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第32話危なかった

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 ミイアの紹介を聞き一度目を大きく見開くミヤコであったが、ミイアから漂う独特の甘まい匂いを嗅ぎとると柔らかな笑をクロへ浮かべ、ミイアは安心したような、嬉しいような顔をしていた。

 クロはというと巨大な猫、ミヤコが来た時点でビックリし、さらにその猫が流暢に喋った事に驚きそれを隠すので精一杯なのだがそれを表に出さず自己紹介をする。

「こちらこそ挨拶が遅れてすみません。ミイアさんと婚約させてもらいましたクロ・フリートと申します」

 未だ若干の恐怖があるもののとりあえず力の限りモフってみたい。いや、モフらして下さい。

「それでおばあちゃん、今月の仕送りとムヌー肉のお土産。クロさんが狩ってくれたんだよ?」

 ある程度自己紹介が終わったところでミイアが仕送りを渡すと「昨日捌いたムヌーをあげても良いよね?」というので快くムヌーの肉を差し出す。

 ミヤコはミイアから仕送りを肉球のついた手で受け取ると「こんな所じゃクロさんに失礼だから部屋の中に入ってくださいな」と言いながら手を後ろ手に二足歩行をしながら客間に案内し始めるその姿はますますクロのモフりたい気持ちを刺激していた。

「まったく、仕送りはいらないと言ってるんだけどねえ。あの子に子供ができたら今みたいに会えなくなるだろうねぇ…」

 その途中ミヤコは嬉しさと寂しさを交え呟くのであった。


 ミイアの故郷であるノクタス領内猫族集落は人口五百人前後で土地がら土に優れ主に農作物を収入源にしている農村地区であり。また日本風の平屋が多く懐かしい日本の田舎の風景といった感じである。

 家の中もクロの想像と同じく昔ながらの良く見る木造の平屋といった感じで客間に着くまでの板貼りの廊下を歩いているとここが異世界だという事を忘れてしまいそうである。

 流石に畳や襖、障子などはなく、また土足なため当たり前なのだが客間も板貼りの床だったため完全に日本と同じというわけではないみたいなのだが。

「今から、頂いたムヌーの肉を早速調理して来るきねえ、ここのテーブルでも腰をかけててくださいな」

 そう言うとミヤコが奥に消えて行き、入れ替わりで人数分のコップを置いたお盆をミイアの妹、三女のミーコが持って来てくれる。

 ちなみにミイアの姉妹の名前は上から長女ニャーコ次女ミイア三女ミーコ四女ミオという名前である。そして祖母がミヤコで亡くなった両親が父フシャーと母ナーオだという。

 鳴き声か!というツッコミを寸前で飲み込む。危なかった。



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