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第11話 わたくしの目標

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「何を呆けているのですか? 私がここまで分かりやすく頭の弱い人でも理解出来る様に噛み砕いて説明してあげたにも関わらず、カイザル殿下に感謝の一言もないのですか?普通であればここまで不敬な態度を取った場合は打ち首でもおかしく無いにも関わらず未だに貴女が生きていられるのは誰のおかげですか」
「………」

 一瞬わたくしは目の前の聖女メアリーが何を言っているのか理解出来なかった。

 それ程までに意味が分からない事をまるでご高説を述べているかの如く偉そうな態度でわたくしに向けて人言の様な事を発するではないか。

 どだい納得出来るものでは決してない。

「誰のお陰かと言っているのです。その耳は飾りでしょうか?シャルロットさん」
「カ、カイザル殿下のお陰、で………す」

 しかしながらここでわたくしが下らないプライドで反抗し、聖女メアリーとカイザル殿下の反感を買えばランゲージ家にまた迷惑をかけてしまう。

 であるのならばそんなプライドなど捨てて聖女メアリーの望む様にカイザル殿下へ感謝の言葉を言おうとするのだが、その捨てた筈のプライドが喉につっかえて上手く喋る事が出来ない。

「何て言いました? 少し吃りすぎてて聞こえなかったのですけど?」

 当然その様な態度で聖女メアリーが許すはずも無く、もう一度ハッキリと言う様の支持して来る。

「カイザル殿下と聖女メアリー様のお慈悲のお陰ですっ!」
「それだけではないでしょう? 元婚約者とカイザル殿下には縁を切られている身分にも関わらず、お優しいカイザル殿下は貴女の身を案じてこうして見に来て下さるだけでもありがたいと言うのに助言までしてくれ、更にわざと悪役を買って出てくれているというのに貴女と来たら、それすらも説明してやらないと感謝と謝罪の言葉も言えないのですか?」
「………わ、わたくしの為に───」
「『元婚約者のわたくし』でしょう?」

 わたくしの今の目標は何だ?

 わたくしのプライドを守るためか?

 思い出せ。

 わたくしの目標はもうこれ以上ランゲージ家に、家族に迷惑をかけない事である。

「も、元婚約者のわたくし為にカイザル殿下ご自身がわざわざ心配してお顔を見に来てくれるだけでなく、助言まで頂き、ありがとうございますわ。それと、未だ未熟なわたくしで申し訳ございません」

 だったら、そんな下らないプライドなど今度こそ手離そう。

「はい、よく出来ました。そうやって普段から感謝と謝罪の心を持つ様に心がけるだけでシャルロットさんにもきっと輝かしい未来が訪れる事でしょう。ではカイザル殿下、行きましょうか」
「そうだな。もうこの様な惨めな女に成り下がった者などに興味などとうに失せたわ」
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