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第18話 噛ませ犬の役の方が全然マシ

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「そんなっ酷いですっ! 私はシャルロットさんとお友達になりたいと思っていただけなのにっ!」
「ふん、それが貴様の悪い所だと何故分からない? そんなんだから貴様はこの俺に捨てられたのだと何故分からない? まぁ、婚約破棄をされた翌日から何事も無かったかの如くこの魔術学園に登校している程、人の痛みや気持ちには無関心だったという事なのだろう。だからお前は婚約破棄をされても平気なんだよ。普通であれば自分が至らない所があるからこそ婚約破棄されたのならばそこを直して婚約破棄されたこの俺にもう一度認めて貰おうと努力するのが当たり前なのではないのか?そんな事すら分からないから聖女メアリーの優しさにも気付けずにいるのだろう。このクズが」
「カイザル殿下、良いのです。悪いのはシャルロットさんの気持ちを慮る事が出来なかった私が悪いのですから。しかし、私の為にこうして怒ってくださるカイザル殿下も、そして婚約破棄をしたお相手であってもその過ちを指摘してカイザル殿下も、私は大好きですっ!」

 わたくしは一体何を見せられているのだろう?

 ただ、目の前の聖女メアリーとカイザル殿下が二人の世界に入り浸る為にわたくしを利用している事は理解出来た。

 結局、この者達にとってわたくしという存在は二人の世界へと更に浸れる為のスパイスであってそれ以上でもそれ以下でも無い。

 つまるところわたくしの気持ち等どうだって良いのだ。

 わたくしが今の環境で自分の感情とは関係なく勝手に涙が急に出てきそうな程のストレスを感じている事も、悲しみで押し潰されそうになっている事も、お友達だと思っていたもの達は全てわたくしではなく公爵の娘だから使えそうだからと側にいただけであったと知り虚無感に襲われた事も、どれもこれもこの者達にはどうだって良いのだ。

 むしろわたくしがこの者達の世界観にとっては悪役を演じる令嬢という方が都合の良いのだ。

悪役令嬢ヒール役がいれば、そしてその悪役令嬢ヒール役が目立てば目立つ程彼らの中の善だと思っている感情が輝くのだ。

 だからこそ、この者達にとってわたくしの価値観が真っ当だとしてしまうと、ごく普通の娘だとしてしまうと世界がひっくり返ってしまい自分達が悪役になりかねない為この様に周囲には慈善活動よろしく悪い娘とそれに挫けず手を差し伸べようとする聖女メアリーにカイザル殿下というポーズを取っているのだ。

 しかも本人達は気付いておらず、本気でそう思っている所がたちが悪い。

 そんな事ならばまだ噛ませ犬の役の方が全然マシだと言えよう。
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