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第49話 藁をも縋る気持ちで

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 ただ一緒に歩くだけ。

 ただそれだけの事でも物凄く幸せだと思てしまう。

 一緒に訪れたレストランや洋服店、古書店や演劇場などなど行く店行く店それら何てことない普通の店であるのだがそれら全てがキラキラと世界が輝いて見える。

 そして気が付けば夜も更け、マオも魔族の姿からチビドラゴンへと姿を変えて周囲にドラゴンの姿が見られる前に手提げのバスケットの中へと身を隠す。

 楽しい時間はいつもあっという間に終わるものだと、まだ興奮収まらないわたくしはそう思うのであった。



『魔王召喚』

 その文字を見て一瞬怯むもあのいけ好かないシャルロットのドラゴンを上回るには最早これしかないと藁をも縋る気持ちで読み進めていく。

 必要なのは他の召喚術の基本的には同じであるのだが、ただ一つ違うのは供物が自身の魔力ではなく自身の血液であるという事くらいだ。

 どれ程の量が必要であるかは書いていないのだが召喚できるまで捧げればいい。

 これで万が一死んだとしてもシャルロットに一生見下されて生きていくなど我慢ならない為死ぬのなら死ぬで一向に構わない。

 そして私は床に直接、魔術陣をそれ専用のペンに魔力を込めて書いていく。

 こんな事で本当に魔王等という者が召喚できるのか、と疑いたくなる気持ちを押し殺して魔術陣を完成させると私は持っていたナイフで手首を一気に切り裂き、血を魔術陣へと注いでいく。

 そしてある程度注ぎ回復魔術で傷を癒すと詠唱し始める。

 変化は詠唱し始めてから直ぐに表れ、魔術陣が青白く光り輝き始め、詠唱し終えた瞬間大量の黒い煙が魔術陣から溢れ出てくるではないか。

「何なのよ一体っ!?黒い煙を出すだけの魔術陣だったら本気で泣くわよっ!!」

 もしかしてデマなのではないか?、騙されたのでは?、そんな危険な魔術書がそもそもこんな誰でも閲覧できる場所にある筈無かったのよ、等と後悔し始めたその時、黒い煙の奥に何かがいる気配を感じ取る。

「貴様が我を召喚した小娘であるか?」
「ひっ!?」

 そして黒い煙の奥にいる者は、自分を召喚したのは私であるかと問いながらこちらへと歩いてくる。

 黒い煙からでたその者は人間とはかけ離れており、黒く禍々しい山羊角に山羊と人間と中間の様な顔に真っ黒い魔眼、蝙蝠を思わせる羽に山羊の様な足を持っていた。

「もう一度問う。貴様が我を召喚した小娘であるか?」

 そもそもこの声だってどこから発しているのかすら分からない。

 口そのものが動いていないのだ。

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