上 下
180 / 293

第180話パーティー解散の要因の一つ

しおりを挟む
「それは無いです。元パーティーメンバーどころか戦闘によって負傷した者は魔族人族関係なく大魔王クロ・フリート様の家臣たちの手により全て治癒を施されており死傷者は奇跡的に魔族人族双方合わせて50名程度にとどまり、その中に私の元パーティーの方はいません」
「………ではどうしてパーティーを解散したんですか?」

 そう問いながら受付嬢は違和感を感じる。

 先ほどミセルは大魔王の事を何と呼んだ?

 しかし受付嬢は気付けない。

ミセルが目指す強者が誰なのかを。

 だからこそミセルがクロ・フリートにー、ー魔族に『様』を付け呼ぶ事に気付けないでいた。

 彼女もまた魔族を排他すべきと考える一人であるのだから。

 そしてその価値観のズレがパーティー解散の要因の一つであり最大の要因であると。

「今の私達では到底届かない頂きを見てしまってはパーティーの存続は出来るものではなかったのです。七人いた元パーティーメンバーのうち三名はノクタスのギルド職員に、そして残りは私の様に新たなパーティーに所属したり、別の職に就いたり、故郷に戻ったりされたようです」
「し、しかし……」

 確かに彼女の言わんとしている事は理解出来る。だがしかし、果たしてグリフォンの翼程のパーティーがたったそれだけの事で解散までしてしまうのだろうか?

 あと少しでパーティーランクがSになろうとするパーティーの解散。

 冒険者、パーティー共にSランクにまで登る事を夢見て皆血と汗を流し努力をしているのだ。

 だからこそミセルの言葉に納得しかねてしまう。

 だがしかしその理由もまたあの場所にいた様々なパーティーが解散した要因の一つである事に間違いはない。

「私とパーティーを組んで下さった方はランクこそFランクなのですが、私なんかより遥かに強いです。その事実を目の当たりにしてしまってはランクに拘るのが馬鹿らしくなるわ」

 そう言いミセルは横にいるルシフェルを見る。

 このまだ年端もいかぬ少女が自分よりも強いと確信しているかの様に。

「だいぶ話が逸れているようですが、このブラックタイガーとやらの討伐依頼をミセルさんがお受けする事は出来ないのですか?」

 そして受付嬢がミセルに再度先ほど発した発言内容の確認とパーティー解散理由の追求をしようとした時、ミセルの背後から心を掴まれてしまうのではないかと思ってしまう程綺麗で澄んだ声が受付嬢に向け発せられる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

【R18】××に薬を塗ってもらうだけのはずだったのに♡

ちまこ。
BL
⚠︎隠語、あへおほ下品注意です

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

【R18】さよなら、婚約者様

mokumoku
恋愛
婚約者ディオス様は私といるのが嫌な様子。いつもしかめっ面をしています。 ある時気付いてしまったの…私ってもしかして嫌われてる!? それなのに会いに行ったりして…私ってなんてキモいのでしょう…! もう自分から会いに行くのはやめよう…! そんなこんなで悩んでいたら職場の先輩にディオス様が美しい女性兵士と恋人同士なのでは?と笑われちゃった! なんだ!私は隠れ蓑なのね! このなんだか身に覚えも、釣り合いも取れていない婚約は隠れ蓑に使われてるからだったんだ!と盛大に勘違いした主人公ハルヴァとディオスのすれ違いラブコメディです。 ハッピーエンド♡

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

女の子がひたすら気持ちよくさせられる短編集

恋愛
様々な設定で女の子がえっちな目に遭うお話。詳しくはタグご覧下さい。モロ語あり一話完結型。注意書きがない限り各話につながりはありませんのでどこからでも読めます。pixivにも同じものを掲載しております。

おっぱいみるく~乳首からミルクが出るようになっちゃった~

多崎リクト
BL
徹也(てつや)と潮(うしお)はラブラブの恋人同士。乳首好きの徹也。気持ちいいことに弱い潮。 ある日、潮の乳首からミルクが出るようになってしまって……! タイトル通りとっても頭の悪い話です。頭を空っぽにして読んでね! Twitterで連載したものをたまったら加筆修正してます。 他、ムーンライトノベルズ様と自サイトにも掲載中。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

処理中です...