48 / 99
第48話 恋を知って、その恋を謳歌してい
しおりを挟む
そう言うとマオはわたくしの頭を空いている右手でガシガシと撫でて来るのだが、左手は手を繋いでいる状態なので想像以上に身体が密着して心臓が跳ね上がる。
正直言ってずるい。
コレをされると何でも有耶無耶にされそうだ。
「まぁ、そんな事は俺達が心配する事じゃないから悩んだって仕方ない事だな。そんな事よりも今日はぱーと遊んで行こうぜ。俺こういう所、中世ヨーロッパ風の異世界にある城下町風の場所一度で良いから訪れて見たかったんだよ。この世界ではなんて事ない事だと思うかもしれないが、俺にとっては昔から夢見ていた事だ」
マオのその話を聞いて、わたくしはとても嬉しいと思ってしまう。
「わ、わたくしも………」
「ん?」
「わたくしも同じですわ」
何故ならマオもわたくしと同じ事を夢見ていたという事が、ただそれだけの事が無性に嬉しいと思ってしまう。
「小さい頃から馬車の向こうから見える景色に笑顔の子供達、聞こえて来る楽しそうな笑い声、それら全てが羨ましくて仕方がなかったんですの。その気持ちに蓋をして、気付かないフリをして、公爵家の娘として、未来の王妃として今まで過ごして来ましたので、本当は今こうしてマオと場所と国は違えど帝都の城下町に訪れている事がまるで夢の様ですわ」
そしてよくお父様とお母様がわたくしがマオが居るとはいえ護衛もつけずに城下町に訪れる事を許可したものだと、心の中で感謝する。
「そうか、それは良かったな」
「はいっ!」
こうしてわたくしの初めて体験する城下町へとマオと一緒に手を繋ぎ向かう。
それにしても、とわたくしは思う。
何故かマオの前だと上手く自分をコントロールが出来なくなるのだ。
時に上がってしまい空回りしたり、時にまるで幼少期の自分の戻ったかの様に素直になったり、時に恥ずかしくて自分の気持ちを伝える事ができなかったりetc、etc、etc
それと同時にそんな目まぐるしく変化していく感情は、それはそれで心地よくもっと感じていたいと思ってしまう。
好きな異性と手を繋ぎ城下町の石畳で整備された道を歩いている。
胸が踊らない訳がない。
あぁ、わたくしは今まさに恋を知って、その恋を謳歌しているのだ。
メアリーにカイザル殿下の婚約者の座を奪われたわたくしは、確かに人生のドン底であった。
しかしメアリーによりカイザル殿下の婚約者の座を奪われなければわたくしはずっと、おそらく死ぬまで恋を知らずに生きて行くのであろう事が、恋を知ったわたくしには分かってしまう。
正直言ってずるい。
コレをされると何でも有耶無耶にされそうだ。
「まぁ、そんな事は俺達が心配する事じゃないから悩んだって仕方ない事だな。そんな事よりも今日はぱーと遊んで行こうぜ。俺こういう所、中世ヨーロッパ風の異世界にある城下町風の場所一度で良いから訪れて見たかったんだよ。この世界ではなんて事ない事だと思うかもしれないが、俺にとっては昔から夢見ていた事だ」
マオのその話を聞いて、わたくしはとても嬉しいと思ってしまう。
「わ、わたくしも………」
「ん?」
「わたくしも同じですわ」
何故ならマオもわたくしと同じ事を夢見ていたという事が、ただそれだけの事が無性に嬉しいと思ってしまう。
「小さい頃から馬車の向こうから見える景色に笑顔の子供達、聞こえて来る楽しそうな笑い声、それら全てが羨ましくて仕方がなかったんですの。その気持ちに蓋をして、気付かないフリをして、公爵家の娘として、未来の王妃として今まで過ごして来ましたので、本当は今こうしてマオと場所と国は違えど帝都の城下町に訪れている事がまるで夢の様ですわ」
そしてよくお父様とお母様がわたくしがマオが居るとはいえ護衛もつけずに城下町に訪れる事を許可したものだと、心の中で感謝する。
「そうか、それは良かったな」
「はいっ!」
こうしてわたくしの初めて体験する城下町へとマオと一緒に手を繋ぎ向かう。
それにしても、とわたくしは思う。
何故かマオの前だと上手く自分をコントロールが出来なくなるのだ。
時に上がってしまい空回りしたり、時にまるで幼少期の自分の戻ったかの様に素直になったり、時に恥ずかしくて自分の気持ちを伝える事ができなかったりetc、etc、etc
それと同時にそんな目まぐるしく変化していく感情は、それはそれで心地よくもっと感じていたいと思ってしまう。
好きな異性と手を繋ぎ城下町の石畳で整備された道を歩いている。
胸が踊らない訳がない。
あぁ、わたくしは今まさに恋を知って、その恋を謳歌しているのだ。
メアリーにカイザル殿下の婚約者の座を奪われたわたくしは、確かに人生のドン底であった。
しかしメアリーによりカイザル殿下の婚約者の座を奪われなければわたくしはずっと、おそらく死ぬまで恋を知らずに生きて行くのであろう事が、恋を知ったわたくしには分かってしまう。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
【完結】悪役令嬢に転生しましたが、聞いてた話と違います
おのまとぺ
ファンタジー
ふと気付けば、暗記するほど読み込んだ恋愛小説の世界に転生していた。しかし、成り代わったのは愛されヒロインではなく、悪質な嫌がらせでヒロインを苦しめる悪役令嬢アリシア・ネイブリー。三日後に控える断罪イベントを回避するために逃亡を決意するも、あら…?なんだか話と違う?
次々に舞い込む真実の中で最後に選ぶ選択は?
そして、明らかになる“悪役令嬢”アリシアの想いとは?
◆もふもふな魔獣と共に逃避行する話
◇ご都合主義な設定です
◇実在しないどこかの世界です
◇恋愛はなかなか始まりません
◇設定は作者の頭と同じぐらいゆるゆるなので、もしも穴を見つけたらパンクする前に教えてくださると嬉しいです
📣ファンタジー小説大賞エントリー中
▼R15(流血などあり)
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる