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第27話ドアから視線

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 ちょうどその時ドアから視線を感じたので見てみると少し隙間が空いており好奇心の塊のような目線と目があった。

 その目の持ち主は目線があった途端「お父さあぁぁん! ねえねえのこんやくしゃが別のおんなとねてるうぅぅぅ!」と走り去って行った。


      ◇◆◆◇



 寝静まった町に黒い外套を着込み一人の男性が雄月と雌月、二つある月に照らされながら歩いていた。月に照らされたその顔は醜く、怒りに顔が歪んでいる。

「くそっ! くそっ!」

 その怒りの原因は二本角の男性である。アイツが来なければあと少しであの憎たらしいメアを手に入れ、好きに出来たというのに、男と一晩過ごしたという事はメアはもう処女ではないのだろう。

 処女じゃないというのは自分の美学に反する為にメアの価値は無くなったも同然である。

 自分より強い異性、自分を嫌ってる異性、自分の顔を見て嫌悪する異性、自分を見下す異性、それがメアである。

 そんなメアを無理矢理押し倒す事を想像するだけで興奮する。

 しかしもう彼女は他人の物だ。あと少しで彼女が泣き叫ぶところを見れたというのに。

「殺す…………もう殺す。僕を裏切ったらどうなるか思い知らせてやる」

 そう言うと男は懐から黒に近い紫色をした平均よりも少し大きなビー玉のような物を取り出すと地面に落とすと、それを踏み砕く。

「僕は悪くない。悪いのは全部メアだ。この町だ。ぼ、僕をバカにしたゴミ虫達もこの町も絶対に許さない……俺は悪くないんだ。この僕を怒らせたらどうなるかお、思いしれ」

 男はそう言うと不気味な含み笑いをしながら闇の中へと消えていった。

 翌日、領主の一人息子、ギルム・ハドラク・ガルシアが人知れず姿を消している事がわかり、領主宅は朝から慌ただしく使用人達がギルムを探し始める。

 そしてノクタスの町に静かにしかし確実に死が訪れはじめている事に誰も気付ず、町はいつもの活気に溢れるのであった。


「お客さん、本当にこんな辺境の地まで行くのかい?死んだら終わりですぜ? 悪い事は言わないから今からでも考え直して損はないと思うんだが……わざわざ魔族が住む地の国境付近に行くなんて。なんでも最近魔王が動き始めたという噂もあるぐらいですぜ? あっしも金銭貰ったからにはちゃんと仕事はこなしますが……」

 荒れた大地を一つの馬車が西へと走っていた。その先には魔族が生活する国がある。

「構わない。僕はどのみち人間の世界にはいられないからな」

 客である男はそれだけ言うと小さくそして嬉しそうに笑い、後は言葉を発する事はなかった。

 魔族側の国境付近には重罪を犯した人が逃げる為に使う手段であるため、運び屋もそれ以上深くは聞かなかった。
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