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第68話自分の未熟さを歯がゆく思う

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 その動きから【超重力】ではなく【涙の雨】を使ったのは上からの攻撃を織り交ぜる事を考えての選択だったのだろう。

「これが実戦経験の差か…【五月雨】!」

 ゲームでの戦いと命をかけた戦いの違いを見せつけられ防戦一方になるのだがほんの僅かな隙を見つけスキルを打つ事ができるのはクロが持つ才能ゆえか。

 スキル【五月雨】を発動し、なめらかな動きでアーシェに連続切りを繰り出すのだが、その全てがアーシェに難なく防がれ躱され、逆にスキル終わりを狙われ、また主導権を奪われる。

 一見すれば互角の攻防に見えるのだがスキルでしか攻撃しないクロと違いスキルを使わず攻撃しているアーシェとの差は計り知れない。

 やっぱり、予想通りの結果になってきたな。

 接近戦の攻防が始まりだして最初からくらべ徐々にクロが攻撃に転じる回数が目に見えて少なくなり始めている。

 しかしそうなる事は予測できたことであるため別段驚かない。

「く、クロ様…」

 そしてその事は二人の戦いを眺めているセラやルシフェル達に不安の色を見せ始める。

「せ、セラ…た、助けに行っちゃダメなの? このままじゃクロ様が…」
「滅多なことを言うでない小娘。 貴様が行った処で魔王様の足を引っ張るだけになる事は目に見えておるわ」
「で、でも…」

 そんなことはルシフェルにも分かりきっている事なのだが何もせずにクロが負けるところを見るだけしかできないというのは我慢できず、またそんな自分の未熟さを歯がゆく思う。

「黙って見てなさいルシフェル。 クロ様はいつも劣勢な立場が多い中戦って来たのです。 この程度のことで負けるはずありません。 いつも通り劣勢な状況をはね除けて勝ちますっ!」

 この中で一番の古株になるセラは今までクロが劣勢な立場を幾重もくぐり抜けてきた姿を近くで見てきた為、劣勢な立場でもひっくり返して最後は勝つと諭しルシフェルを落ち着かせるのだが、その瞳は不安そうにクロを写し両手を組んで魔王同士の戦いを見詰める。

 クロに助太刀し、一緒に戦いたいのはセラとて同じなのだ。

「まったくお主らは。 今にも助太刀しに行きたそうにしおって。 少しは我々の魔王様であるクロ様を信じてドシっと構えて居れぬのか?」
「ば、バハムートはクロ様の剣となり盾として一緒に戦いたくないの!?」

 そんな二人をバハムートがたしなめるのだがルシフェルが納得いかないと自分の気持ちと感情をバハムートにぶつける。
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