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第44話 頭が高い
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「で、そなたらは帝国の寝返ったとして何を与える事ができる? 領地をそのまま帝国へ献上し、その領地でもって爵位が欲しいと言うのは些か虫が良すぎる話ではないか?」
今現在、わたくし達ランゲージ家は皇帝陛下の元へ謁見させて頂いている。
しかしながら謁見といえども頭を上げる事も出来ず頭を垂れた状態かつ、皇帝陛下は自らの言葉を側にいる側仕えに伝えて、その言葉を側仕えがわたくし達に伝えて来る。
わたくし達は白銀に輝くドラゴンに運んでここまで来た事を見れば、それだけでどれだけの恩恵が帝国へともたらせる事ができるか直ぐにでも分かりそうなものなのだが事はそう単純では無いらしい。
「それは───」
「いちいちまどろこっしい真似をして無駄な時間だとは思わないのか? なぁ、トリステン皇帝陛下」
「曲者っ!! 曲者だっ!!」
「一体どこから現れたっ!?」
そして皇帝陛下の言葉にお父様が返答しようとしたその時、バスケットに入れていたマオがチビドラゴンの姿で飛び出したと思ったら魔族である本来の姿へとわたくしの断りも無く変身すると無礼も無礼、仁王立ちで皇帝陛下を見上げ、誰の許可も得ていないにも関わらず話始める。
「何者だっ! 貴様っ!?」
「ま、魔族が何でこんな所にっ!?」
その異常事態に近衛兵が集まり出しマオを囲み始め、他の貴族達はマオのその姿を見て逃げ出そうとする者まで現れる。
この騒動で思わず頭を上げているわたくしの事など誰も気付いて居ない程の慌てようである。
「頭が高い。頭を垂れよ」
そして気が付くとわたくし達ランゲージ家以外の者がマオのその言葉一つで頭を垂れる。
その魔術か何か分からない能力もさることながら、問題は先程のマオの一言で皇帝陛下まで椅子から転げ落ち頭を垂れている事である。
「無礼もここまで来れば同じく無礼でもって倍返しされても文句は無いよな?」
「ぶ、無礼である………と?」
「ああそうだ。俺はとある世界の魔王という称号を持っている。いわばその国では魔王すなわち国王でもあるという事だ。一国の国王が遠路遥々手紙まで出し下手にして来たのは貴国に敬意を払っていたからに過ぎない。断じて、そう断じて見下される為にしていたわけではない。そして、そちらがその様な態度でこの俺を見下すというのであれば、倍返しされても問題は無いよな?何なら今ここで皇帝陛下の首を取って乗っ取ろうか?」
そして辺りは静まりかえり、皆恐怖で指先一つすら動かせないみたいである。
因みにランゲージ家は別の意味でこの状況を見て恐怖を感じているのだが。
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