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第50話追い求めた光景

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 そんなウィンディーネから身の危険を感じて逃げ出そうとするのだが、その肩をウィンディーネに掴まれる。

 その姿は数多のライバルを蹴落とし勝利を確信したヴァルキリアかのように美しい。

「クロ様、先ほどのキュートスとかいうおなごの病を治す過程でその子の胸を触る必要性があったのですか?」
「………」

 体中から冷や汗が大量に流れ出してくるのだが、これはきっとあらぬ濡れ衣を味方だと思っていたウィンディーネにかけられたためであって、けしておっぱいを揉みたいのがバレたからではなく―――

「私の願いを一つ聞いてくれるなら黙っていてあげますが?」
「…た、頼む」

 それは甘い誘惑であった。 

 ま、まあゲーム時代いつも彼女のヒールにはお世話になったからな。

ひとつくらい俺で出来る範囲で彼女の願いを叶えてやっても良いだろう。

他意は無い。

「ぜ、絶対ですからね!」

 そしてウィンディーネは半透明の頬を少し赤らめるとその場から霧散して消えていく。

「やはり只者じゃあないとは思っていたが、どっかの国の王だったとはな。まあそれならそのバカ高そうな衣服も納得できる」

 ウィンディーネと入れ替わるようにボストンが話しかけてくる。

 そしてバハムートがすかさず「ただの王ではないぞ人間。魔王だ」と補足してくる。

「魔王か。ならなぜ人間族や精霊族まで配下にいるんだ?魔族にヒールかけられる日が来るとは夢にも思わなかったわ」

 そういうとボストンはあの時のように「ガハハハ」と高笑いする。

「ボストンさんは俺が…その…」
「怖くないし憎くもねえ。人間でも悪い奴もいるんだ。魔族にも良いやつがいてもおかしくないだろ? まあ、俺以外はそう簡単に割り切れないだろうがそのうち慣れてくるさ」

 あたりを見渡せば確かに魔族にヒールや回復魔法をかけられるのを躊躇っている人間もちらほら見え、それは魔族側もおなじで人間にヒールや回復魔法をかけれるのを躊躇っている者が見える。

 それでもヒールや回復魔法を黙って施されているのはクロの存在が大きかった。もし断ってクロの琴線に触れでもしたらと思うと彼らに断るという選択肢は無いに等しい。

「この光景をあいつにも見せてやりたかったな」

 躊躇われても嫌な顔せずヒールや回復魔法を使う魔族や人間族の光景はボストンが追い求めた光景であった。
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