上 下
249 / 293

第249話サラよりも年上なんだがな

しおりを挟む
 天気は晴天雲ひとつもない青空が広がっている。

「スゲー観客の数だな」
「そそそ、それはそうですよ!」
「この学園都市の最大の行事である学生トーナメント【武闘大会】の第一回戦がこれから始まりますので……っ」
「観客の中には大貴族や王宮貴族もいるくらい大きな大会ですのよ?それ程のエンターテインメントであるという事ですの」

 そしてクロの目の前に広がる景色は広大な地面に石で出来た壁に囲まれた円形の闘技場と凄まじい観客の数である。

 そう、今日はレニア達が今までの努力を形にする行事、武闘大会の初日でもある。

 しかもレニア達はその大会の初戦第一試合に割り当てられ今現在、緊張によりレニアは震え、エシリアはどんよりした雰囲気を撒き散らし、ユーコは自分の糸を使い無意識にあやとりを高速で編んでいく。

「両陣営……前へ!!」

 そんな中審判で有ろう軽装備の鎧を着た男性がレニア達を呼ぶ声が聞こえて来ると、レニア達の緊張は更に跳ね上がってゆくのが手に取るように分かる。

 しかしその緊張を取る上手い言葉を思い付かないクロはレニア達の頭をレニア、エシリア、ユーコの順でやや乱暴に撫でてゆく。

「何緊張してるんだよ。素直に楽しんでこい。そうじゃなきゃ損だぞ?こんな楽しい事は恐らく一生に置いて今の時期だけだ。勝っても負けても悔いが残っても残らなくても将来今日という日は大切な思い出になる。だったら何も考えず楽しんで来い」

 それは本心から出た言葉である。青春真っ只中で有ろう彼女達はどっちに転んでも今日という日は甘酸っぱい青春の一ページとして刻まれるだろう。

 だったらこの一秒一秒を純粋に楽しんでもらいたい。

「「「はいっ!!」」」

 そして彼女達は嘘のように緊張が解け闘技場中心へと勢いよく駆け出していく。

 その足取りは実に軽く、また自信に漲っていた。

「全く、クロと居るとどっちが年上か分からなくなるわね。レニア達と同年代と言うのが疑わしく思えます」
「はは……ほっとけ」

 ちなみにクロのサポーターとして今まで手伝って来たサラも関係者として闘技場内に入れたらしくクロの隣に、誰かに見せ付ける様に自身の胸を形が変わるほどクロに押し付け腕を絡めて寄りかかっている。

 そんなサラが惚れ直したとでも言いたげな表情でクロに話しかけてくる。

 まぁ実際サラよりも年上なんだがな。

 そう思うものの決して口にはせず代わりに乾いた笑いが出てしまう。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

【R18】××に薬を塗ってもらうだけのはずだったのに♡

ちまこ。
BL
⚠︎隠語、あへおほ下品注意です

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

【R18】さよなら、婚約者様

mokumoku
恋愛
婚約者ディオス様は私といるのが嫌な様子。いつもしかめっ面をしています。 ある時気付いてしまったの…私ってもしかして嫌われてる!? それなのに会いに行ったりして…私ってなんてキモいのでしょう…! もう自分から会いに行くのはやめよう…! そんなこんなで悩んでいたら職場の先輩にディオス様が美しい女性兵士と恋人同士なのでは?と笑われちゃった! なんだ!私は隠れ蓑なのね! このなんだか身に覚えも、釣り合いも取れていない婚約は隠れ蓑に使われてるからだったんだ!と盛大に勘違いした主人公ハルヴァとディオスのすれ違いラブコメディです。 ハッピーエンド♡

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

女の子がひたすら気持ちよくさせられる短編集

恋愛
様々な設定で女の子がえっちな目に遭うお話。詳しくはタグご覧下さい。モロ語あり一話完結型。注意書きがない限り各話につながりはありませんのでどこからでも読めます。pixivにも同じものを掲載しております。

おっぱいみるく~乳首からミルクが出るようになっちゃった~

多崎リクト
BL
徹也(てつや)と潮(うしお)はラブラブの恋人同士。乳首好きの徹也。気持ちいいことに弱い潮。 ある日、潮の乳首からミルクが出るようになってしまって……! タイトル通りとっても頭の悪い話です。頭を空っぽにして読んでね! Twitterで連載したものをたまったら加筆修正してます。 他、ムーンライトノベルズ様と自サイトにも掲載中。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

処理中です...