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第48話 恋を知って、その恋を謳歌してい

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 そう言うとマオはわたくしの頭を空いている右手でガシガシと撫でて来るのだが、左手は手を繋いでいる状態なので想像以上に身体が密着して心臓が跳ね上がる。

 正直言ってずるい。

 コレをされると何でも有耶無耶にされそうだ。

「まぁ、そんな事は俺達が心配する事じゃないから悩んだって仕方ない事だな。そんな事よりも今日はぱーと遊んで行こうぜ。俺こういう所、中世ヨーロッパ風の異世界にある城下町風の場所一度で良いから訪れて見たかったんだよ。この世界ではなんて事ない事だと思うかもしれないが、俺にとっては昔から夢見ていた事だ」

 マオのその話を聞いて、わたくしはとても嬉しいと思ってしまう。

「わ、わたくしも………」
「ん?」
「わたくしも同じですわ」

 何故ならマオもわたくしと同じ事を夢見ていたという事が、ただそれだけの事が無性に嬉しいと思ってしまう。

「小さい頃から馬車の向こうから見える景色に笑顔の子供達、聞こえて来る楽しそうな笑い声、それら全てが羨ましくて仕方がなかったんですの。その気持ちに蓋をして、気付かないフリをして、公爵家の娘として、未来の王妃として今まで過ごして来ましたので、本当は今こうしてマオと場所と国は違えど帝都の城下町に訪れている事がまるで夢の様ですわ」

 そしてよくお父様とお母様がわたくしがマオが居るとはいえ護衛もつけずに城下町に訪れる事を許可したものだと、心の中で感謝する。

「そうか、それは良かったな」
「はいっ!」

 こうしてわたくしの初めて体験する城下町へとマオと一緒に手を繋ぎ向かう。

 それにしても、とわたくしは思う。

 何故かマオの前だと上手く自分をコントロールが出来なくなるのだ。

 時に上がってしまい空回りしたり、時にまるで幼少期の自分の戻ったかの様に素直になったり、時に恥ずかしくて自分の気持ちを伝える事ができなかったりetc、etc、etc

 それと同時にそんな目まぐるしく変化していく感情は、それはそれで心地よくもっと感じていたいと思ってしまう。

 好きな異性と手を繋ぎ城下町の石畳で整備された道を歩いている。

 胸が踊らない訳がない。

 あぁ、わたくしは今まさに恋を知って、その恋を謳歌しているのだ。

 メアリーにカイザル殿下の婚約者の座を奪われたわたくしは、確かに人生のドン底であった。

 しかしメアリーによりカイザル殿下の婚約者の座を奪われなければわたくしはずっと、おそらく死ぬまで恋を知らずに生きて行くのであろう事が、恋を知ったわたくしには分かってしまう。
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