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第61話 悪い奴がいれば良い奴もいる

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「………あっ、そうですね、確かに。私の考えは魔族である魔王からすれば非常に失礼な事であると理解しました。この様な事で貴重な時間を使ってしまい申し訳ございません」
「よいよい。つい自分達の常識で考えてしまうのも分かるというもの。我々も皆一度は通った道だ。君はまだ家督を継いだばかりの新人であるからミスが許される今のうちに出来るだけミスすれば良い」

 そしてルージは自らの発言の過ちに気付き直様ここにいる者達の時間えお奪ってしまった事を謝罪し、ローレンが若いうちは間違えるものだから問題ないと優しく返す。

 しかしだからと言って当然ながら事態は何も変わっていない為再度沈黙がやって来る。

「聖女は現れたが勇者は現れない………か。どの文献を漁っても今回以上の出来事は無いと断言出来る程には最悪の事態であるな」

 誰かがそうポツリと呟き、それを否定する者は居ない。

 そんな中、一人の男性が手を上げており皆視線を向ける。

「発言、宜しいでしょうか?」
「構わぬ構わぬ。新参者だと発言件が無いわけでもない。寧ろこんな状況だからこそ何か案を思いつければ、それが例え間違った考えであったとしてもどんどん発言していってもらっても構わぬ」

 その者は話の中心に出て来る片方の魔王と共にこの帝国へ寝返ったランゲージ家その当主であり、皇帝陛下が寧ろ積極的に発言しても良いと許可を出す。

「ありがとうございます」

 そして件のランゲージ家当主は皇帝陛下へ感謝の言葉を告げると喋り出す。

「案外マオさん、この場合今現在帝国に来ている魔王へ王国に現れた魔族と魔獣、そして魔王の討伐を依頼しても良いのでは? と私も思います。と、言うのも恐らく私の勘が余程狂っていない限り引き受けてくれそうな気がするのです。何と言って良いのか、そうですね………マオさんに関しては同族であろうと無かろうと道徳を無視した存在は良しとしない人物だと思います。先程マオさんに王国の魔王討伐を依頼するのは同族殺しを依頼という話が出て来ましたが、我々人間でも同族を殺す事はありますよね。例えば戦争は勿論負の感情で殺害もするし快楽の為に殺したりもする。そして悪を裁くという理由でも殺す時があります。魔族も人間同様に道徳という概念があり道を外す者を裁くという行いをしていてもおかしくないかと」

 そう一気にランゲージ家当主は意見を申すと、それを聞き終えた者達はそもそも魔族=悪だと決め付けるのでは無く魔族も人間も悪い奴がいれば良い奴もいるという考え方の方が自然なのではないかと納得してしまう。
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