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第133話クロの指が「パチン」と鳴り響く
しおりを挟む人数を同数にして30秒で試合開始可能なのだが、アルが攻撃出来るという事は彼の無駄口ですでに30秒を超えてたのだろう。
そんな呑気な事を考えながらクロは親指と中指をくっ付けた右手をアルに向けて伸ばす。
そして次の瞬間、未だに上手く魔術を無詠唱で発動出来ないクロの指が「パチン」と鳴り響く。
相手の魔術に対抗すべくクロが放った水属性魔術は段位二、カウンタースペルである【目眩まし】である。
この魔術の完全上位互換に当たるのが水魔術段位五【泡の中の幻】になり、こちらは泡が複数出るのに対して【目眩まし】は泡が一つしか出ない。
その代わり底コスト、底段位で使う事が出来るため、ギルティ・ブラッドの基本的な魔術による立ち回りは【目眩まし】を中心にした戦い方か、【目眩まし】の対策をした戦い方に分かれるのだが、目の前の狐男アルの立ち回りはそのどちらでもなくただ闇雲に得意な魔術を無詠唱で乱射するのみという対策もクソもない初心者特有の立ち回りである。
そして見た限りアルが放っている魔術は火の段位三【霊魂焼却】である。 【霊魂焼却】はそれ単体だとそんなに恐ろしく無いのだが、少し手を加えるだけでその威力は格段に上がる。
「そらそらっ!防ぐので精一杯か?大魔王様よぉっ!?」
「それは俺に一度でも魔術を当ててから言ったらどうだ?どうやら攻撃をお望みみたいだからこちらも攻撃に転じさせてもらうとするか【霊魂焼却】」
「ギャハハはははっ!九尾族でもないお前が【霊魂焼却】を使った所で俺の【霊魂焼却】より強い訳が…ない…な…なんだそれはっ!?」
そう言うとクロは【霊魂焼却】を自らの前で浮遊させるのだが、クロの前で浮遊している火の玉の異様さをアルが感じ取り身構える。
「何って【霊魂焼却】だろうが。ただし、お前と違って【霊魂焼却】に施されている追加能力を使いはしたがな」
「追加能力だと…?…そんなイカサマで本物の【霊魂焼却】が負けるはずないだろっ!」
「いいから黙って喰らえ」
「れ、【霊魂焼却】っ」
そしてクロはアルに向けて【霊魂焼却】を放つとアルが放った【霊魂焼却】を物ともせずアルに着弾する。
するとアルの身体に黒い靄がかかり、その靄がアルの身体からその身に宿した魔力を吸い取ると、吸い取った魔力をクロへ流し込む。
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