが青そうなクソガキ、と思われていても俺は何ら不思議に思わない。

 寧ろそう思っているのが空気からも感じ取ることが出来る。

「我も歳は取りたくない物であるのう。ちと耳が遠くなっていたのか聞き取れなかったみたいじゃ。トリステン皇帝陛下、すまぬがもう一度言ってはくれぬか?」
「お前程の者が今更耳が遠くなったなどとつまらない冗談しか言えないのであれば今回のメンバーからは外させてもらう───と言いたい所ではあるもののいきなりこんな事を言われては信じろと言うのも酷であろう。そうだな、もう少し詳しく話すとすればここに居る魔族の青年は、王国にいる魔王とは別の国を納めている魔王である。そして、お主ら全員がかりで戦ったとしても間違いなくこの者の方が強い。それも圧倒的であると我は判断したからである。そうだ、ちょうど良い。今この場で本物の魔王の強さを肌で感じて、何ならその伸びきった鼻を折ってもらってみてはどうかな?」

 そして全力で煽りにかかる皇帝陛下。

 この場合この者達の鼻をへし折る役目はどう考えても俺ではないか。

 コレぞ一番嫌な他力本願の他力部分として頼られた事は産まれて初めてである。

 寧ろここまでやり切られると逆に清々しいと思えて来るのだから不思議だ。

「ほーう、そこまで言われちゃ黙ってはいられないよなっ!」
「あら、まさか脳味噌筋肉であるあなたと同じ考えに至る日が来るとは流石の私も予測できませんでしたわねっ!」

 そして先程まで言い争っていた二人の掛け声と共に招集された全員が一斉に襲い掛かって来る。

 まず手始めに脳筋男が突っ込んでくると大剣を振り下ろしてくるので身体を少し横にずらして避けながら懐に潜り込んで鳩尾目掛けてぶん殴り、くの字で折れ曲がる脳筋をそのまま盾にして妖艶な女性が放つ炎魔術を防ぎつつ水魔術を行使してそれによって一気に蒸発して出来た水蒸気で身を隠し後ろから手刀で妖艶な女性の意識を刈り取る。
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